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猫の口腔ガン~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の口腔ガン(こうくうがん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の口腔ガンの病態と症状

 猫の口腔ガンとは、口の中からあごにかけて発生したガンのことを言います。 猫のガンの種類~扁平上皮ガン・メラノーマ・線維肉腫  皮膚を構成しているどの細胞がガン化するかによって、適宜呼び方が変わります。具体的には、「扁平上皮細胞→扁平上皮ガン」、「メラニン細胞→メラノーマ」、「線維芽細胞→線維肉腫」などです。しかし全て、無規律な増殖、浸潤、転移を特徴とした悪性腫瘍であることに変わりはありません。
 猫の口腔内に発生するガンとして多いのは、主に以下の3つです。どのタイプでも、食べるのが遅い・口臭が悪化する・よだれが多い・口から出血しているといった初期症状から始まります。
猫の口腔ガンの主症状
猫の口腔ガン
  • 扁平上皮ガン  扁平上皮ガン(へんぺいじょうひがん)は、数週間という短期間で歯肉や舌にただれや潰瘍を引き起こします。舌に発生するものは、「舌小体」と呼ばれる舌の裏側にある部位にできやすいため、発見は容易ではありません。歯肉よりも舌にできたガンの方が転移しやすく、リンパ節や肺が侵されます。好発年齢は10歳以降です。
  • 線維肉腫  線維肉腫(せんいにくしゅ)は、主に歯茎にできるしこりのような腫瘍で、1ヶ月ほどで急速に大きくなるのが特徴です。転移は多くないものの、骨への浸潤性が強いとされています。
  • 悪性黒色腫  悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)は「メラノーマ」とも呼ばれ、口腔の粘膜や舌に発生します。口の中に急速に広がる黒い染みのような病変が特徴です。潰瘍や壊死を引き起こすこともあり、リンパ節への転移が多く見られます。好発年齢は10歳以上です。
 なお、口の中にできる良性の腫瘍としては、「エプーリス」、「ウイルス性乳頭腫」、「エナメル芽細胞腫」などがありますが、犬と比較すると猫ではまれです。

猫の口腔ガンの原因

 猫の口腔ガンの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の口腔ガンの主な原因
  • 口腔内の衛生(?)  人間の口腔ガンは、タバコ、アルコール、口腔内の不衛生、虫歯や入れ歯、反復的な噛み傷などが危険因子とされています。猫に関してはタバコとアルコールはないでしょうが、口の中のケアを余りにも怠ると細胞がガン化する可能性を高めてしまうかもしれません。
  • 不明 猫の口腔がんを引き起こす要因は、多くの場合不明です。

猫の口腔ガンの治療

 猫の口腔ガンの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の口腔ガンの主な治療法
  • 手術療法  ガンが小さく、猫に体力がある場合は、外科手術によってがん細胞を除去してしまいます。
     扁平上皮ガンの場合、口先に出来た腫瘍を完全に切除することができれば予後は良好とされます。線維肉腫の場合、骨への浸潤性が強いため、腫瘍ができた側の顎を丸ごと切除することもあります。悪性黒色腫(メラノーマ)の場合、腫瘍が小さいうちに切除できれば予後は良しとされますが、処置が遅れて他の臓器に転移してからでは、長い余命を期待できません。仮に顎ごと切除しても、1年生きていられるかどうかです。
  • 化学療法・薬物療法  ガンが進行しており、猫に体力がない場合は手術療法が見送られ、抗がん剤治療などが施されます。
  • 放射線療法 特に扁平上皮ガンでは、放射線療法への感受性が高いとされています。