尿酸尿石症
下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めていますが、少数ながら尿酸塩(アンモニア・ナトリウム・シスチン・キサンチンなど)が結石を形成することもあります。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。
発症メカニズム
1998年2月から2007年7月の期間、カナダ獣医尿石センターが扱った尿石症10,083件のデータを精査した所、エジプシャンマウにおける尿酸尿石症のリスクが標準の118倍と異常な値を見せたといいます。この結果に関し調査チームは、犬のダルメシアン同様、エジプシャンマウでは遺伝子に変異があり、肝臓で尿酸をアラントインに変える能力や腎臓における尿酸の再吸収能力が低下しているのではないかと推測しています。ただし北米におけるエジプシャンマウは、非常に少数の繁殖猫を元にして数を増やしてきたという経緯があるため、繁殖ラインを異にする他の国でも同様の発症リスクがあるかどうかはわからないとしています(→出典)。またカリフォルニア大学デイヴィス校のチームは、門脈シャントやプリン体代謝異常が病因になっているのではないかと推測していますが、いまだにはっきりとした原因はわかっていません(→出典)。
発症リスク
1981年1月から2008年12月の期間中、ミネソタ尿石センターに蓄積されたデータの中から尿酸塩結石を発症した猫5,072頭と発症していない比較対照群437,228頭とを選び出し、結石の発症リスクを高めている要因を検証しました(→出典)。その結果、純血種、不妊手術(12倍)、4~7歳の年齢層(51倍)という因子が浮かび上がってきたといいます。さらに品種ごとにリスクを計算した所、エジプシャンマウで44倍(65/132)のリスクが確認されたとも。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
ピルビン酸キナーゼ欠損症(Pyruvate kinase deficiency, PKDef)とは、赤血球上にあるピルビン酸キナーゼと呼ばれる酵素が欠損することにより十分なエネルギーを産生することができなくなり、赤血球の寿命が縮んで貧血に陥ってしまう病気。診断は血液検査を通した貧血の確認や、遺伝子検査を通した疾患遺伝子の確認などで下します。貧血を根本的に改善するには骨髄移植が必要ですが、現実的ではありません。
疾患遺伝子の保有率
2012年、カリフォルニア大学デイヴィス校の「Genetics Laboratory」に送られてきたDNAサンプル12,630個と、イギリスの「Langford Veterinary Services」に送られてきたDNAサンプル1,549個を対象とし、ピルビン酸キナーゼ欠損症の関連遺伝子保有率を調査しました(→出典)。その結果、エジプシャンマウにおいて13%という高い保有率が確認されたといいます。調査チームは、作出過程で用いられたアビシニアンの血統の中に疾患遺伝子が混じりこんでいたものと推測し、エジプシャンマウの繁殖に際してはピルビン酸キナーゼ欠損症の遺伝子検査を行うべきであると推奨しています。