猫が捻挫したときの原因と症状
捻挫(ねんざ, sprain)とは、関節を無理に曲げたことで、関節をつないでいる靭帯(じんたい, ligament)が許容範囲以上に引き伸ばされてしまった状態のことです。引き伸ばされた靭帯は顕微鏡的~肉眼的なレベルで損傷を受け、その部位に炎症細胞(えんしょうさいぼう)が引き寄せられます。炎症細胞は体にとっていらなくなった損傷部位を掃除するため、様々な化学物質を放出しますが、この物質が周囲にある神経に作用して、いわゆる炎症を引き起こします。炎症は痛み、腫脹(はれ)、発赤、発熱を4大特徴とする生体反応の一種であり、捻挫した部分には必ずといってよいほど炎症が発生します。
捻挫の重症度は、靭帯がどの程度破壊されたかによって以下の3段階に分けるのが一般的です。「I度」は軽度捻挫のことで、靭帯の繊維が細かく引き裂かれた状態を指します。「II度」は部分断裂のことで、靭帯の一部がちぎれた状態を指します。「III度」は完全断裂のことで、靭帯が真っ二つに切れた状態を指します。II度からIII度の捻挫においては関節が極端に曲げられるため、脱臼や骨折を伴うこともしばしばです。
猫が捻挫したときの原因と症状
猫が捻挫をする原因としては、高い場所からの落下、足場が悪いところでの全力疾走、おもちゃキャッチの失敗、障害物へのつまづき、急な方向転換、ドアにはさまれた、人に踏まれた、交通事故など様々です。外を自由に出歩いている猫での発症率が高くなります。以下は猫の骨格における関節の位置、および猫が捻挫したときに示す主な症状です。
猫の捻挫したときの主症状
- 患部が赤くなる(通常は被毛で見えない)
- 患部が腫れる
- 患部が熱くなる
- 患部が痛む(触られるのを嫌がる)
- 足を引きずっている
- 動き方が不自然(左右非対称)
猫が捻挫したときの応急処置・治療法
猫が捻挫したときの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫が捻挫したときの主な治療法
- RICE 捻挫した部位に発生した炎症を抑える処置を施しますが、一般的に炎症に対する応急処置はRICEという言葉で要約されます。RはRestで安静(患部を動かさない)、IはIcingで冷却(氷水などで血液の急激な流入を緩和する)、CはCompressionで圧迫(患部を圧迫して血液量を減らす)、EはElevationで挙上(心臓より高いところに持ち上げて血液量を減らす)です。
- 獣医さんへ 通常、無理な運動をしなければ3日程度で回復の兆しを見せるはずですが、なかなか痛みが引かなかったり足を引きずっているようなら、獣医さんの元へ連れて行きましょう。捻挫よりひどい脱臼や骨折の可能性もありますので、適宜レントゲン等を撮ってもらいます。
猫の捻挫予防
- 遊びの途中の急な方向転換を避ける
- 高い場所から無理に飛び降りないようステップを設ける
- 落下事故を防ぐためベランダに出さない
- 交通事故を防ぐため外に出さない
- 踏んでしまわないよう室内では足元に気をつける