アドボケート®猫用とは？
「アドボケート®猫用」とはイミダクロプリド（imidacloprid）とモキシデクチン（moxidectin）を有効成分とする猫向けのフィラリア・線虫（回虫と鉤虫）・ノミ・耳ダニ駆除予防製品。日本国内ではスポットオン（ピペット滴下式）が動物医薬品として認可されています。
イミダクロプリドの効果
アドボケート®猫用の有効成分であるイミダクロプリドはクロロニコチ二ル系殺虫剤の一種。ノミの神経細胞シナプス後膜にあるニコチン性アセチルコリンレセプター（nAChR）に作用して正常な神経伝達を遮断します。
ネコノミ（Ctenocephalides felis）を対象とした調査では、幼虫でも成虫でも接触からわずか20分以内に駆除されたといいます。この結果から、血液を吸い取ることで成分を体内に取り込んでいるのではなく、体表との物理的な接触によって吸収され、殺ノミ効果を発揮することが判明しています。
イミダクロプリドの作用部位は昆虫に特異的なもので脊椎動物にはないため、人間や猫に対しては安全性が高いと考えられています。また脳内の血液脳関門を通過しないことも確認されています（
:Mehlhorn, 1999）。
ネコノミ（Ctenocephalides felis）を対象とした調査では、幼虫でも成虫でも接触からわずか20分以内に駆除されたといいます。この結果から、血液を吸い取ることで成分を体内に取り込んでいるのではなく、体表との物理的な接触によって吸収され、殺ノミ効果を発揮することが判明しています。イミダクロプリドの作用部位は昆虫に特異的なもので脊椎動物にはないため、人間や猫に対しては安全性が高いと考えられています。また脳内の血液脳関門を通過しないことも確認されています（
:Mehlhorn, 1999）。
イミダクロプリドの危険性・副作用
イミダクロプリドは体内において消化管から速やかに吸収され、肝臓による代謝を受けた後、主に尿中に排出されます。体内への蓄積はなく、発がん性、遺伝毒性、生殖毒性も確認されていません。経口的に摂取した場合のマウスにおけるLD50（半数致死量）は体重1kg当たり131～168mg、ラットのおけるそれは424～475mgとされています。また経皮的に接触する場合のLD50は体重1kg当たり5g程度です（:ScienceDirect）。
:ScienceDirect）。
モキシデクチンの効果
モキシデクチンはマクロライド系薬剤（12員環以上の大環状ラクトン）の一種。無脊椎動物の神経や筋肉にあるグルタミン酸開閉型塩化物イオン受容体に作用し、神経間の信号をブロックすることで麻痺を引き起こします。駆虫効果を発揮する線虫類はフィラリア（イヌ糸状虫）の幼体（L3およびL4段階）、猫回虫、猫鉤虫の幼虫と成虫などです。
モキシデクチンの作用部位は線虫に特異的ですので、人や猫といった哺乳動物に対しては安全性が高いと考えられています。
モキシデクチンの作用部位は線虫に特異的ですので、人や猫といった哺乳動物に対しては安全性が高いと考えられています。
モキシデクチンの危険性・副作用
日本の食品安全委員会では各種の毒性試験から考え、モキシデクチンに遺伝毒性、発がん性、神経毒性はないとの見解を示しています。マウスにおける半数致死量（LD50）は経口摂取の場合で体重1kg当たり42～84mg、NOAEL（毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に有害な影響がみられない最大の投与量）は体重1kg当たり1日1.5mgです。また犬を対象とした90日間に渡る亜急性毒性試験ではNOAELが体重1kg当たり1日0.3mgとされています。人間におけるADI（一日摂取許容量）は安全を考慮し体重1kg当たり1日0.003mgに設定されています（:動物用医薬品専門調査会）。
なお体重1kg当たり1.6mgのモキシデクチンを経口摂取した場合に見られた犬における副作用は以下です。猫でも同様の症状を示す可能性があり、製品の添付文書でも注意書きがなされています。
:動物用医薬品専門調査会）。なお体重1kg当たり1.6mgのモキシデクチンを経口摂取した場合に見られた犬における副作用は以下です。猫でも同様の症状を示す可能性があり、製品の添付文書でも注意書きがなされています。
モキシデクチンの副作用
- 振戦（ブルブル震える）
- 無気力・無関心
- 瞳孔の散大
- 運動失調（足元フラフラ）
