イヌリン(チコリー)の成分
イヌリン(Inulin)はフルクトースの重合体から構成される多糖類の一種。体内では消化されず、腸内細菌が発酵利用できることから食物繊維に分類されています。化学構造式は以下です。
ごぼうやキクイモを始めとするキク科植物に多く含まれており、特にヨーロッパ原産のチコリー(Chicory, キクニガナ)の根が有名です。乾燥重量中68%という高い割合で含まれていると推計されています。
イヌリン(チコリー)は安全?危険?
イヌリン(チコリー)を猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはイヌリン(チコリー)に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。
人間に対する作用・影響
人間においては、イヌリンの摂取で血中総コレステロール値やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)値の低下、糞便回数の増加、便の性状や硬さの改善、通過時間の短縮といった効果がもたらされる可能性が示されています。
またEFSA(欧州食品安全機関)の専門家委員会は2015年、独立した6つの調査に参加した合計86人の被験者の全てにおいて、「天然チコリーイヌリン」(native chicory inulin)を摂取したことによる糞便回数の増加が認められたことから、「チコリー由来のイヌリンは正常な排便習慣を維持する」という表記をすることは妥当であるとの結論に至っています。ただし少なくとも1日12gの摂取が必要だとも(:EFSA)。
しかしたくさん摂取すればよいというわけでもないようです。イヌリンの大量摂取により腸内ガスの滞留、腹部膨満感、胃けいれんのほか、アレルギーを起こす危険性も示されています。ちなみにチコリーの根抽出物に関し、マウス腹腔内投与におけるLD50(半数致死量)は体重1kg当たり8.9g程度と推計されています。
またEFSA(欧州食品安全機関)の専門家委員会は2015年、独立した6つの調査に参加した合計86人の被験者の全てにおいて、「天然チコリーイヌリン」(native chicory inulin)を摂取したことによる糞便回数の増加が認められたことから、「チコリー由来のイヌリンは正常な排便習慣を維持する」という表記をすることは妥当であるとの結論に至っています。ただし少なくとも1日12gの摂取が必要だとも(:EFSA)。
しかしたくさん摂取すればよいというわけでもないようです。イヌリンの大量摂取により腸内ガスの滞留、腹部膨満感、胃けいれんのほか、アレルギーを起こす危険性も示されています。ちなみにチコリーの根抽出物に関し、マウス腹腔内投与におけるLD50(半数致死量)は体重1kg当たり8.9g程度と推計されています。
猫に対する作用・影響
猫を対象としたイヌリンやチコリーの給餌試験は数えるほどしかありません。文献としては、腎臓の糸球体濾過量を計測するときの指標物質として多く登場します。イヌリンが確実にもたらすと思われる効果は腸内細菌叢の発酵を促すというものです。
M.Hesta, 2001
フラクトオリゴ糖(FOS)を全く含んでいない普通のフードと、FOSを3%、6%、9%の割合で含んだフードを給餌して糞便の変化を調べた所、FOSを6%以上含んでいたグループでは含んでいなかったグループに比べ、糞便のクオリティが明白に変化した。一方、3%だけ含んだフードでは同様の変化が見られなかったが、pHが低下する傾向が見られた。
次にFOSを3%含んだフードとイヌリン(水溶性の食物繊維の一種)3%、イヌリン6%を含んだフードを給餌し、消化性のパラメーターを比較した。その結果、タンパク質の消化性に関しては無添加フードのグループと比較して低下した。これは糞中に含まれるバクテリアに窒素を取られたために起こった現象だと考えられる。
FOS3%とイヌリン3%フードの間で有意な差は見られなかったが、FOSを給餌されたほうが糞中の短鎖脂肪酸トータル量が多かったため、腸内細菌の発酵を受けやすいものと推測される(:M.Hesta, 2001)。
次にFOSを3%含んだフードとイヌリン(水溶性の食物繊維の一種)3%、イヌリン6%を含んだフードを給餌し、消化性のパラメーターを比較した。その結果、タンパク質の消化性に関しては無添加フードのグループと比較して低下した。これは糞中に含まれるバクテリアに窒素を取られたために起こった現象だと考えられる。
FOS3%とイヌリン3%フードの間で有意な差は見られなかったが、FOSを給餌されたほうが糞中の短鎖脂肪酸トータル量が多かったため、腸内細菌の発酵を受けやすいものと推測される(:M.Hesta, 2001)。
A.Verbrugghe, 2009
普通体型の猫8頭と肥満体型の猫8頭を対象とし、乾燥重量中(タンパク質46%+脂質15%+炭水化物27%)に2.5%のフラクトオリゴ糖(FOS)とイヌリン(水溶性の食物繊維の一種)を添加したフードを給餌して糖耐性テストなどを行った。
その結果、肥満猫ではグルコースAUCが増加し、インシュリンピークが遅延した。一方、空腹時血糖値、糖反応、糖AUC、空腹時血清インシュリン濃度などには影響を及ぼさなかった。
FOSとイヌリン添加フードではプロピオニルカルニチン濃度の上昇が確認されたことから、大腸内における発酵作用とプロピオン酸吸収量の増加が起こったものと考えられる。またメチルマロニルカルニチンとAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の低下が確認されたことから、アミノ酸を原料とした糖新生が減少したものと推測される(:A.Verbrugghe, 2009)。
その結果、肥満猫ではグルコースAUCが増加し、インシュリンピークが遅延した。一方、空腹時血糖値、糖反応、糖AUC、空腹時血清インシュリン濃度などには影響を及ぼさなかった。
FOSとイヌリン添加フードではプロピオニルカルニチン濃度の上昇が確認されたことから、大腸内における発酵作用とプロピオン酸吸収量の増加が起こったものと考えられる。またメチルマロニルカルニチンとAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の低下が確認されたことから、アミノ酸を原料とした糖新生が減少したものと推測される(:A.Verbrugghe, 2009)。
A.Verbrugghe, 2010
8頭の猫を対象とし、セルロース4%を含んだフードとフラクトオリゴ糖とイヌリンを合計して4%含んだ高発酵食を4週間のインターバルをおいて交互に給餌した。その結果、プロピオン酸の生成と吸収が活発になり、プロピオニルカルニチンの濃度とAUCが増加した。またアミノ酸の異化作用が低下したため、メチルマロニルカルニチンの濃度とAUCに変化は見られなかった。フラクトオリゴ糖とイヌリンは、食後におけるプロピオン酸の生成を促し、アミノ酸誘発性の糖新生を減少させる(:Verbrugghe, 2010)。
イヌリンを猫に給餌しても、人間や犬で確認されているような「便通を良くする」という明確な効果はないようです。糸球体濾過量を計測する際、血液中に注入されることがありますので、毒性はほぼないと考えられます。