猫の古典的条件づけ実験方法
古典的条件付けとは、プラスでもマイナスでもない刺激と快や不快が結びつくことにより、中性的だった刺激がいつしか快もしくは不快を喚起する刺激に変わってしまう現象のことです。例えばブザー音の後に猫の足に電気ショックを与え続けると、猫はブザー音を聞いただけで足を収縮させて被害を避けようとします。この時、足に加えられる電気ショックのことを「無条件刺激」、ショックの前に鳴らすブザー音を「条件刺激」、足を引っ込める動作を「無条件反応」と呼びます。こうした古典的条件づけは人間を含めた動物全般が備えている重要な学習能力の1つです。
日常生活では「猫缶の音を聞いただけでどこからともなく現れる」や「爪切りを見ただけで逃げ出す」などの事例がわかりやすいでしょう。前者は猫缶の音と快が、後者は爪切りの見た目と不快が古典的条件づけを通してリンクした結果です。 1960年代に行われた調査では、無条件刺激の強さが猫の学習能力に及ぼす影響が検証されました。具体的なやり方は、猫をハンモックで固定して動けないようにし、右足にストラップを巻いて弱い電流を流すというものです。 Reinforcement strength in classical conditioning of leg flexion, freezing, and heart rate in cats
Alfred Bruner, Conditional Reflex 4, 24?31 (1969), DOI:10.1007/BF03000075
日常生活では「猫缶の音を聞いただけでどこからともなく現れる」や「爪切りを見ただけで逃げ出す」などの事例がわかりやすいでしょう。前者は猫缶の音と快が、後者は爪切りの見た目と不快が古典的条件づけを通してリンクした結果です。 1960年代に行われた調査では、無条件刺激の強さが猫の学習能力に及ぼす影響が検証されました。具体的なやり方は、猫をハンモックで固定して動けないようにし、右足にストラップを巻いて弱い電流を流すというものです。 Reinforcement strength in classical conditioning of leg flexion, freezing, and heart rate in cats
Alfred Bruner, Conditional Reflex 4, 24?31 (1969), DOI:10.1007/BF03000075
猫の古典的条件づけ実験結果
3頭には最大0.7ミリアンペアという弱めの電流、残りの4頭には3~4ミリアンペアという強めの電流を流し、「音に反応して50%の割合で自発的に足を収縮させる」という基準に達するまでに何回のトライアルが必要になるかを比較しました。
その結果、弱い電流のグループでは22日間にわたる合計440回のトライアルを受けたにもかかわらず1頭も基準に達しなかったのに対し、強い電流のグループではわずか平均235回で全頭が基準を超えたといいます。また強い電流のグループでは2日目のセッション(21~40回目)で早くも条件づけが成立し始めていたとも。さらに弱い電流のグループに対して強い電流を流してみたところ、わずか数回のトライアルで体の硬直や心拍数の低下反応が見られるようになり、3日目のセッション(=60回以内)では全頭で50%を超える反応率が確立していたそうです。 「猫がなかなか名前を覚えてくれない」という事実と「猫はいじめられたことを忘れない」という風説は一見すると矛盾しています。しかし上記した実験結果から類推すると、猫が感じる快もしくは不快の強さが学習能力に大きな影響を及ぼしており、どちらか一方が間違いという訳ではなさそうです。例えば猫に与えるご褒美が弱ければいつまでたっても名前を覚えてくれないでしょうし、猫が味わう不快が十分強ければたった一度のいじめ経験でも人間のことを嫌いになってしまうでしょう。TNRの後、警戒心が強くなって人間に近づかなくなる猫がいるのは、捕獲や手術の経験が強烈なトラウマになったからだと考えられます。
その結果、弱い電流のグループでは22日間にわたる合計440回のトライアルを受けたにもかかわらず1頭も基準に達しなかったのに対し、強い電流のグループではわずか平均235回で全頭が基準を超えたといいます。また強い電流のグループでは2日目のセッション(21~40回目)で早くも条件づけが成立し始めていたとも。さらに弱い電流のグループに対して強い電流を流してみたところ、わずか数回のトライアルで体の硬直や心拍数の低下反応が見られるようになり、3日目のセッション(=60回以内)では全頭で50%を超える反応率が確立していたそうです。 「猫がなかなか名前を覚えてくれない」という事実と「猫はいじめられたことを忘れない」という風説は一見すると矛盾しています。しかし上記した実験結果から類推すると、猫が感じる快もしくは不快の強さが学習能力に大きな影響を及ぼしており、どちらか一方が間違いという訳ではなさそうです。例えば猫に与えるご褒美が弱ければいつまでたっても名前を覚えてくれないでしょうし、猫が味わう不快が十分強ければたった一度のいじめ経験でも人間のことを嫌いになってしまうでしょう。TNRの後、警戒心が強くなって人間に近づかなくなる猫がいるのは、捕獲や手術の経験が強烈なトラウマになったからだと考えられます。