- 嘔吐
- 衰弱
- 脱水
- 接触に対する過敏反応
- 軽度の流涎（よだれ）
- 便が出ない
- 頭がふらつく
アドボケート®猫用
「アドボケート®猫用」はイミダクロプリドとモキシデクチンを有効成分とする猫向けのノミ・フィラリア・線虫（猫回虫と猫鉤虫）・耳ダニ駆除製品。スポットオン（滴下式）で、効果の持続期間は1ヶ月程度です。ネコノミに対する駆除効果を有したイミダクロプリドの方は皮脂の中に含まれて全身の皮膚や被毛に広がり、体の外で駆虫を行います。一方、線虫類に対する駆除効果を有したモキシデクチンの方は皮膚から吸収された後、血液に乗って全身の組織に分布し、体の中で駆虫を行います。
【公式】アドボケート猫用
アドボケート®猫用の使い方
- いつから使える？使用条件は9週齢以降および体重1kg以上とされています。
- 使用頻度は？効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。
- 使用期間は？ノミは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
- 料金は？動物病院、猫の体の大きさ（体重）、体重に連動したピペットのサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1本の料金はSサイズなら1,200～1,500円程度、Lサイズなら1,700～2,000円程度です。なお通信販売自体は違法ではないものの、当製品は要指示薬ですので、獣医師による診察と処方箋がないと使用できません。
- 付け方は？ 猫の肩甲骨間の被毛をかき分け、使い切りのピペットを皮膚に直接滴下して使います。
- 使用量は？
製品1mL中に含まれるイミダクロプリドの量は100mg、モキシデクチンの量は10mgです。有効最低量は、体重1kg当たりイミダクロプリドが10mg、モキシデクチンが1mgとされており、猫の体重に合わせて以下のような使用基準が設けられています。なお体重が8kg以上ある場合は一番大きい0.8mLピペット（L）ともう1つ別の1サイズを体重に合わせて与えます。
✓1kg～4kg未満→0.4mL（S）
✓4kg～8kg未満→0.8mL（L） - 使用上の注意は？使用する際の注意点は「用法（9週齢以降＋1kg以上）や用量（体重1kg当たりイミダクロプリド10mg＋モキシデクチン1mg）を厳守すること」「獣医師の処方箋とともに与えること」「猫以外には使用しないこと」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。滴下前は皮膚と被毛がよく乾いていることを確認すること、滴下後は乾くまで30分程度触らないこと、およびお風呂やシャンプーは滴下から4日目以降にすることが指示されています。またフィラリアの成虫やミクロフィラリアが体内にいないことを確認した上で使用しなければなりません。
アドボケート®猫用の効果
以下でご紹介するのは有効成分としてイミダクロプリドおよびモキシデクチンを含む「アドボケート®猫用」の効果に関する調査報告書です。
ノミへの効果
アドボケート®猫用に使用されている有効成分イミダクロプリドは系列製品であるアドバンテージと同じものです。ネコノミに対する駆除・予防効果に関しては「アドバンテージプラス」をご参照ください。
フィラリアへの効果
バイエルの調査チームは合計420頭の猫を対象とし、猫回虫、鉤虫およびフィラリアに対するアドボケートの駆虫効果を検証しました。
寄生虫の感染が確認された猫たちをランダムでグループ分けし、一方にだけアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を投与するというデザインで投与グループと未治療グループの感染率を比較したところ、フィラリアに関しては100%の割合でL3から成虫への成長を阻害したといいます。また猫回虫に関してはL4幼体および未成熟虫に対する駆虫率が91.0～98.3%、鉤虫に関してはL3幼体および未成熟虫に対する駆虫率が98.8～100%だったとも（
:Arther, 2005）。
なおフィラリアの成虫に対する駆虫効果は確認されていません（:Arther, 2005）。
パヴィア大学の調査チームは、フィラリア症の流行が確認されているイタリア北部の地域に暮らしているペット猫を対象とし、アドボケートの駆虫効果を検証しました。
