脱落歯の気管迷入症例
イスラエルにあるヘブライ大学獣医学部の調査チームは、人間においてごく稀に発生する脱落歯の誤嚥(気道迷入)の、猫における珍しい症例報告を行いました。
症例1:避妊済みメス猫/4kg
交通事故後、後肢の引きずりを主訴として来院。口腔検査により下顎犬歯の脱落と歯茎の軽度出血が認められたが、血液検査では軽度の高血糖と低ナトリウム血症、高タンパク血症を示していたほか異常はなかった。胸部エックス線検査では、左尾側気管支に脱落した歯と思われる不透明な構造物が認められた。
呼吸器症状が見られなかったため48時間あけて気管鏡を挿入し異物を除去。予想通り、気管内からステージ4の吸収病変を示した脱落歯が回収された。
症例2:去勢オス/4.8kg
前夜、他の猫と喧嘩をした後から苦しそうな呼吸をするようになったため来院。身体検査では呼吸困難のほか粘膜のチアノーゼと胸部喘鳴が認められ、口腔検査では歯数本の脱落と右下顎の歯茎に充血が認められた。胸部エックス線検査を行った所、胸腔中央の竜骨付近に不透明な異物を発見。
全身麻酔下で気管鏡を挿入し、竜骨から脱落した前臼歯を回収した。術後、猫の呼吸困難は消え翌日には退院を果たした。
Tooth aspiration in two cats following maxillofacial trauma
Yael Bar Giora, Tomer Weingram, Journal of Feline Medicine and Surgery(2022), DOI:10.1177/20551169221125403
Yael Bar Giora, Tomer Weingram, Journal of Feline Medicine and Surgery(2022), DOI:10.1177/20551169221125403
歯が抜けた後の咳には注意
症例1の猫では呼吸器症状が見られませんでしたが、まったく平気というより咳反射が疲弊期に入り、正常な咳が起こっていなかっただけだと考えられています。
気管に引っかかった異物が気づかれないままでいると気管軟骨の崩壊や線維化につながる危険性があります。また何かの折に肺に迷入し、肺炎、肺虚脱、肺葉硬化、肺膿瘍、気胸、膿胸といったより重篤な症状につながる危険性もあります。調査チームは口腔付近の外傷では胸部エックス線検査で歯牙誤嚥の可能性を除外したほうが良いとアドバイスしています。
猫の口腔外傷の原因として多いのは交通事故、けんか、落下、衝突など。外傷以外では歯周病や歯根吸収によって歯が抜け落ちてしまうこともあります。異物が食道ではなく気道に迷入してしまう誤嚥症例はそれほど多くなく、猫における文献報告は3例ほどしかありませんが、急性・慢性の咳、気道出血、呼吸困難といった症状を示しているときは可能性を疑ったほうがよいでしょう。
気管に引っかかった異物が気づかれないままでいると気管軟骨の崩壊や線維化につながる危険性があります。また何かの折に肺に迷入し、肺炎、肺虚脱、肺葉硬化、肺膿瘍、気胸、膿胸といったより重篤な症状につながる危険性もあります。調査チームは口腔付近の外傷では胸部エックス線検査で歯牙誤嚥の可能性を除外したほうが良いとアドバイスしています。
猫の口腔外傷の原因として多いのは交通事故、けんか、落下、衝突など。外傷以外では歯周病や歯根吸収によって歯が抜け落ちてしまうこともあります。異物が食道ではなく気道に迷入してしまう誤嚥症例はそれほど多くなく、猫における文献報告は3例ほどしかありませんが、急性・慢性の咳、気道出血、呼吸困難といった症状を示しているときは可能性を疑ったほうがよいでしょう。