タウリンとは?
タウリン(taurine)とは体のほとんどすべての組織に存在している含硫アミノ酸の代謝中間体。食品としては特にイカやタコといった魚介類に多く含まれているほか、体内ではもっぱら肝臓においてシステインから合成されます。
タウリンは必須アミノ酸のようにタンパク質の素材として重要というわけではなく、タウリンそのものが機能を発揮するという意味で重要です。心筋、筋肉、脾臓、脳、肺、骨髄などに多く含まれており、胆汁酸の抱合、酸化防止、浸透圧の調整、細胞膜の安定化、カルシウムの調整などに関わって、各器官が正常に機能するようにサポートしています。
タウリンは安全?危険?
タウリンを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?
タウリンは日本の食品衛生法では「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に区分されていますので、原則として薬理作用を示して人間向けの健康食品などに添加することはできません。ただし原材料に使用していることをラベルに記載して購入を煽らないとか、主成分ではなく添加物として使用していることを明記してある場合に限り、食品添加物として使用できるというダブルスタンダードになっています。実際、タウリンは厚生労働省によって既存添加物の調味料として認可されており、数値的な使用基準も特に設けられていません。定義は「魚介類又は哺乳動物の臓器又は肉から得られた、タウリンを主成分とするもの」です。 動物用医薬品として用いられるタウリンは、牛、馬、豚、鶏等に対する栄養補給や中毒時の注射剤として使用されています。数十年に渡る使用歴から安全性に関する問題は認められておらず、また余ったタウリンは尿中に速やかに排泄されることから、過剰症や中毒などの副作用は引き起こさないものみなされています。
EFSA(欧州食品安全機関)ではペットフードを含めた動物向けの飼料中0.2%(100g中0.2g程度=2000ppm)までは安全だろうとの見解を示しています。また人においては1日6g、体重1kg当たり1日100mgくらいまでは安全としています。
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では香料として用いる限り使用基準が設けられておらず、また国際がん研究機関(IARC)によって発がん性も確認されていません。
タウリンは日本の食品衛生法では「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に区分されていますので、原則として薬理作用を示して人間向けの健康食品などに添加することはできません。ただし原材料に使用していることをラベルに記載して購入を煽らないとか、主成分ではなく添加物として使用していることを明記してある場合に限り、食品添加物として使用できるというダブルスタンダードになっています。実際、タウリンは厚生労働省によって既存添加物の調味料として認可されており、数値的な使用基準も特に設けられていません。定義は「魚介類又は哺乳動物の臓器又は肉から得られた、タウリンを主成分とするもの」です。 動物用医薬品として用いられるタウリンは、牛、馬、豚、鶏等に対する栄養補給や中毒時の注射剤として使用されています。数十年に渡る使用歴から安全性に関する問題は認められておらず、また余ったタウリンは尿中に速やかに排泄されることから、過剰症や中毒などの副作用は引き起こさないものみなされています。
EFSA(欧州食品安全機関)ではペットフードを含めた動物向けの飼料中0.2%(100g中0.2g程度=2000ppm)までは安全だろうとの見解を示しています。また人においては1日6g、体重1kg当たり1日100mgくらいまでは安全としています。
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では香料として用いる限り使用基準が設けられておらず、また国際がん研究機関(IARC)によって発がん性も確認されていません。
タウリンの安全性情報・概要
- 厚生労働省=微量なら既存添加物
- IARC=発がん性なし
- EFSA=人の上限100mg/体重1kg/日
- JECFA=香料として使用基準なし
- ペットフード=猫の必須栄養素
タウリン欠乏症の症状
進行性網膜萎縮症