月に1回のペースで6ヶ月間に渡り滴下投与してもらい、最後の投与から数ヶ月後のタイミングで再検査したところ、治療開始前の段階でフィラリアへの感染が確認されなかった122頭に関しては、投与期間中および期間後においても感染は起こらなかったといいます。また抗体検査や抗原検査および心電図検査でフィラリアへの感染が確認されていた合計7頭の猫に関しては、期間後に全頭が陰性に転じていたそうです（:Venco, 2008）。
寄生虫の感染が確認された猫たちをランダムでグループ分けし、一方にだけアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を投与するというデザインで投与グループと未治療グループの感染率を比較したところ、フィラリアに関しては100%の割合でL3から成虫への成長を阻害したといいます。また猫回虫に関してはL4幼体および未成熟虫に対する駆虫率が91.0～98.3%、鉤虫に関してはL3幼体および未成熟虫に対する駆虫率が98.8～100%だったとも（
:Arther, 2005）。なおフィラリアの成虫に対する駆虫効果は確認されていません（
:Arther, 2005）。
パヴィア大学の調査チームは、フィラリア症の流行が確認されているイタリア北部の地域に暮らしているペット猫を対象とし、アドボケートの駆虫効果を検証しました。月に1回のペースで6ヶ月間に渡り滴下投与してもらい、最後の投与から数ヶ月後のタイミングで再検査したところ、治療開始前の段階でフィラリアへの感染が確認されなかった122頭に関しては、投与期間中および期間後においても感染は起こらなかったといいます。また抗体検査や抗原検査および心電図検査でフィラリアへの感染が確認されていた合計7頭の猫に関しては、期間後に全頭が陰性に転じていたそうです（
:Venco, 2008）。
回虫症への効果
ドイツにある「Klifovet」の調査チームは、ドイツ国内3ヶ所、フランス国内2ヶ所に暮らす猫を対象とし、アドボケートがもつ内部寄生虫への駆虫効果を検証しました。
線虫類の虫卵が検出された合計141頭の猫をランダムで2つのグループに分け、一方にはアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を滴下投与、他方には比較となるプラジカンテル製品を経口投与し、7～13日後のタイミングで便サンプルを採取して虫卵の有無を確認しました。その結果、猫回虫に対する駆虫効果は99.99%、鉤虫に対する効果は99.64%だったといいます。試験期間中、副作用は見られませんでした（:Hellmann, 2003）。
また生後8週齢の子猫を対象とした調査では、L4幼体に対する駆虫率が97.2%、未成熟虫に対する効果が98.3%との報告もあります（:Reinemeyer, 2003）。
なお製品のパンフレットでは猫回虫のL4幼体に対する駆虫率が96.8～100%、未成熟虫に対する効果が90.9%、成虫に対する効果が100%であると記載されています。
線虫類の虫卵が検出された合計141頭の猫をランダムで2つのグループに分け、一方にはアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を滴下投与、他方には比較となるプラジカンテル製品を経口投与し、7～13日後のタイミングで便サンプルを採取して虫卵の有無を確認しました。その結果、猫回虫に対する駆虫効果は99.99%、鉤虫に対する効果は99.64%だったといいます。試験期間中、副作用は見られませんでした（
:Hellmann, 2003）。また生後8週齢の子猫を対象とした調査では、L4幼体に対する駆虫率が97.2%、未成熟虫に対する効果が98.3%との報告もあります（
:Reinemeyer, 2003）。なお製品のパンフレットでは猫回虫のL4幼体に対する駆虫率が96.8～100%、未成熟虫に対する効果が90.9%、成虫に対する効果が100%であると記載されています。
鉤虫症への効果
ハノーバー獣医学校の調査チームは5ヶ月齢未満の子猫をランダムでグループ分けし、鉤虫と回虫に暴露した上でアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を滴下投与して1週間ほど経過した段階で未治療のグループと比較しました。その結果、鉤虫に関してはL3幼体、L4幼体、未成熟虫に対して100%の駆虫効果を見せたといいます。また回虫に関してはL4ステージの幼体に対して97%超、未成熟虫に対して91%の駆虫効果が確認されたとも（:Schimmel, 2003）。
