Fel d1低減フードとアレルギー症状
調査を行ったのはアメリカにあるWashington University School of Medicineを中心とした共同チーム。猫の主要アレルゲンである「Fel d1」に特異的な抗体を含んだキャットフードが、環境中に放出されるアレルゲン濃度や環境中にとどまる人のアレルギー症状にどのような影響を及ぼすかを検証しました。猫アレルギーに関しては取り急ぎ以下のページをご参照ください。
調査に参加したのはプリックテストにより猫アレルギーと診断された11人の被験者たち。年齢は26~59歳、すべてコーカシアンでうち10名は女性です。6つの可動式チェンバー(1.8m×1.8m×2m)を用意し、中に猫が使用した毛布を入れることで、猫と暮らす飼い主の室内を再現しました。
アレルゲンの発生源として用いられた毛布は8頭(去勢オス5頭+避妊メス3頭)の猫たちが使用したもので、4頭には通常のフードを8週間、残りの4頭にはFel d1特異的IgY抗体を8mg/kgの割合で含むテストフードを8週間に渡って給餌しました。
実験方法
アレルゲンへの曝露テストは「ベースラインテスト」→「テストフードテスト」→「対照フードテスト」の順で行われました。
猫アレルゲンへ曝露テスト
- ベースラインテスト抗体を含まない対照フードを給餌された猫から回収した毛布をチェンバーの中に入れ、被験者が3時間その中にとどまる
- テストフードテスト抗体を含んだテストフードを給餌された猫から回収した毛布をチェンバーの中に入れ、被験者が3時間その中にとどまる
- 対照フードテスト抗体を含まない対照フードを給餌された猫から回収した毛布をチェンバーの中に入れ、被験者が3時間その中にとどまる
実験結果
実験の結果、活性型Fel d1濃度に関してはテストフードを給餌されている期間に回収された毛布を使用したチェンバーで有意に低かったといいます。被験者の主観評価による症状の度合いは以下で、赤太字はベース値と比較した時、統計的に有意なレベルで格差が認められた項目です。
Feeding cats egg product with polyclonal-anti-Fel d1 antibodies
decreases environmental Fel d1 and allergic response: A proof of concept study.
Wedner JH, Mantia T, Satyaraj E, Gardner C, Al-Hammadi N, Sherrill S. J Allergy Infect Dis 2021; 2(1):1-8.
Wedner JH, Mantia T, Satyaraj E, Gardner C, Al-Hammadi N, Sherrill S. J Allergy Infect Dis 2021; 2(1):1-8.
フードと室内掃除は並行して
猫のアレルゲンは非常に小さく、ほこりを始め5ミクロン以下の極めて小さい粒子と結合して空気中に容易に舞い上がり、ひとたび環境中に放出されるとなかなか除去されないことが知られています。例えば過去に行われた調査では、家の中から猫を取り除いたとしても、15世帯中8世帯ではアレルゲンが猫を飼育していない家のレベルに低下するまでに20~24週間かかったと言います(:Bastien, 2019)。また仮にアレルゲンが除去されたとしても、そもそも猫を手放したくないという根強い抵抗感がアレルギー患者のジレンマになっています。
一方、猫を手放さずにアレルゲンを減らす方法としては以下のような方法がありますが、かなり面倒くさいため長期的に継続することはそう簡単ではありません。
一方、猫を手放さずにアレルゲンを減らす方法としては以下のような方法がありますが、かなり面倒くさいため長期的に継続することはそう簡単ではありません。
標準的なアレルギー対策
- カーペットをなくす
- 緩衝材を失くす
- 床に掃除機をかける
- 壁や家具を拭き掃除する
- 隙間がないマットレスや枕カバーを使用する
- 猫をお風呂に入れる
- 猫を寝室から出す
- 窓を開けたまま眠る
抗体含有フードはすでに販売されていますが、たとえアレルゲンの放出量が減っても掃除を怠ると環境中に累積して最終的には症状が悪化します。給餌して終わりではなく、「猫アレルギー完全ガイド」に記載した注意事項と並行するようにしましょう。