猫の精巣腫瘍の病態と症状
猫の精巣腫瘍とは、オス猫の生殖器で、精子を作り出す精巣に発生した腫瘍のことです。犬に比べると、猫での発症はまれとされます。
オスの精巣の中には精細管(せいさいかん)と呼ばれる細い管が、まるでお湯でほぐす前のインスタントラーメンのような形で密集しながら存在しています。この精細管を一本取りだして断面にすると、精子の形成に関わる様々な種類の細胞を見て取ることができます。「精粗細胞」は精子のもとになる細胞で、「セルトリ細胞」は精粗細胞に栄養を与えて補助する細胞です。そして「ライディッヒ細胞」は、精細管と精細管の間に挟まって男性ホルモンを分泌したりします。 精巣腫瘍とは、こうした細胞のうちのどれかが腫瘍化した状態のことです。具体的には以下のような種類があります。なお全てのタイプに共通する「メス化傾向」という症状は、「お乳が張る・脇腹の対称性脱毛・鼠径部(太ももの付け根)の色素沈着」を指します。また「潜在精巣」(せんざいせいそう)とは、本来陰嚢(いんのう=玉袋)の中にあるべき精巣が、おなかの中にとどまっている状態のことです。
オスの精巣の中には精細管(せいさいかん)と呼ばれる細い管が、まるでお湯でほぐす前のインスタントラーメンのような形で密集しながら存在しています。この精細管を一本取りだして断面にすると、精子の形成に関わる様々な種類の細胞を見て取ることができます。「精粗細胞」は精子のもとになる細胞で、「セルトリ細胞」は精粗細胞に栄養を与えて補助する細胞です。そして「ライディッヒ細胞」は、精細管と精細管の間に挟まって男性ホルモンを分泌したりします。 精巣腫瘍とは、こうした細胞のうちのどれかが腫瘍化した状態のことです。具体的には以下のような種類があります。なお全てのタイプに共通する「メス化傾向」という症状は、「お乳が張る・脇腹の対称性脱毛・鼠径部(太ももの付け根)の色素沈着」を指します。また「潜在精巣」(せんざいせいそう)とは、本来陰嚢(いんのう=玉袋)の中にあるべき精巣が、おなかの中にとどまっている状態のことです。
精巣腫瘍の種類と症状
- セルトリ細胞腫 セルトリ細胞腫はセルトリ細胞が腫瘍化したものです。老猫で多く、片方の精巣だけが巨大化してメス化傾向を示します。猫では極めてまれなタイプです。
- セミノーマ セミノーマとは「精上皮腫」とも呼ばれ、精祖細胞など精子を作る細胞が腫瘍化したものです。多くは片側だけに発生し、大きさは2センチ未満です。犬においては非常にありふれた良性腫瘍で、4歳以上の犬の約11%に見られるといいますが、猫ではまれです。
- 間質細胞腫瘍 間質細胞腫瘍とは、精細管と精細管の間にあるライディッヒ細胞が腫瘍化したものです。老猫に多く発症し、メス化傾向を示します。たいていは片側孤立性で、大きさは1~2cm程度です。潜在精巣が危険因子とされますが、猫ではまれです。
猫の精巣腫瘍の原因
猫の精巣腫瘍の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
なお以下は犬に発生した停留精巣です。鼠径部(腿の付け根)で停滞を起こした場合は、写真のように目で見たり手で触ったりすることができますが、鼠径部より上のおなかの中で停滞を起こしてしまった場合は、そう簡単にはいきません。
精巣腫瘍の主な原因
- 潜在精巣 「潜在精巣」とは、精巣が本来あるべき位置からずれ、陰嚢内に入っていない状態のことです。「停留精巣」、「睾丸停滞」とも呼ばれます。精巣は胎児のときに腎臓のすぐ後ろに移動し、出生が近づくにつれて体の後方を移動して最終的には陰嚢内に入ります。しかし先天的な異常でこの精巣の移動が正しく行われずに途中で止まると、潜在精巣が発生して腫瘍化しやすくなってしまいます。腫瘍化を引き起こす要因は定かではありませんが、おそらく比較的高温に保たれている腹腔の環境が、正常細胞の破壊を促しているのだろうと推測されています。
なお以下は犬に発生した停留精巣です。鼠径部(腿の付け根)で停滞を起こした場合は、写真のように目で見たり手で触ったりすることができますが、鼠径部より上のおなかの中で停滞を起こしてしまった場合は、そう簡単にはいきません。
猫の精巣腫瘍の治療
猫の精巣腫瘍の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
精巣腫瘍の主な治療法
- 手術療法 腫瘍化した精巣を除去する手術が行われます。陰嚢内における腫瘍は通常の去勢手術と同じ手順ですが、鼠径部や腹腔内における腫瘍はやや大がかりになります。特におなかの中にとどまった潜在精巣はレントゲンや超音波でも確認することが困難なため、いったんおなかを開けてから探すという順番になることも少なくありません。
- 化学療法 腫瘍が悪性化し、なおかつ猫が手術に耐えられないと判断された場合は抗がん剤など薬物療法が施されることがあります。また手術後の補助療法としても行われます。
- 性腺刺激ホルモン療法 性腺を刺激する人工ホルモンを投与して、停滞している精巣を強引に降下させることもあります。ただしこの治療法は、猫が4ヶ月齢未満の場合に限ります。これは、精巣の降下が4ヶ月齢を過ぎてから起こることはまれで、6ヶ月齢を過ぎるとまず起こることはないからです。