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猫の骨肉腫~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の骨肉腫(こつにくしゅ)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の骨肉腫の病態と症状

 猫の骨肉腫とは、骨に含まれる組織がガン化した状態のことです。ガンの元となる組織としては、骨の中空部分である「骨髄」や骨の外側を形成する「皮質骨」、および骨を外側から包み込んでいる「骨膜」などが挙げられます。 猫における骨肉腫の好発部位  猫の骨にできる腫瘍の割合は比較的少なく、腫瘍中の5%程度と推計されています。ただしひとたび骨に腫瘍が発生すると、それが悪性である確率は約70%とかなり高めです。犬ではほとんどが四肢の骨に発症しますが、猫ではそうした傾向はなく、肋骨や背骨といった体軸にも満遍なく発症します。好発年齢は8.7歳~10歳で、好発部位は膝付近です。
 猫の骨肉腫の症状としては以下のようなものが挙げられます。怪我による運動拒否は時間とともに解決しますが、骨肉腫による運動拒否は時間の経過とともに増悪します。
猫の骨肉腫の主症状
  • 足の硬い腫れ
  • 足を引きずるように歩く
  • 歩くのを嫌がる
  • 日に日に運動量が減る
  • 顔面の変形
  • 背骨の変形

猫の骨肉腫の原因

 猫の骨肉腫の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の骨肉腫の主な原因
  • 不明 猫の骨肉腫は、多くの場合原因不明です。犬のように体が大きければ大きいほど発症しやすいという傾向もありません。
  • 骨折(?) 犬においては、骨肉腫のうち約5%は骨折が原因ではないかと疑われています。具体的には、骨折部位に用いられた金属プレートの腐食と、そこから溶け出した金属イオンが怪しいとされています。金属プレートが内固定でも外固定でも発症し、骨折から肉腫発生までの期間は6.3年です。しかしこの因果関係ははっきりと証明されたわけではなく、また猫において同じことが言えるのかどうかもわかりません。
  • 抜爪術・爪抜き(?) 指の第一関節を切り落としてしまう抜爪術(爪抜き)が指先の骨肉腫を引き起こす危険性が示されています。2019年には、手術を受けてから10年という長い時間をかけ、切り落とされた骨が癌化したラグドールの症例が報告されました。因果関係ははっきりとしていないものの、指先に残った骨のかけらが刺激となり、周辺組織が悪性化したものと推測されています。詳しい症例報告は以下。抜爪術(爪抜き)を原因とする猫の骨肉腫の症例

猫の骨肉腫の治療

 猫の骨肉腫の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の骨肉腫の主な治療法
  • 手術療法  ガンが小さく、猫に体力がある場合は、外科手術によってがん細胞を除去してしまいます。具体的には、前肢を肩関節から切断する「肩甲帯離断術」や、後肢を股関節から切断する「股関節離断術」などです。猫の骨肉腫は転移率が2割未満と低いため、一般的に予後は良く、切断後1~4年生きることも珍しくありません。ただし、骨肉腫が体軸に発生した場合の予後は悪く、余命は6ヶ月に満たない程度です。
  • 化学療法・薬物療法  ガンが進行しており、猫に体力がない場合は手術療法が見送られ、抗がん剤治療などが施されます。また手術療法後の補助療法としても行われます。
  • マッサージ 飼い主が日頃から、病気の早期発見を兼ねてマッサージしてあげていると、いち早く骨の病変を見つけることができます。猫のマッサージなどを参考にしながら、全身の骨格に妙な盛り上がりがないかどうかを注意深くモニターするようにします。なお見つかった盛り上がりがもしガンだった場合、むやみに触っているとリンパ管を通して細胞が広がってしまう危険性があります。「怪しい」と思ったらすぐにかかりつけの獣医さんに相談した方がよいでしょう。猫のマッサージ
「抜爪術」に関しては世界的に動物虐待とみなす流れになっています。十分な説明もせず勧めてくる獣医師にはご注意ください。デメリットに関しては「抜爪術の真実」で詳しく解説してあります。