タイにあるチュラーロンコーン大学は16頭の猫を鉤虫のL3幼体100匹に暴露した上でランダムで2つのグループに分け、一方にだけアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を滴下投与してその効果を検証しました。その結果、未治療グループにおける便中の虫卵数が平均933個で、試験期間中に自然減少することがなかったのに対し、治療グループにおいては早くも4日目の段階で便中の虫卵が検出されなくなったといいます（駆虫率100%）。この効果は試験期間中ずっと維持されました（:Piyanan, 2012）。
なお製品のパンフレットでは鉤虫のL4幼体、未成熟虫、成虫のすべてに対して100%の駆虫率であると記載されています。
:Schimmel, 2003）。
タイにあるチュラーロンコーン大学は16頭の猫を鉤虫のL3幼体100匹に暴露した上でランダムで2つのグループに分け、一方にだけアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）を滴下投与してその効果を検証しました。その結果、未治療グループにおける便中の虫卵数が平均933個で、試験期間中に自然減少することがなかったのに対し、治療グループにおいては早くも4日目の段階で便中の虫卵が検出されなくなったといいます（駆虫率100%）。この効果は試験期間中ずっと維持されました（:Piyanan, 2012）。なお製品のパンフレットでは鉤虫のL4幼体、未成熟虫、成虫のすべてに対して100%の駆虫率であると記載されています。
耳ダニへの効果
ハンガリー聖イシュトヴァーン大学の調査チームは、耳疥癬と診断された15頭の猫を対象としてアドボケートの耳ダニ（ミミヒゼンダニ）に対する効果を検証しました。10頭にはアドボケート（イミダクロプリド10%＋モキシデクチン1%）、残りの5頭は未治療として経過を観察したところ、治療グループにおいては9日目の段階で最も重症だった3頭を除いてもはやダニが確認されなくなったといいます。また16日目と30日目に行われた再検査では全頭においてダニの駆除が確認されたとも（:Farkas, 2007）。
南アフリカにあるフリーステート大学の調査チームは耳疥癬と診断された30頭の猫をランダムで3つのグループに分け、1つにはアドボケート1回、1つにはアドボケートを1ヶ月あけて2回、残りの1つには何もせずに経過を観察しました。その結果、未治療グループでは開始から50日間のすべてのチェックポイントにおいて耳ダニの寄生が確認されたといいます。それに対し1回投与グループでは50日目における駆除率が80%、2回投与グループでは100%だったそうです（:Fourie, 2003）。
なお製品のパンフレットでは単回投与から30日後における耳ダニ駆除率が98.6～99.5%、1ヶ月あけて2回投与した場合の駆除率が99.6%としています。また耳ダニへの効果は猫向けだけで、犬向けのアドボケートでは適用範囲外です。
:Farkas, 2007）。
南アフリカにあるフリーステート大学の調査チームは耳疥癬と診断された30頭の猫をランダムで3つのグループに分け、1つにはアドボケート1回、1つにはアドボケートを1ヶ月あけて2回、残りの1つには何もせずに経過を観察しました。その結果、未治療グループでは開始から50日間のすべてのチェックポイントにおいて耳ダニの寄生が確認されたといいます。それに対し1回投与グループでは50日目における駆除率が80%、2回投与グループでは100%だったそうです（:Fourie, 2003）。なお製品のパンフレットでは単回投与から30日後における耳ダニ駆除率が98.6～99.5%、1ヶ月あけて2回投与した場合の駆除率が99.6%としています。また耳ダニへの効果は猫向けだけで、犬向けのアドボケートでは適用範囲外です。
「アドボケート®猫用」は要指示薬で医師の処方箋がないと使えません。体内にフィラリア成虫がいる状態で投与すると、バラバラに分解された一部の虫体が血管につまり、最悪のケースでは塞栓症を引き起こしてしまいます。通販で買った製品を自己判断だけで絶対に使わないでください！
