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コンドロイチン~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「コンドロイチン」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

コンドロイチンの成分

 コンドロイチン(chondroitin)は糖鎖に硫酸が結合した構造を持つムコ多糖類(グリコサミノグリカン)の一種です。コンドロイチン硫酸と言った場合は糖鎖に硫酸が結合した構造を指します。軟骨においては軟骨細胞の外にコラーゲンとともに存在しており、衝撃を和らげるクッションとして機能しています。 キャットフードの成分として用いられる「コンドロイチン」  日本では「コンドロイチン硫酸ナトリウム」が厚生労働省によって指定添加物の保水剤として認可されており、マヨネーズやドレッシング(20g/kgまで)、魚肉ソーセージ(3.0g/kgまで)に使用されています。
 EFSA(欧州食品安全機関)やJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では摂取量の上限値が設定されていませんが、妊婦、授乳中の女性、子供、青少年、抗血液凝固剤を服用している者に対するデータが不足しているため、積極的な摂取は避けたほうがよいとの見解もあります。なお国際がん研究機関(IARC)で発がん性は確認されていません。

コンドロイチンは安全?危険?

 コンドロイチンを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはコンドロイチンに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

人間に対する作用・効果

 人間を対象として行われた1980年代から2001年までの調査報告では、股関節や膝の変形性関節症を抱えた患者において痛みの軽減が見られたという報告が散見されます。しかしこうした調査の多くは「鎮痛薬」「非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)」「アスコルビン酸」「マンガン」といった全く別の成分が併用されており、コンドロイチンに効果があったのか、それともその他の成分に効果があったのか、それとも複数の成分による相乗効果なのかが判然としません。
 例えば1996年1月~2007年10月の期間に行われた調査報告のうち、「二重盲検無作為化比較試験」という信頼性の高いデザインが採用された4報をメタ分析した所、コンドロイチン硫酸の投与が膝の骨関節炎患者における関節腔の減少を抑制したとされています 出典資料:Hochberg, 2008
 その一方、2010年6月までの期間に行われた調査報告のうち、200名以上を対象とした大規模な無作為化比較試験10報をメタ分析した所、グルコサミン単独投与、コンドロイチン硫酸単独投与、および両者の併用は膝や腰の変形性関節症患者の痛み、関節腔の狭小化に影響は与えなかったとされています 出典資料:Wandel, 2010
 上記したように、コンドロイチン(硫酸)の人間に対する効果は相反する2つの報告があるためよくわかっていません。傾向としては、2005年以降に行われた調査では「効果なし」という結論に傾いているようです。2005年以前に行われた調査では、そもそも実験デザインに不備があったり、「コンドロイチンの有効性を証明してほしい」という企業からの商業的なバイアスがかかっていた可能性が考えられます。

猫に対する作用・効果

 コンドロイチンに関してはこれまで、関節炎もしくは変形性関節症を抱えた犬を対象とした膨大な数の調査が行われてきました。現状をまとめて一行で表すと効果があるともないとも断言できないといったところです。調査ごとにデザインの相違があるため、複数の報告間の単純な比較ができません。このことが結論の一般化を阻んでいます 出典資料:Bhathal A, 2017 。より詳しい内容は姉妹サイト「子犬のへや」内にある「コンドロイチンとグルコサミンが犬猫の関節に良いというのは本当?」というページにまとめてありますのでご参照ください。
 一方、猫を対象としたコンドロイチンの投与試験は数えるほどしかありません。以下は一例です。

変形性関節症

 ノースカロライナ州立大学の調査チームは痛みを感じ動きに支障がある変形性関節症の猫を対象とした給餌試験を行いました出典資料:Lascelles, 2010
 40頭の猫たちをランダムで2つのグループに分け、一方には調整フード(モエギイガイ抽出物+DHA+EPA+グルコサミン+コンドロイチン硫酸)、もう一方には比較用フードを9週間給餌した後、飼い主への聞き取り調査、獣医師による整形外科的な検査、及び速度計による活動性の分析を行いました。
 その結果、比較用フードを摂取していたグループでは活動性が有意に低下したのに対し、調整フードグループでは逆に増加したと言います。
 こうしたデータから調査チームはEPAやDHAを主体としたサプリメントを猫に給餌することで、活動性の改善につながるかもしれないとしています。ちなみに調整フード1,000kcal中に含まれていたグルコサミンとコンドロイチン硫酸の総量は250mgですが、比率まではわかりません。また両成分以外の成分も数多く含まれているため、純粋にグリコサミノグリカンが何らかの効果をもたらしたとは断定できません。
猫におけるグルコサミンの安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。