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光る猫

 蛍光タンパク質「GFP」の作用により緑色に光ることで有名な「光る猫」について解説します。

光る猫とは?

遺伝子操作によってGFPを組み込まれた猫  光る猫は2011年、メイヨークリニックの分子生物学者エリック・ポーシュラ氏が、遺伝子組み換え技術(トランスジェネシス)により生み出した緑色に光る猫。
 彼が実験対象としたのは、メス猫の体内から取り出した卵細胞。そこにサルから発見された「TRIMCyp」と呼ばれるタンパク質と、特殊な光に反応して緑色に発光するタンパク質生成遺伝子(GFP)の両方が埋め込まれました。なお「TRIMCyp」は、猫免疫不全ウイルス(FIV)に対して抵抗力を持っていることが確認されているタンパク質です。
 こうした遺伝子操作の結果、3匹の子猫が誕生しました。体内に「TRIMCyp」と「GFP」の両方が本当に存在しているかどうかを確認するため、まず行われたのが子猫の血液とFIVの接触実験。その結果、実験室での予測通りウイルス増殖の抑制が確認されたといいます。また「GFP」の存在を確認するため子猫の体に特殊な光を当てたところ、独特の緑色で光ることも確認されました。
 このようにして光る猫は、「GFP」を保有する最初の肉食動物として医学史に名を刻むこととなりました。 Glow cat: fluorescent green felines could help study of HIV Fluorescent Cats Aid Research

光る猫の写真

 以下でご紹介するのは、GFPによる蛍光色で有名な「光る猫」の写真です。 紫外線の下でぼんやりと緑色に発行するGFP猫
 紫外線を当てると、全身の皮膚に分布したGFPが緑色に発光する。1961年、クラゲの体内からこの蛍光タンパク質を発見したボストン大学の下村脩名誉教授は、2008年度のノーベル化学賞を受賞した。写真の出典はこちら
GFPを組み込まれた実験用のヌードマウス
 緑色に光るマウスは早くも1997年、日本の大阪大学が育成に成功している。現在、緑色の蛍光タンパク質を全身の細胞に導入した「GFPヌードマウス」は、がん細胞などを研究する際の実験動物として販売されるようになった。写真の出典はこちら
GFPの技術によってマルチカラーを発現するGloFish
 蛍光タンパク質の技術を応用して様々な色を発現する魚「GloFish®」。カリフォルニア大学サンディエゴ校ロジャー・ヨンジェン・チエン教授が、GFPの構造を細かく解析したことにより、従来の緑色だけでなく様々な色合いを作り出すことができるようになった。ちなみにこの功績により、チェン教授も2008年度のノーベル化学賞を受賞している。写真の出典はこちら
GFPを用いて芸術作品となったウサギのアルバ(Alba)
 蛍光タンパク質を用いた芸術(?)作品「Alba」。2000年、ブラジル系アメリカ人芸術家エドワルド・カック氏が、フランス人遺伝学者に協力を仰いで完成させたという。このウサギを「芸術」と見るか「悪ふざけ」と見るかは、見る者の倫理観に任されるのだろう。写真の出典はこちら
紫外線下で見たさまざまな哺乳動物の蛍光性
 2023年、猫が蛍光を発するというニュース記事が話題になった。調査の概要は以下出典資料:Travouillon, 2023)
  • 27目79科に属する合計125種の哺乳動物で蛍光性が確認された
  • 蛍光性は光の散乱による錯覚ではない
  • 夜行性の動物で蛍光性が強い
  • 陸上、地下、樹上性動物の蛍光性が特に強い
  • 色素が薄い皮膚、被毛、ひげ、鉤爪、とげ、歯などの蛍光性が強い
 猫を含めた非常に多くの哺乳動物が持つ「蛍光」という奇妙な特徴に関し調査チームは、進化・適応的な意味はそれほどない(≒何かの役に立っているわけではない)と推測している。仮説としては「有害な物質から体を守るため色素の沈着していないケラチンの量を増やした結果、偶然の産物として蛍光性が残存した」などが提唱されている。写真の出典はこちら