伝説の出どころ
道を歩いていると、塀、庭先、電柱の根本、ベランダなどに水の入ったペットボトルが並べられてる光景によく出くわします。これらはすべて「猫は水入りのペットボトルを恐れる」という都市伝説を信じている人たちが置いたものです。非常にありふれた光景であるにもかかわらず、一体なぜこのような慣習が生まれたのかに関してはよくわかっていません。この謎を解くためには、いったん1980年代中ごろまで遡(さかのぼ)る必要があるようです。
1986年8月10日、アメリカ・カリフォルニア州の日刊紙「The San Diego Union-Tribune」(現:U-T San Diego)の中で、「水入りのビンは犬を遠ざける効果がある」という読者からの逸話的な報告が掲載されました。さらにそれから3年後に出版された「Curses! Broiled Again!」という本の中では、すでにこの逸話が都市伝説の1つとしてカウントされているようです。しかしその後も都市伝説は広がり続け、いつしか海を越えて世界各国へ広がっていきました。以下はその概要で、カッコ内はメディアで報道された年を表しています。
Snopes.com
ペットボトル伝説の拡散
- イギリス・ロンドン(1993)
- オーストラリア・シドニー(1994)
- オーストラリア・クイーンズランド(1996)
- アイルランド(1997)
伝説の検証
「そもそもペットボトルに効果はあるのか? 」という問題は議論の分かれるところですが、いくつかの検証実験の結果、「効果なし」の方に傾きつつあります。
日本の朝の情報番組「めざましテレビ」内で行われた実験によると、「黒い紙で覆ったペットボトル」、「水を入れたペットボトル」、「ペットボトル+ CD +鏡」というどの条件下でも、猫を遠ざける効果は認められませんでした。またアメリカで放映されている都市伝説検証番組「MythBusters」内でも同様の実験が行われ、やはり「効果なし」との結論に至っています。ペットボトルが猫を遠ざける一般的な理論的根拠を以下に列挙しますが、信じるかどうかは私たち次第といったところでしょう。
日本の朝の情報番組「めざましテレビ」内で行われた実験によると、「黒い紙で覆ったペットボトル」、「水を入れたペットボトル」、「ペットボトル+ CD +鏡」というどの条件下でも、猫を遠ざける効果は認められませんでした。またアメリカで放映されている都市伝説検証番組「MythBusters」内でも同様の実験が行われ、やはり「効果なし」との結論に至っています。ペットボトルが猫を遠ざける一般的な理論的根拠を以下に列挙しますが、信じるかどうかは私たち次第といったところでしょう。
ペットボトルの猫よけ効果(?)
- 単純に、猫は水が嫌い
- キラキラ反射する光を猫が嫌がる
- ペットボトルが磁場を乱す
- ボトル表面に自分の姿が映って驚く
- ボトル表面の静電気を嫌がる
伝説の結論
「猫は水入りのペットボトルを恐れる」という都市伝説が、一体いつ頃日本に輸入されたかに関しては定かではありません。また、当初は「犬よけ」であったはずのものがなぜ「猫よけ」になったのか、そして当初は「ビン」だったものがいつ「ペットボトル」にすり替わったのかも不明のままです。ただ一つの仮説としては、以下のような流れが考えられます。
ペットボトル伝説の時系列
- 誕生 水を入れたビンは当初、アメリカの家庭で、庭にやってくる野良犬よけとして使われていたと考えられます。おそらく「野生動物はキラキラ輝くものを怖がる」という古くからの言い伝えにのっとり、試してみたのでしょう。動物よけのセンサーライトのようなものも販売されていますが、水を入れたビンで安価に済ませたかったのかもしれません。
- 新聞の掲載 試しにやってみた野良犬対策が思いのほかうまくいったため、考案者は地元の新聞に投稿したと考えられます。新聞も紙面を埋めるための「小ネタ」として採用したのではないでしょうか。
- 都市伝説の成立 新聞の読者が面白半分でやりだしたという可能性が考えられます。ほとんどお金がかからないという点や、道具がすぐ手に入るという点も流行に拍車をかけたことでしょう。
- 都市伝説の伝播 話として面白く、安価で、人間に対して害を与えずにすぐに実行できるこの都市伝説は、海を越えて世界にも広がるようになりました。
- 日本上陸 どこかでこの話を知ったテレビを始めとするマスコミが、面白半分で取り上げ、それを見聞きした読者や視聴者が一斉にやりでした、というシナリオが考えられます。今で言うと「納豆はダイエットに効果的!」というテレビの内容を信じた視聴者が、次の日になって納豆を大量に買い込む、という現象に近いのかもしれません。
- マイナーチェンジ 日本には野良犬よりも野良猫の方が圧倒的に多かったため、当初は犬用だったものが、便宜上猫用にすりかわった可能性があります。また1982年から飲料用として使用することが認められたペットボトルが、シェアの拡大とともに、ピンにとってかわっていったと推測されます。