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狂犬病~症状・原因から治療・予防法まで

 人獣共通感染症の内、狂犬病(きょうけんびょう)について病態、症状、原因、治療法別に詳しく解説します。人にも犬猫などのペットにも感染する病気ですので、予備知識として抑えておきましょう。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

狂犬病の病態と症状

 狂犬病とは、ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス(Rabies virus)を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症であり、ヒトを含めたすべての哺乳類が感染します。
狂犬病ウイルス(顕微鏡写真)  世界中におけるこの病気の感染者数は約5万人に及び、そのほとんどが死亡するという極めて恐ろしい病気です。特徴的な症状のひとつとして「水などを恐れる」という項目があることから、恐水症(きょうすいしょう/hydrophobia)と呼ばれることもあります。
 ウイルスの潜伏期間は咬傷の部位によってまちまちです。咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは神経系を介して脳神経組織に到達し発病しますが、その感染の速さは日に数ミリから数センチと言われています。潜伏期間は傷口が脳組織に近いほど短くなり、約2週間です。逆に傷口が足などの遠位部では、数ヶ月~数年という記録もあります。
 様々な潜伏期を経て狂犬病が発症してしまった時の主な症状は以下です。急速に進行する「狂躁型」(きょうそうがた, 全体の70%)と、比較的緩やかに進行する「沈鬱型」(ちんうつがた, 全体の30%)という2タイプがありますが(→WHO)、以下では「狂躁型」の主な症状を示します。
狂犬病の主症状
  • 前駆期 前駆期には頭痛、発熱、倦怠感といった風邪に似た症状のほか、傷口のかゆみ、熱感といった軽微な症状が見られます。
  • 急性期(狂騒期) 急性期(狂騒期)の症状は、脳の機能異常がメインとなります。具体的には原因のない不安感、水を極端に恐れる、風を恐れる、光を恐れる、脈絡なく興奮する、麻痺、精神錯乱などです。また、腱反射や瞳孔反射の亢進も見られるようになります。
  • 昏睡期(麻痺期) 昏睡期(麻痺期)の症状は、脳神経の麻痺によって引き起こされます。具体的には昏睡→呼吸障害→死亡といった進行です。

狂犬病の原因

 狂犬病の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
狂犬病の主な原因
  • 動物の噛み傷  一般には感染した動物の咬み傷などから唾液と共にウイルスが伝染する場合が多く、傷口や目・唇など粘膜部を舐められた場合も危険です。人への感染源のほとんどが犬ですが、それ以外の野生動物が感染源となることもあります。
 狂犬病を国内から駆逐した「清浄国」としては、日本のほかイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、北欧の一部などがあります。一方アメリカにおいては、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリの間で流行する4種の流行株が確認されており、そのすべてが犬猫にも感染することから、いまだに油断できないというのが現状です。また2014年、日本と同じく長年感染報告がなかった台湾において、野生のイタチアナグマでウイルスが見つかったことから、厚生労働省と国立感染症研究所は、アライグマ、タヌキ、アカギツネといった野生動物、および収容施設や交通事故で死んだ犬などを対象とした全国的な狂犬病ウイルス調査に乗り出しています。

狂犬病の治療

 狂犬病の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
狂犬病の主な治療法
  • 無し  狂犬病発症後の死亡率はほぼ100%で、確立した治療法は今の所ありません。「最も致死率が高い病気」として後天性免疫不全症候群(エイズ)とならんでギネス・ワールド・レコーズにも記録されているほどです。
  • 予防  発症後の有効な治療法はありませんが、感染前(暴露前)であれば、ワクチン接種によって予防が可能です。これはヒト以外の哺乳類でも同様であり、そのため日本では狂犬病予防法によって、飼い犬の市町村への登録及び毎年1回の狂犬病ワクチンの予防接種が義務付けられています。