ネコノミの体内からコロナウイルスが見つかる
調査を行ったのはスペインにあるIRECと呼ばれる環境保全機関とオクラホマ州立大学から成る共同チーム。ネコノミ(Ctenocephalides felis)対策用のワクチンを開発するため研究室で飼育されていた短毛種の猫、および2020年の5月から6月にかけ、シウダード・レアルという都市で捕獲された2頭の野良猫からネコノミを採取し、中腸を構成している細胞の原形質膜(※細胞の内と外を仕切る生体膜)を対象としたプロテオーム解析(タンパク質に焦点を絞った研究)を行いました。
その結果、どちらのサンプルからもコロナウイルス由来と思われるペプチド塩基配列が確認されたといいます。またリアルタイムRT-PCRという手法でコロナウイルス固有の塩基配列を検索したところ、ラボで飼育されていた未吸血のノミ、および野良猫の一方に寄生していたノミで陽性反応が出たとも。ただし新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に特異的な3つの塩基配列が見つからなかったため、少なくともこのウイルスではないと判断されました。さらにSARSコロナウイルス(※SARS-CoV=新型ではなくオリジナルの方)の増殖に必要なアンジオテンシン変換酵素(ACE)が細胞外から検出されたそうです。
Coronavirus in cat flea: findings and questions regarding COVID-19.
Villar, M., Fernandez de Mera, I.G., Artigas-Jeronimo, S. et al. Parasites Vectors 13, 409 (2020). DOI:10.1186/s13071-020-04292-y
Villar, M., Fernandez de Mera, I.G., Artigas-Jeronimo, S. et al. Parasites Vectors 13, 409 (2020). DOI:10.1186/s13071-020-04292-y
ネコノミの予防は万全に
ウイルス増殖に必要なタンパク質「ACE」がネコノミの体内で保持されていたこと、およびネコノミの中腸からコロナウイルスの痕跡が検出されたことから調査チームは、動物の血液を吸い取ったネコノミの体内でコロナウイルスが増殖する可能性を否定できないと指摘しています。また現時点では新型コロナウイルスそのものや新型コロナウイルスの増殖に必要なACE2(※ACEの別型)は検出されていないものの、終末感染媒体が犬や猫ではないシナリオも考慮しなければならないと言及しています。
ネコノミは猫だけでなく犬や人間にも寄生する性質を有しているため、ノミ対策は万全にしておきましょう。
ネコノミは猫だけでなく犬や人間にも寄生する性質を有しているため、ノミ対策は万全にしておきましょう。
市販薬であれ処方薬であれ、殺ノミ薬は吸血したノミを殺す薬です。吸血自体は予防されませんので「薬を投与しているから大丈夫!」は大きな勘違いです。