進行性網膜萎縮は網膜内におけるタウリンが不足し、網膜中心窩が病変してしまう病気のことです(:Barnett, 1980)。タウリン欠乏症による症状のうち、一番早い1975年という段階で発見されました。光受容細胞のうち、カラービジョンに必要な錐状体も白黒ビジョンに必要な杆状体も変性を受けます。また網膜の裏にあり、光を増幅するタペタムと呼ばれる薄い層にも変化が現れ、光に鈍感になります。
タウリン不足が4ヶ月続くと発症し始め、6~7ヶ月で病変が最終段階に進行します。残念ながらこの病変はタウリンの補給でも回復せず、失明してしまうとのこと(:Hayes, 1982)。
タウリン不足が4ヶ月続くと発症し始め、6~7ヶ月で病変が最終段階に進行します。残念ながらこの病変はタウリンの補給でも回復せず、失明してしまうとのこと(:Hayes, 1982)。
拡張型心筋症
タウリン欠乏症の中で最も有名なのが拡張型心筋症という病気です。1986年12月から87年4月の期間、カリフォルニア大学附属病院で21頭の猫たちが原因がわからないまま拡張型心筋症と診断されました。飼い主への聞き取り調査から浮かび上がってきたのが食事中の「タウリン不足」。タウリンをサプリメントという形で経口投与したところ猫たちの血漿濃度が上昇し、左心室の機能が回復したといいます(:Pion, 1987)。また1980年から86年に原因不明の拡張型心筋症との診断を受けた別の33頭の医療記録を回顧的に調査ところやはり同様のタウリン欠乏が確認されました(:Pion, 1992)。
これらの症例をきっかけとして猫におけるタウリンの重要性が広く認識され、キャットフードには必要栄養素としてタウリンが添加されるようになりました。タウリンを含まないフードを6~15ヶ月間給餌されていた23頭の猫では、25%以上の左室内径短縮率減少が74%の割合で発症し、平均37%の減少幅だったといいます。また25%以上の左室収縮終期径増加が91%の割合で発症し、平均70%の増加だったとも。症状は早くも4ヶ月目から現れ始めたそうです(:Novotny, 1994)。ちなみに栄養性の拡張型心筋症はタウリンの添加で完全とはいはないものの回復する可能性が報告されています(:Novotny, 1991)。
これらの症例をきっかけとして猫におけるタウリンの重要性が広く認識され、キャットフードには必要栄養素としてタウリンが添加されるようになりました。タウリンを含まないフードを6~15ヶ月間給餌されていた23頭の猫では、25%以上の左室内径短縮率減少が74%の割合で発症し、平均37%の減少幅だったといいます。また25%以上の左室収縮終期径増加が91%の割合で発症し、平均70%の増加だったとも。症状は早くも4ヶ月目から現れ始めたそうです(:Novotny, 1994)。ちなみに栄養性の拡張型心筋症はタウリンの添加で完全とはいはないものの回復する可能性が報告されています(:Novotny, 1991)。
生殖異常
妊娠中のメス猫がタウリン不足に陥ると、母体内の胎子が正常に発育せず、流産や死産が増えます。タウリンを含まないフードを給餌された18頭のメス猫のうち、12頭は流産で、産まれてきた子猫18頭中10頭までもが死産か新生子期に死んでしまったといいます。それに対し、正常な量のタウリンを与えたところ、産まれてきた71頭中67頭が生存したとのこと(:Sturman, 1986)。
フードに含まれるタウリンの含有率が0.01%では明らかな欠乏症、0.02%で軽度の欠乏症でしたが、0.05~1%では母猫にも子猫にも異常は見られなくなったそうです(:Sturman, 1991)。またタウリン濃度が高いほど母乳に含まれるタウリン濃度も比例的に増加し、子猫の発育状態が良かったとも。子猫の脳内においては濃度に連動してタウリン量が増えたことから、神経の成長に重要な役割を担っているものと推測されています(:Sturman, 1992)。
フードに含まれるタウリンの含有率が0.01%では明らかな欠乏症、0.02%で軽度の欠乏症でしたが、0.05~1%では母猫にも子猫にも異常は見られなくなったそうです(:Sturman, 1991)。またタウリン濃度が高いほど母乳に含まれるタウリン濃度も比例的に増加し、子猫の発育状態が良かったとも。子猫の脳内においては濃度に連動してタウリン量が増えたことから、神経の成長に重要な役割を担っているものと推測されています(:Sturman, 1992)。
子猫の発育異常
免疫力の低下
てんかん?
