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ツメダニ症~症状・原因から治療・予防法まで

 人獣共通感染症の内、ツメダニ症について病態、症状、原因、治療法別に詳しく解説します。人にも犬猫などのペットにも感染する病気ですので、予備知識として抑えておきましょう。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

ツメダニ症の病態と症状

 ツメダニ症とは、ダニの一種であるツメダニ(Cheyletiella)によって引き起こされる皮膚病のことです。 ツメダニ皮膚炎を引き起こすツメダニの顕微鏡写真  皮膚症状を引き起こすツメダニとしては、主に犬に寄生する「イヌツメダニ」(C.yasguri)、主に猫に寄生する「ネコツメダニ」(C.blakei)、主にウサギに寄生する「ウサギツメダニ」(C.parasitovorax)の3種が有名で、体の前方についた鋭い鉤爪(フック)を最大の特徴としています。この鉤爪で宿主の皮膚に取りつき、傷をつけて体液やリンパ液を摂取しながら生きていきます。皮膚に穴をあけて掘り進めるヒゼンダニ(疥癬)と大きく異なるのはこの点でしょう。
 人にも動物にも感染する人獣共通感染症の一種ですが、人間にとって幸いなことに、ツメダニは人の皮膚の上では繁殖できません。ですから一過性の症状を引き起こしたのち、自然消滅していきます。ただし犬や猫では継続して症状を引き起こしますので、早期の治療が必要です。
ツメダニ症の主症状
ツメダニ皮膚炎を起こした犬の皮膚とフケ
  • フケ
  • ただれ
  • かさぶた(痂皮, かひ)
  • かゆみ
人の皮膚上にできた丘疹  犬や猫に感染したときのツメダニ皮膚炎の最大の特徴は大量のフケです。多くの場合、両側対称性で、背中に多いとされます。その他の好発部位としては耳の後ろ、しっぽの付け根、股間、おなかなどが挙げられます。
 一方、人間に感染したときの症状は、皮膚の赤い盛り上がり(丘疹)がメインです。ヒゼンダニが皮膚の中に穴をあけて作った通路を「疥癬トンネル」というのに対し、ツメダニが皮膚表面をひっかくことで作った傷のことを「偽トンネル」と呼ぶこともあります。ただし「偽」とは言っても、激しいかゆみを引き起こす点に関しては変わりありません。

ツメダニ症の原因

 ツメダニ症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
ツメダニ症の主な原因
  • 接触感染  ツメダニ症の感染経路は、犬や猫などのペットと直接的に接触したり、ツメダニのいるシーツや寝具などを間接的に触ることで感染します。

ツメダニ症の治療

 ツメダニ症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
ツメダニ症の主な治療法
  • 殺ダニ治療  ツメダニ症の治療としては、まずペットに寄生したダニを殺すような各種の治療が行われます。具体的には、硫黄・サリチル酸配合のシャンプー、フィプロニルのスポットオンやスプレー、セラメクチンを含んだスポットオン(レボリューション®)、アミトラズ、イベルメクチンの投与などです。副作用が強い薬もあるため、事前に獣医師から十分な説明を受けるようにします。
  • ツメダニ症の予防策  ツメダニ症の予防策は、定期的に猫をブラッシングしてノミやダニが寄生しないようにすることや、部屋の中をきれいにしてノミやダニが繁殖しにくい環境を整えることです。ツメダニの繁殖条件は、「温度20~30度」、「湿度60%~70%程度」、「フケなど人からの皮膚剥離物や食物の食べこぼしなどが豊富にある」、「カーペットや衣類など住み家がある」という環境です。
     また、猫を放し飼いにしている場合は、外の猫からダニをもらってしまわないよう、完全室内飼いに切り替えるという決断も必要でしょう。 猫のノミ・ダニ用品