作品の基本情報
作品解説
「猫に蝶」(ねこにちょう)は、猫と蝶という好ましい組み合わせ(吉祥=きっしょう)をモチーフにした吉祥画の一つです。作者は鈴木春信(すずきはるのぶ)。現代的な名前ですが、活躍したのは1700年代です。
画題となっている猫と蝶ですが、猫を表す中国語「mao」と蝶を表す「die」という言葉の音だけとると、それぞれ「70歳」、「80歳」を表す言葉に似ていることから、中国において両者の組み合わせは「長寿」の印ととらえられます。同時期には当作品と同じように、中国語の語呂合わせをモチーフとした「南蘋派」(なんびんは)と呼ばれる一派も流行していたようです。
画題となっている猫と蝶ですが、猫を表す中国語「mao」と蝶を表す「die」という言葉の音だけとると、それぞれ「70歳」、「80歳」を表す言葉に似ていることから、中国において両者の組み合わせは「長寿」の印ととらえられます。同時期には当作品と同じように、中国語の語呂合わせをモチーフとした「南蘋派」(なんびんは)と呼ばれる一派も流行していたようです。
南蘋派(なんびんは)
南蘋派(なんぴんは)とは、中国清代の画家で、長崎に2年間弱滞在し写生的な花鳥画の技法を伝えた沈南蘋(しんなんびん)から直接技法を受けた熊代熊斐(くましろゆうひ, 1712年~1772年)とその門人などの画派。写実的な彩色花鳥画に特徴があり、一時かなり流行したが、やがて円山応挙の創始した新しい花鳥画が盛んになるにつれて衰退していった。描かれている花はシュウカイドウ(秋海棠)と呼ばれ、江戸時代初期に園芸用に持ち込まれた帰化植物です。原産は中国大陸(山東省以南)、マレー半島。また当作品と極めて似た構図を持つ作品として、礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい,1735~1790)の「竹林の猫に雀」(1772年頃)があります。
礒田湖龍斎「竹林の猫に雀」
湖龍斎は春信の直接の門弟ではなかったものの彼に心酔していたため、同時期、春信によって描かれた「猫に蝶」にインスパイアされる形で自作の構図を練ったものと考えられます。ちなみに花と蝶の代わりに描かれている雀と竹は、取り合わせのよいものの代表として古くから日本画の画題になっています。