歯根吸収病変・スペイン編
調査を行ったのはスペインにあるサラゴサ大学の獣医療チーム。猫で多いとされている歯根吸収病変が、スペイン国内で一体どの程度の有病率なのかを調べるため、大学付属の動物病院を受診した患猫たちを対象とした疫学的な検証を行いました。
Ana Whyte PhD ,Sara Lacasta DVM ,Jaime Whyte PhD ,Luis Vicente Monteagudo PhD ,Mar ??a Teresa Tejedor PhD, Topics in Companion Animal Medicine(2019),DOI:https://doi.org/10.1016/j.tcam.2019.100369
- 歯根吸収病変
- 歯根吸収病変とは永久歯が解けて顎の骨に吸収されてしまう状態。病変は歯の中でセメント質とエナメル質が結合する「セメントエナメル境」(CEJ)と呼ばれる歯根部位から始まる
歯根吸収好発部位
- 左下顎第一前臼歯=35.6%(21/59)
- 右下顎後臼歯28.8%(17/59)
- 右下顎第一前臼歯27.1%(16/59)
- 左下顎後臼歯27.1%(16/59)
Ana Whyte PhD ,Sara Lacasta DVM ,Jaime Whyte PhD ,Luis Vicente Monteagudo PhD ,Mar ??a Teresa Tejedor PhD, Topics in Companion Animal Medicine(2019),DOI:https://doi.org/10.1016/j.tcam.2019.100369
歯根吸収病変・飼い主にできること
歯根吸収病変は猫において非常に高い確率で発症するとされています。過去に報告があるデータは以下です。
歯根吸収病変の割合データ
- オランダおよびアメリカオランダ432頭中62%/アメリカ78頭中67%(:Van Wessum, 1992)
- アメリカさまざまな理由で麻酔治療を行った1歳以上の145頭中48%(:Lund EM, 1998)
- アメリカ265頭(合計567歯)中161頭(60.8%)(:Lommer MJ, 2000)
吸収病変の原因は不明
上記したように、ほぼ2頭に1頭という高い割合で発症するようです。しかし非常にありふれた病変であるにもかかわらず、その発症要因に関しては未だによくわかっていません。
想定されているものとしては「顎閉鎖時の機械的なストレスに起因するセメント質表面の微小破損およびそれに伴う炎症反応と破歯細胞の活性化」「局所的な歯肉炎とマスト細胞の増加」「血清ビタミンD濃度が高すぎる、もしくは逆に低すぎる」「歯垢内のバクテリアによる非炎症性の侵食」などがあります。
想定されているものとしては「顎閉鎖時の機械的なストレスに起因するセメント質表面の微小破損およびそれに伴う炎症反応と破歯細胞の活性化」「局所的な歯肉炎とマスト細胞の増加」「血清ビタミンD濃度が高すぎる、もしくは逆に低すぎる」「歯垢内のバクテリアによる非炎症性の侵食」などがあります。
予見因子は「高齢」
最も確実な予見因子としては「加齢・高齢」というものが指摘されています。今回の調査でも病変を抱えていなかった猫の年齢中央値が4.5歳だったのに対し、少なくとも一本の病変を抱えていた猫のそれが9歳で、強い関連性が見られました。また年齢層に区分けした場合、1~4歳が15.4%(6/39頭)、5~9歳が35.9%(14/39頭)、そして10~16歳が48.7%(19/39頭)という勾配を見せました。
予見因子は必ずしも因果関係を示しているわけではありませんが、6歳を過ぎた猫においてはなるべく頻繁に口の中をチェックし特に下顎の歯に変化がないかどうかをチェックしてあげた方が良いでしょう。よく見られる症状は以下です。
予見因子は必ずしも因果関係を示しているわけではありませんが、6歳を過ぎた猫においてはなるべく頻繁に口の中をチェックし特に下顎の歯に変化がないかどうかをチェックしてあげた方が良いでしょう。よく見られる症状は以下です。
歯根吸収病変・主症状
- 食欲不振
- 食事の拒絶
- 食事中に口からフードが溢れる
- 口内の痛み(くちゃくちゃ鳴らす、前足でしきりに口元をこするなど)
過去の調査では短頭種において70%という高い有病率が報告されていますので(:Girard et al.2008)、ペルシャ、エキゾチックショートヘア、スコティッシュフォールドなどマズルが通常の猫よりも短い品種はより頻繁かつ丁寧なチェックが必要となるでしょう。