心肺蘇生術とは?
心肺蘇生術とは、呼吸や心臓が完全に止まってしまったか、もしくはそれに近い状態にある患者に対し、意識の確認・気道確保・人工呼吸・心臓マッサージなどの救急救命処置を施すことです。猫がおぼれた、交通事故にあった、熱中症にかかった、原因は分からないが突然昏倒した、など事故や病気で突然猫の心肺が停止してしまった場合、以下で説明する心肺蘇生術をマスターしておけば、延命できる可能性が高まります。
便宜上犬が登場しますが、まずは実演動画をご覧ください。その後で細かい手順を解説します。
便宜上犬が登場しますが、まずは実演動画をご覧ください。その後で細かい手順を解説します。
猫の心肺蘇生術・実演動画
心肺機能の確認
猫が倒れてぐったりしているのを発見したら、まず心肺機能、すなわち呼吸と心拍の有無を確認します。電子機器による感電の可能性がないことを確かめた後、右左どちらか一方を上にして寝かせ、背中側に位置取りしましょう。なお落雷が原因と考えられる場合、猫は帯電していませんのですぐに接触しても構いません。
またこのとき、周囲の人に頼んで車を手配してもらいます。もし協力者が見つからない場合は自分で呼ぶことになりますが、最寄の動物病院の位置は日ごろから携帯端末などに保存しておくと便利です。
またこのとき、周囲の人に頼んで車を手配してもらいます。もし協力者が見つからない場合は自分で呼ぶことになりますが、最寄の動物病院の位置は日ごろから携帯端末などに保存しておくと便利です。
呼吸の確認と気道の確保
まずは猫が息をしているかどうかを確認します。主な呼吸の確認方法は以下の3つです。
呼吸の確認方法
- 胸に手を当てて上下動しているか
- 口元に耳を近づけて呼吸音が聞こえるか
- 口元に手を当てて呼気を感じることができるか
心拍の確認
呼吸と同時に心拍の有無を確認します。心臓の鼓動を確認するための拍動点はいくつかありますが、猫の大きさや体型により触知が難しいこともあります。自分が飼っているペットの拍動点を事前に触知できるようトレーニングしておきましょう。なお、以下では犬のサンプルを用いて解説しますが、猫にも応用できる知識です。
心拍の確認方法
- 心臓前足を持ち、ひじを胸に向かって引き寄せ、接触した部分がおおまかな心臓の位置です。ここに指先をあて、心拍を確認します。ただし太った猫などでは触知するのが難しいため、念のため他の心拍確認点も把握する必要があります。
- 前足の動脈前足の親指付近を指先で触ると、前肢動脈の拍動を感じることができます。施術者から遠いのが難点です。
- 後足の動脈後足の親指付近を指先で触ると、前肢動脈の拍動を感じることができます。施術者から遠いのが難点です。
- 太ももの動脈3本の指を太ももの内側に滑らせていくと太ももの大腿動脈の拍動を感じることができます。施術者の手が届きやすいという利点はありますが、短時間ですぐに触知するためには事前の練習が不可欠です。
救急心臓マッサージ
気道の確保を行ったら心臓マッサージに移ります。念の為、2024年にアップデートされた犬猫の心肺蘇生ガイドラインのリンクを載せておきます(英語)。
2024 RECOVER Guidelines: Updated treatment recommendations for CPR in dogs and cats
心臓マッサージのポイント
心臓マッサージを行う際は猫の体の大きさや体型にかかわらず以下のようなポイントに気をつけます。
- 猫が側臥位(横向き)の場合、圧迫の深さは胸幅の1/3~1/2
- 圧迫のペースは100~120回/分(1秒間に2回程度)
- 圧迫後は胸壁が完全に復位するまで待つ
- 圧迫フェーズと非圧迫フェーズが時間的に均等になるようにする
3種類の心マ方法
猫の体型や施術者の手の大きさに合わせ、以下に示す3種類の方法のうち最もやりやすい1つを選択します。事前に十分予行演習しておきましょう。
側臥位にし、2本の親指が心臓直上にくるよう当てる
片方の手で背中を保持しながら他方の手で胸骨を包み込むように支え、指の腹で胸部圧迫を行う
一方の手で背中を支えながら、もう一方の手の掌底で心臓部の1/3~1/2を圧迫する
救急人工呼吸
人獣共通感染症や薬物暴露のおそれがない場合、心臓マッサージと並行して人工呼吸を行います。胸部圧迫と人工呼吸の比率は30:2、言い換えると心マ15秒ごとに人工呼吸を2回挟むイメージです。
猫の背中側に位置を取って右手(もしくは両手)で猫の下あごをつかみ、口と肺を結ぶ気道を一時的に遮断します。このとき、鼻の上に伸びた鼻筋部分(マズル)を強く押してしまうと、鼻からの空気がうまく肺へ届きませんので要注意です。この状態で猫の鼻先を口にくわえ、マウスツーノーズの人工呼吸を2回行います。ちょうど風船を膨らませるイメージで、猫の肺がしっかり膨らむことを確認しましょう。
事前の練習で慣れているような場合は、右手で口を塞ぎ、左手を胸にあてた状態で行います。この体勢のメリットは、呼気が確実に肺に届いているかどうかを胸に当てた左手で確認できるという点です。
猫の背中側に位置を取って右手(もしくは両手)で猫の下あごをつかみ、口と肺を結ぶ気道を一時的に遮断します。このとき、鼻の上に伸びた鼻筋部分(マズル)を強く押してしまうと、鼻からの空気がうまく肺へ届きませんので要注意です。この状態で猫の鼻先を口にくわえ、マウスツーノーズの人工呼吸を2回行います。ちょうど風船を膨らませるイメージで、猫の肺がしっかり膨らむことを確認しましょう。
事前の練習で慣れているような場合は、右手で口を塞ぎ、左手を胸にあてた状態で行います。この体勢のメリットは、呼気が確実に肺に届いているかどうかを胸に当てた左手で確認できるという点です。
蘇生術を繰り返す
最初の心臓マッサージを施したにもかかわらず猫が蘇生しなかった場合、心臓マッサージ(30回)・人工呼吸(2回)をワンセットとし、5~20分程度続け、3セットごとに蘇生確認(呼吸と脈拍)をしましょう。
うまい具合に猫が蘇生したら急いで動物病院を受診します。一般的に脳への酸素供給が5分断たれると、蘇生しても脳に重大な後遺症が残ってしまいますので、ぐったりした猫を発見してからの飼い主の迅速な行動がキーポイントとなります。
全体の流れをつかむため、もう一度動画で復習しましょう。当ページ内の解説文とやや異なる部分もありますので、あくまでもイメージトレーニングとしてご利用ください。また関連動画(英語)も参考になりますので、あわせてご参照ください(YouTubeより)。Safe Dog Safety Tip: CPR Pet CPR
全体の流れをつかむため、もう一度動画で復習しましょう。当ページ内の解説文とやや異なる部分もありますので、あくまでもイメージトレーニングとしてご利用ください。また関連動画(英語)も参考になりますので、あわせてご参照ください(YouTubeより)。Safe Dog Safety Tip: CPR Pet CPR
猫の心肺蘇生術