猫の巨大結腸症の病態と症状
猫の巨大結腸症とは、大腸の一部である結腸(けっちょう)と呼ばれる部位の収縮力が弱まり、滞留した便が結腸を押し広げてしまった状態を言います。猫の結腸は約20cmです。
38頭の猫を対象とした研究によると、平均発症年齢は4.9歳とされています。品種や性別による発症率に差はありません。原因が分かっている場合は「後天性巨大結腸症」、よくわからない場合は「特発性巨大結腸症」と呼び分けられることもあります。「後天性」は犬でも猫でも発症しますが、「特発性」を発症するのはほとんどが猫です。
猫の巨大結腸症の症状としては以下のようなものが挙げられます。便秘は、下剤や浣腸でもなかなか改善しない「重症便秘」が特徴です。
猫の巨大結腸症の症状としては以下のようなものが挙げられます。便秘は、下剤や浣腸でもなかなか改善しない「重症便秘」が特徴です。
猫の巨大結腸症の主症状
- 1日に何度もトイレへ行く
- 数週間~数年にわたる便秘
- 下腹部のコリコリ
- 食欲不振
- 嘔吐
- 毛づやの悪化
猫の巨大結腸症の原因
猫の巨大結腸症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の巨大結腸症の主な原因
- 先天性 生まれつき結腸の一部が狭い場合など、そこで便通が妨げられ、結腸壁を押し広げてしまいます。また、結腸の蠕動運動(便を押し出す運動)を促す自律神経系の先天的異常というパターンもあります(ヒルシュスプルング病)。
- 自律神経の障害 病気や事故によって腸の運動をつかさどる自律神経に傷がつくと、便を押し出す蠕動運動がうまくいかなくなり、結腸内に便が滞留してしまいます。最も多いのは、骨盤骨折に伴う周辺組織の損傷です。
- 骨の変形 病気や事故で骨盤や脊椎などが変形し、便の通過を物理的に邪魔してしまうことで結腸が巨大化することもあります。
猫の巨大結腸症の治療
猫の巨大結腸症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の巨大結腸症の主な治療法
- 対症療法 疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には浣腸などによってたまった便を少しずつ体外に排出したりします。しかし浣腸は脱水症状に陥りやすいため、獣医師監督の下、輸液などと並行して行います。またリン酸を含有する「フリート浣腸」などは、重大な低カルシウム血症を起こす危険性があるため、猫に対しては絶対NGです。
- 食事療法 便秘になりにくい療法食が用いられることもあります。ただし繊維の摂取によって便の体積が増し、症状の悪化につながる可能性もありますので、自己判断ではなく獣医師のアドバイスに従うようにします。
- 外科手術 他の治療法が効果的でない場合などは、結腸の伸びきった部分が外科的に切除されます。術後はしぶり腹(便を出そうとするが出ない状態)や下痢が後遺症として現れることもありますが、前者は数日、後者は長くとも6週間以内には消失するとされます。