タウリンは脳内に豊富に存在しているため、不足すると脳の神経細胞に悪影響を及ぼす可能性があります。その代表例がてんかんです。
逸話的な報告では、3年に及ぶ慢性的なてんかんを患っていた猫にタウリンを投与したところ、症状および脳波が顕著に改善したとされています。その後タウリンの投与をストップしましたが、小康状態が保たれたとのこと。タウリンが皮質において過剰に発火している神経細胞に対し抑制的に作用したのではないかと推測されています(:Gelder, 1977)。また同様の効果はコバルトによるてんかんでも確認されています(:Gelder, 1972)。
しかし当然ながら、すべてのてんかんがタウリン不足で説明できるわけではありません。例えば扁桃体に起因するひきつけには何の効果もなかったという報告もあります(:Wada, 1975)。タウリンの抗てんかん作用について総合的に分析したレビュー論文でも、神経の発火に対しておそらく抑制作用は持っているだろうが、タウリン不足が脳内における異常発火の前提条件ではなく、あくまでも一因に過ぎないとしています(:Oja, 2013)。
逸話的な報告では、3年に及ぶ慢性的なてんかんを患っていた猫にタウリンを投与したところ、症状および脳波が顕著に改善したとされています。その後タウリンの投与をストップしましたが、小康状態が保たれたとのこと。タウリンが皮質において過剰に発火している神経細胞に対し抑制的に作用したのではないかと推測されています(:Gelder, 1977)。また同様の効果はコバルトによるてんかんでも確認されています(:Gelder, 1972)。
しかし当然ながら、すべてのてんかんがタウリン不足で説明できるわけではありません。例えば扁桃体に起因するひきつけには何の効果もなかったという報告もあります(:Wada, 1975)。タウリンの抗てんかん作用について総合的に分析したレビュー論文でも、神経の発火に対しておそらく抑制作用は持っているだろうが、タウリン不足が脳内における異常発火の前提条件ではなく、あくまでも一因に過ぎないとしています(:Oja, 2013)。
タウリンと猫の特異体質
猫においてタウリン欠乏症が起こりやすい理由は、完全肉食という特異体質にあります。
人を始めとする哺乳動物は肝臓から胆汁中へ分泌される胆汁酸(脂質の消化吸収を助ける分子)をタウリンもしくはグリシンによって抱合して体内を循環させます。しかし猫はもっぱらタウリンが豊富に含まれる動物の体組織をえさとして進化を遂げてきたため、タウリン不足に悩まされるということがあまりありませんでした。その結果、タウリンに対する過剰な依存が生じ、グリシン抱合というセーフティネットを持たないまま体質が固定化されてしまいました。ですからタウリンが不足すると胆汁酸の循環が滞り、容易に体調不良に陥ってしまいます(:Morris, 1982)。 さらに生合成にも問題があります。普通の哺乳動物は食事中のタウリンが足りない場合、主として肝臓においてメチオニンやシステインから自力でタウリンを合成することができます。タウリンの合成にはCSADと呼ばれる酵素が関わっていますが、猫においてはこの酵素の活性が非常に低いことがわかっています。例えば以下は猫、犬、ラットの脳内と肝臓におけるCSAD活性度の比較です。肝臓における値がひときわ低いことがおわかりいただけるでしょう(:Hayes, 1989)。 その結果、たとえ前駆体である硫酸塩やシステインがあっても、体内で十分な量のタウリンを合成することができません。さらにこの酵素はタウリン不足に陥ったからといって「火事場の馬鹿力」的に活性度が高まることがありませんので、食事から摂らない限り完全に枯渇してしまうのです(:Knopf, 1978)。
猫においてタウリンが必須栄養素にカウントされており、キャットフードに必ず添加されている理由はこうした特異体質が背景にあるからです。なお人間の肝臓におけるCSADの活性度は猫以下ですが、タウリン欠乏症にはなりません。ですから合成能力以外の何らかの要因も病気の発症に関わっていると推測されています。
