指差し実験の方法
犬においては人間が見せる明示的なシグナル(指差し)を、何の予備訓練がなくても理解できるとされています。例えば生後間もない子犬の目の前で、犬にとって毒にも薬にもならない物(石ころなど)を指差すと、ちゃんと指先にある対象物に注意を向けてくれるなどです。こうした理解力はアザラシやヤギ、そして人間とふんだんに接しながら育ったサルにおいても、レベル的には犬に劣るものの確認されています。ではペット動物として長い歴史を持つ猫ではどうなのでしょうか?
ハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学動物学部のチームは、猫にも犬と同等の理解力があるかどうかを検証するため、一般家庭で飼われている犬と猫を対象とした比較実験を行いました。実験に参加した猫たちの選別基準は「猫の気を引く音を出したり猫の名前を5分に1回のペースで呼び、少なくとも2回は実験者の方に近づく」「実験者が猫の隣に座り1分撫でる間、立ち去らない」「ボウルの中におやつを入れ1分半のうちに自発的に食べる」のうち2つ以上を満たすことです。
犬と同居していない猫7頭(去勢済みのオス4+未去勢のオス1+避妊済みのメス1+未避妊のメス1/平均3.65 歳)と犬と同居している猫7頭(去勢済みのオス2+避妊済みのメス1+未避妊のメス4/平均4.67歳)を対象とし、2つのボウルを用意して一方にだけおやつを入れ、おやつが入っている方のボウルを指差した時、ジェスチャーの意味を理解できるかどうかを検証しました。ジェスチャーのバリエーションは以下の4つです。
- ボウルから10~20cmの位置に人差し指を固定し猫が何らかのリアクションを取るまでその状態を持続する
- ボウルから70~80cmの位置に人差し指を固定し猫が何らかのリアクションを取るまでその状態を持続する
- ボウルから10~20cmの位置を数秒だけ人差し指で差し示す
- ボウルから70~80cmの位置を数秒だけ人差し指で差し示す
指差し実験の結果
1つのバージョンを1頭につき8回ずつ繰り返し、合計32回のテストを行ったところ、すべてのバージョンにおいて70%以上の正答率を示したといいます。また猫では近くで指を差す方の成績が良かったのに対し、同様の実験を行った犬においてこうした差は見られなかったとも。最初の10回と最後の10回の成績に違いは見られなかったことから、テスト中の学習によって覚えたのではなく、始めから指差しの意味を理解していたものと推測されました。
A Comparative Study of the Use of Visual Communicative Signals in Interactions Between Dogs (Canis familiaris) and Humans and Cats(Felis catus) and Humans
Adam Miklosi, Peter Pongracz, Gabriella Lakatos, Jozsef Topal, Vilmos Csany, Journal of Comparative Psychology(2005), Vol. 119, No. 2, DOI: 10.1037/0735-7036.119.2.179
Adam Miklosi, Peter Pongracz, Gabriella Lakatos, Jozsef Topal, Vilmos Csany, Journal of Comparative Psychology(2005), Vol. 119, No. 2, DOI: 10.1037/0735-7036.119.2.179