異種感覚間の表象実験方法
調査に参加したのは5つの猫カフェでスタッフとして勤務している43頭の猫たち(オス猫24+メス猫19 | 平均年齢4.14歳 | 飼養期間は最低4ヶ月)と、一般家庭でペットとして飼われている44頭の猫たち(オス猫24+メス猫20 | 平均年齢5.14歳 | 飼養期間は最低11ヶ月)。
期待違反メソッドを採用し、ラップトップ型のパソコンから1秒間に1回のペースで4回猫の名前を呼び、その直後に人間の顔を7秒間画面に表示して猫の自発的な行動を観察することで、異種感覚間の表象を有しているのかどうかを検証しました。
「期待違反メソッド」とは、予期していたものとは違う情報に出くわした時、驚いて思わず二度見してしまう現象のことです。例えば怖い雰囲気の男性が「クロちゃんです!」と異様に高い声で自己紹介すると、驚いて思わず顔をじっと見てしまうなどです。また「異種感覚間の表象」とは、耳を通して認識した人間の声と、頭の中で想起した人間の顔を脳内で一致させることができる能力のことで、実験に当たっては以下に示す4つのパターンが設けられました。
期待違反メソッドを採用し、ラップトップ型のパソコンから1秒間に1回のペースで4回猫の名前を呼び、その直後に人間の顔を7秒間画面に表示して猫の自発的な行動を観察することで、異種感覚間の表象を有しているのかどうかを検証しました。
「期待違反メソッド」とは、予期していたものとは違う情報に出くわした時、驚いて思わず二度見してしまう現象のことです。例えば怖い雰囲気の男性が「クロちゃんです!」と異様に高い声で自己紹介すると、驚いて思わず顔をじっと見てしまうなどです。また「異種感覚間の表象」とは、耳を通して認識した人間の声と、頭の中で想起した人間の顔を脳内で一致させることができる能力のことで、実験に当たっては以下に示す4つのパターンが設けられました。
期待違反メソッド
- 飼い主の声→飼い主の顔(一致)
- 飼い主の声→第三者の顔(不一致)
- 第三者の声→第三者の顔(一致)
- 第三者の声→飼い主の顔(不一致)
異種感覚間の表象実験結果
期待違反メソッドに則(のっと)った予測によると、「不一致」と記された2つのパターンにおいて猫たちに驚きや不審感が生じ、ラップトップに表示された人間の顔を見つめたり匂いを嗅ぐ時間が長くなるはずです。1つのパターンにつき、複数の猫たちから得られた47~51回のテスト結果を統計的に解析したところ、以下の3点においてグループ間の格差が見られたと言います。「>」は人の顔に興味を抱いていた総合時間が長いという意味です。
一方予測に反し、一般家庭で飼育されているペット猫たちでは「不一致」パターンにおける驚きの明白なサインは確認されませんでした。この現象に関して調査チームは、人間の顔を見分ける能力がカフェ猫に比べて劣っていたからではないかと推測しています。
ヒントとしては、異なる人種の顔をたくさん見たことがある人ほど見分ける能力が高い(:Dahl, 2014)とか、飼育環境下にあるチンパンジーは年長になるほど人間の顔を的確に見分けることができる(:Dahl, 2013)といった報告が挙げられます。こうした過去の事例と同様、人間の顔を正確に見分けるためにある程度の経験が必要なのだとすると、限られた人間としか接することがないペット猫よりも、不特定多数の人間と接する機会が多いカフェ猫の方が、人間の顔を見分ける能力が高いということになるでしょう。
ペット猫では「一致」と「不一致」の両方のパターンにおいて、カフェ猫よりも長い時間画面に興味を抱く傾向が確認されました。この現象は家の中に入ってきた実験者の存在や見慣れない機材など、新奇なものに対して興味を抱いた結果なのかもしれません。日頃からたくさんの人間たちと接するカフェ猫たちの方が「場馴れ」していたと言い換えることもできます。 Cats match voice and face: cross-modal representation of humans in cats (Felis catus)
S.Takagi, M.Arahori, H.Chijiiwa, A.Saito, H.Kuroshima, K. Fujita, Animal Cognition volume 22, pages901?906(2019), DOI:10.1007/s10071-019-01265-2
- カフェ猫「不一致」>カフェ猫「一致」
- ペット猫「不一致」>カフェ猫「一致」
- ペット猫「一致」>カフェ猫「一致」
一方予測に反し、一般家庭で飼育されているペット猫たちでは「不一致」パターンにおける驚きの明白なサインは確認されませんでした。この現象に関して調査チームは、人間の顔を見分ける能力がカフェ猫に比べて劣っていたからではないかと推測しています。
ヒントとしては、異なる人種の顔をたくさん見たことがある人ほど見分ける能力が高い(:Dahl, 2014)とか、飼育環境下にあるチンパンジーは年長になるほど人間の顔を的確に見分けることができる(:Dahl, 2013)といった報告が挙げられます。こうした過去の事例と同様、人間の顔を正確に見分けるためにある程度の経験が必要なのだとすると、限られた人間としか接することがないペット猫よりも、不特定多数の人間と接する機会が多いカフェ猫の方が、人間の顔を見分ける能力が高いということになるでしょう。
ペット猫では「一致」と「不一致」の両方のパターンにおいて、カフェ猫よりも長い時間画面に興味を抱く傾向が確認されました。この現象は家の中に入ってきた実験者の存在や見慣れない機材など、新奇なものに対して興味を抱いた結果なのかもしれません。日頃からたくさんの人間たちと接するカフェ猫たちの方が「場馴れ」していたと言い換えることもできます。 Cats match voice and face: cross-modal representation of humans in cats (Felis catus)
S.Takagi, M.Arahori, H.Chijiiwa, A.Saito, H.Kuroshima, K. Fujita, Animal Cognition volume 22, pages901?906(2019), DOI:10.1007/s10071-019-01265-2