詳細
調査を行ったのはイギリス・ケンブリッジ大学が中心となったチーム。2009年2月の2013年12月の期間、獣医療の二次診療施設である「North-west Veterinary Specialist」を受診した猫のうち、「外傷」を理由とする猫185頭をピックアップして、死亡率を高める要因が何であるかを検証しました。「怪我の原因」「重症度」「ショックの有無」「複数外傷の有無」といった項目と予後との関連性を統計的に後ろ向きに調べて行ったところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
T. Hernon, M. Gurney, S. Gibson, Journal of Small Animal Practice Volume 59, Issue 4, doi.org/10.1111/jsap.12815
外傷猫の基本属性
- 去勢済のオス=102頭(55.2%)
- 未手術のオス=10頭(5.4%)
- 未手術のメス=9頭(4.8%)
- 避妊済の猫=64頭(34.6%)
- 年齢中央値=30ヶ月齢(4~216ヶ月齢)
急性外傷の原因
- 交通事故=104頭(56.2%)
- 原因不明=49頭(26.5%)
- 落下=18頭(9.7%)
- 犬に襲われた=6頭(3.2%)
- 銃で撃たれた=2頭(1.1%)
- 鈍器による外傷=2頭(1.1%)
- しっぽのひっぱり=2頭(1.1%)
- 衝突=1頭(0.5%)
- 馬に蹴られた=1頭(0.5%)
重症度
- 重症度1=0頭無傷~最小=爪の破損、縫合を伴わない皮膚の擦過傷
- 重症度2=1頭(0.5%)軽症=簡単な縫合を伴う皮膚の裂傷、捻挫、ドレナージュを伴わない膿胸や血胸
- 重症度3=52頭(28.1%)中等度=あごの単純骨折、大きな裂傷、深い裂傷、ドレナージュを要する膿胸や血胸 単純閉鎖性骨折、脱臼、眼球摘出
- 重症度4=92頭(49.7%)重症=複合開放性骨折、広範囲の口蓋離開、後ろ足の足首や足趾の脱臼、四肢切断を伴う怪我複数回のドレナージュを要する膿胸や血胸、横隔膜破裂、骨盤外傷、軽度の神経障害
- 重症度5=39頭(21.1%)極めて重症=広範囲の横隔膜破裂、貫通性(広範囲)の胸腹部外傷、重度の頭部外傷、脊髄障害、広範囲の骨盤外傷、重度の神経障害
- 重症度6=1頭(0.5%)瀕死もしくは死
T. Hernon, M. Gurney, S. Gibson, Journal of Small Animal Practice Volume 59, Issue 4, doi.org/10.1111/jsap.12815
解説
何らかの合併症を併発した割合は全体の33%(61/185頭)で、そのうち死亡例が17頭(27.9%)に達しました。また交通事故による合併症が46頭(75.4%)と大部分を占めました。具体的な内容は以下です。
外傷を負った185頭のうち22頭(11.9%)は、治療の途中で死んでしまいました。そのうち12頭は猫の苦痛を推し量った上での安楽死です。内訳は以下ですが、交通事故が圧倒的に多いことがおわかりいただけるでしょう。
日本国内では野良猫をフィーチャーした写真集などがお気楽に売られています。またTwitterを始めとしたSNSでも、リツイートやいいねを稼ぎやすいという理由で野良猫の写真を投稿している人が散見されます。すべての人に悪気があるわけではありませんが、屋外を自由に出歩いている状態が猫にとって非常に危険であり、「毎日が日曜日でいいねぇ~」などと悠長なことを言っている場合ではないことは、そろそろ常識にならなければなりません。 過去に行われた複数の調査で共通している外傷のリスクファクターは「若い猫」「オス猫」「外出できる」です。車にひかれて血だらけになっている1度でも猫を見れば、ただ単に餌だけを与えることが「世話をしている」ことにならないことが直感的に理解できるでしょう。交通事故と並び外傷原因の大部分を占める「原因不明」(今調査中では26.5%)の中に「悪意ある人間による虐待」が含まれている可能性があることからも、猫を完全室内飼いにすることが推奨されます。
猫の外傷に伴う合併症
- 坐骨神経障害=10.3%
- 組織の壊疽=3.7%
- 尿もれ=3.2%
- 心肺機能停止=2.2%
- 手術部位の合併症=1.6%
- 再置換術=1.6%
- 脂肪肝=1.6%
- 誤嚥性肺炎=1.6%
- 膀胱炎=1.1%
- 血栓症=1.1%
- 橈骨神経障害=0.5%
- 脊髄神経障害=0.5%
- 尾の麻痺=0.5%
- 急性腎障害=0.5%
- 気管切開による閉塞=0.5%
外傷を負った185頭のうち22頭(11.9%)は、治療の途中で死んでしまいました。そのうち12頭は猫の苦痛を推し量った上での安楽死です。内訳は以下ですが、交通事故が圧倒的に多いことがおわかりいただけるでしょう。
外傷を負った猫の死因
- 交通事故=77.2%
- 落下13.6%
- 犬による攻撃4.5%
- 原因不明4.5%
日本国内では野良猫をフィーチャーした写真集などがお気楽に売られています。またTwitterを始めとしたSNSでも、リツイートやいいねを稼ぎやすいという理由で野良猫の写真を投稿している人が散見されます。すべての人に悪気があるわけではありませんが、屋外を自由に出歩いている状態が猫にとって非常に危険であり、「毎日が日曜日でいいねぇ~」などと悠長なことを言っている場合ではないことは、そろそろ常識にならなければなりません。 過去に行われた複数の調査で共通している外傷のリスクファクターは「若い猫」「オス猫」「外出できる」です。車にひかれて血だらけになっている1度でも猫を見れば、ただ単に餌だけを与えることが「世話をしている」ことにならないことが直感的に理解できるでしょう。交通事故と並び外傷原因の大部分を占める「原因不明」(今調査中では26.5%)の中に「悪意ある人間による虐待」が含まれている可能性があることからも、猫を完全室内飼いにすることが推奨されます。