免疫療法+モノクローナル治療
アメリカNational Institutes of Health(NIH)の支援を受けた研究プロジェクトチームは、従来の皮下免疫療法と新興のモノクローナル抗体治療を組み合わせることで、アレルギーに対する治療効果が増幅されるかどうかを確かめるため、猫アレルギーを抱えた成人を対象とした臨床試験を行いました。
調査方法
調査に参加したのは、アメリカ国内8つの都市にある9つの医療センターでリクルートされた18歳から65歳の猫アレルギー患者計121人。以下の4つのグループにランダムで分けた上で投薬内容をブラインド化しました。投薬期間は2015年3月から48週間(11ヶ月)です。
「偽薬」とは何ら生理作用を含んでいないニセ薬のことです。患者の思い込みによるいわゆる「プラセボ効果」を排除するために使用されます。
「皮下免疫注射」とは極微量のアレルゲンを皮下注射することで免疫応答を徐々に弱くしていく治療法のことで、一般的には週1の注射を7ヶ月間継続した後、患者の様子を見ながら注射間隔を2週間→4週間に広げていきます。治療には3年から5年と長期間を要しますが、思ったような成果が得られない患者もいます。
投薬グループ
- 新薬+皮下免疫注射=32人
- 新薬+偽薬注射=30人
- 偽薬+皮下免疫注射=31人
- 偽薬+偽薬注射=28人
「偽薬」とは何ら生理作用を含んでいないニセ薬のことです。患者の思い込みによるいわゆる「プラセボ効果」を排除するために使用されます。
「皮下免疫注射」とは極微量のアレルゲンを皮下注射することで免疫応答を徐々に弱くしていく治療法のことで、一般的には週1の注射を7ヶ月間継続した後、患者の様子を見ながら注射間隔を2週間→4週間に広げていきます。治療には3年から5年と長期間を要しますが、思ったような成果が得られない患者もいます。
調査結果
薬効はアレルギー反応を誘発する微量分子を患者の鼻腔内に、治療終了から2年間のうちに合計6回に渡ってスプレー噴射することで経時的に評価されました。具体的にはスプレー噴射から5→15→30→60分後のタイミングで鼻腔や気道の症状を評価し、その後は1時間おきに5時間後まで同様の評価を繰り返すというものです。またスプレーと同時に血液と鼻腔細胞が採取され解析に回されました。
最悪の症状を示した患者のポイントを比べた結果、皮下免疫注射とモノクローナル治療の両方を受けた患者の方が、皮下免疫注射だけを受けた患者に比べて低い値を示したといいます。治療完了時の目減り幅が36%、治療完了から1年後のタイミングにおけるそれが24%というものでした。 Monoclonal antibody improves cat allergen immunotherapy
National Institutes of Health
最悪の症状を示した患者のポイントを比べた結果、皮下免疫注射とモノクローナル治療の両方を受けた患者の方が、皮下免疫注射だけを受けた患者に比べて低い値を示したといいます。治療完了時の目減り幅が36%、治療完了から1年後のタイミングにおけるそれが24%というものでした。 Monoclonal antibody improves cat allergen immunotherapy
National Institutes of Health
モノクローナル抗体による相乗効果
得られた治験データから調査チームは、皮下免疫注射とモノクローナル抗体からなるサイトカイン阻害薬を併用することで相乗効果が生まれ、長期に渡る免疫応答抑制効果が期待できるとしています。血液と鼻腔細胞を解析した結果からも、免疫応答ネットワークが抑制されている証拠が見つかったとも。
今回の調査は臨床試験の第II相(フェーズ2)に相当するもので、比較的少人数の患者を対象とし新薬候補の有効性、安全性(副作用)、使用法(投与量・間隔・期間など)を模索している段階です。今後は治験フェーズ3に移行し、多数のアレルギー患者を対象とした有効性と安全性の最終確認に入ることが予想されます。
また今調査で前向きな結果が得られたことから、食品アレルギーに対する併用療法(口腔免疫療法+モノクローナル治療)のフェーズ2臨床試験が計画されているとのこと。さらに併用療法中に細胞レベルで何が起こっているのかを生化学的に解析する作業が進行中とのことです。
別の調査では猫アレルゲン(Fel d1)と特異的に結合するモノクローナル抗体(特異的IgG抗体)が免疫反応を軽減する可能性が示されています。今調査とはターゲット分子が違うものの、特定の分子とピンポイントで結合する特性を有した「モノクローナル抗体」の医療的な応用は今後も広がっていきそうです。
今回の調査は臨床試験の第II相(フェーズ2)に相当するもので、比較的少人数の患者を対象とし新薬候補の有効性、安全性(副作用)、使用法(投与量・間隔・期間など)を模索している段階です。今後は治験フェーズ3に移行し、多数のアレルギー患者を対象とした有効性と安全性の最終確認に入ることが予想されます。
また今調査で前向きな結果が得られたことから、食品アレルギーに対する併用療法(口腔免疫療法+モノクローナル治療)のフェーズ2臨床試験が計画されているとのこと。さらに併用療法中に細胞レベルで何が起こっているのかを生化学的に解析する作業が進行中とのことです。
別の調査では猫アレルゲン(Fel d1)と特異的に結合するモノクローナル抗体(特異的IgG抗体)が免疫反応を軽減する可能性が示されています。今調査とはターゲット分子が違うものの、特定の分子とピンポイントで結合する特性を有した「モノクローナル抗体」の医療的な応用は今後も広がっていきそうです。