人を始めとする哺乳動物は肝臓から胆汁中へ分泌される胆汁酸(脂質の消化吸収を助ける分子)をタウリンもしくはグリシンによって抱合して体内を循環させます。しかし猫はもっぱらタウリンが豊富に含まれる動物の体組織をえさとして進化を遂げてきたため、タウリン不足に悩まされるということがあまりありませんでした。その結果、タウリンに対する過剰な依存が生じ、グリシン抱合というセーフティネットを持たないまま体質が固定化されてしまいました。ですからタウリンが不足すると胆汁酸の循環が滞り、容易に体調不良に陥ってしまいます(:Morris, 1982)。 さらに生合成にも問題があります。普通の哺乳動物は食事中のタウリンが足りない場合、主として肝臓においてメチオニンやシステインから自力でタウリンを合成することができます。タウリンの合成にはCSADと呼ばれる酵素が関わっていますが、猫においてはこの酵素の活性が非常に低いことがわかっています。例えば以下は猫、犬、ラットの脳内と肝臓におけるCSAD活性度の比較です。肝臓における値がひときわ低いことがおわかりいただけるでしょう(:Hayes, 1989)。 その結果、たとえ前駆体である硫酸塩やシステインがあっても、体内で十分な量のタウリンを合成することができません。さらにこの酵素はタウリン不足に陥ったからといって「火事場の馬鹿力」的に活性度が高まることがありませんので、食事から摂らない限り完全に枯渇してしまうのです(:Knopf, 1978)。
猫においてタウリンが必須栄養素にカウントされており、キャットフードに必ず添加されている理由はこうした特異体質が背景にあるからです。なお人間の肝臓におけるCSADの活性度は猫以下ですが、タウリン欠乏症にはなりません。ですから合成能力以外の何らかの要因も病気の発症に関わっていると推測されています。
猫のタウリン必要量は?
猫においては特異体質からタウリンが欠乏しやすいため、ペットフードには必ず添加されています。ではどのくらいの量が適正なのでしょうか?
全血中のタウリン濃度の目安としては「250nmol/mL」が妥当との報告があります。また正常と考えられる血漿濃度は「70~80μmol/L」で、欠乏症の目安は血漿濃度で「30μmol/L未満」といったものもあります。ただし血漿中の濃度と全血中の濃度とでは大きな違いがありますので、どちらの指標を採用するかは慎重に考慮しなければなりません(:Morris, 1990)。
血中のタウリン濃度を測定するよりも、少なくとも欠乏症に陥らない最低量を毎日給餌するという方針の方が飼い主にとっては現実的でしょう。例えば以下は「欧州ペットフード工業会連合」(FEDIAF)および「米国飼料検査官協会」(AAFCO)が定めている摂取推奨量です。ドライフードよりウエットフードの含有量が多く設定されている理由は、製造工程における何らかの理由により体内での吸収量が減ってしまうからです。フードはすべて水分を取り除いた乾燥重量(DM)ベースで示しています。また1ppmは「フード1kg中に1mg」です。
全血中のタウリン濃度の目安としては「250nmol/mL」が妥当との報告があります。また正常と考えられる血漿濃度は「70~80μmol/L」で、欠乏症の目安は血漿濃度で「30μmol/L未満」といったものもあります。ただし血漿中の濃度と全血中の濃度とでは大きな違いがありますので、どちらの指標を採用するかは慎重に考慮しなければなりません(:Morris, 1990)。
血中のタウリン濃度を測定するよりも、少なくとも欠乏症に陥らない最低量を毎日給餌するという方針の方が飼い主にとっては現実的でしょう。例えば以下は「欧州ペットフード工業会連合」(FEDIAF)および「米国飼料検査官協会」(AAFCO)が定めている摂取推奨量です。ドライフードよりウエットフードの含有量が多く設定されている理由は、製造工程における何らかの理由により体内での吸収量が減ってしまうからです。フードはすべて水分を取り除いた乾燥重量(DM)ベースで示しています。また1ppmは「フード1kg中に1mg」です。
FEDIAF・2018年
- ドライフード(DM)100g中✓成猫=0.1g~0.13g
✓妊娠中のメス猫や子猫=0.1g - ウェットフード(DM)100g中✓成猫=0.2~0.27g
✓妊娠中のメス猫や子猫=100g中0.25g
AAFCO・2016年版
- ドライフード✓乾燥重量中0.1%(1000ppm)
✓100kcal中25mg - ウェットフード✓乾燥重量中0.2%(2000ppm)
✓100kcal中50mg
市販のキャットフードにはタウリンが添加されていますので欠乏症に陥ることはまずありません。危険なのは手作りのベジタリアンフードを与えている場合です。人間では大丈夫でも猫では欠乏症を発症しますのでご注意ください。