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猫の死因第一位は放し飼いによる交通事故~FIPや腎臓病をはるかに上回る死亡率

 猫の大敵としてはFIP(伝染性腹膜炎)や腎臓病が真っ先に浮かぶと思います。しかしそれらをはるかに凌駕する伏兵は、無責任な放し飼いに起因する交通事故です。英国でその実証データが公開されました。

猫の死因統計・英国編

 調査を行ったのはブリストル大学獣医学校のチーム。「Bristol Cats」と呼ばれる大規模長期コホート調査を元データとし、一般家庭で飼育されている猫たちの死亡率および死亡原因を明確化しました。

調査対象

 調査対象となったのは2010年から2013年の期間、複数のチャネルを通じてリクルートされた猫の飼い主たち。コホート調査の一環として応募時→飼い猫が8~16週齢時→6ヶ月齢時→12ヶ月齢時→1.5歳時→2.5歳時→4歳時→以降年1回という間隔でアンケートに回答しました。実際に解析に回されたのは猫が8歳時点における回答(アンケート10回目)で、最終的に2,444頭分のデータが対象となりました。

調査結果

 解析終了時点、合計2,444頭のうち死亡した個体が362頭いることが判明しました。性別の内訳はオス55.5%(201)+メス44.5%(161)で、手術ステータスが判明した289頭に限定すると去勢オス47.1%+避妊メス36.7%+未避妊メス9.0%+未去勢オス7.3%となりました。
 死亡原因が判明したのは351頭で以下のような内訳となりました。
死因(351頭)
英国における猫の死因トップ(全体)
  • 交通事故=45.6%(165頭)
  • 非特異的=13.3%(48頭)
  • 腎臓病=6.6%(24頭)
  • 心臓病=6.4%(23頭)
  • がん=6.1%(22頭)
 さらに猫たちを年齢で子猫(1歳未満)と若齢猫(1~6歳未満)とに区分した場合、以下のような死因比率となりました。
子猫の死因(60頭)
英国における猫の死因トップ(子猫)
  • 交通事故=61.2%(41頭)
  • FIP=11.9%(8頭)
  • 外傷=7.5%(5頭)
  • 手術合併症=6.0%(4頭)
  • 毒物誤飲=3.0%(2頭)
若齢猫の死因(155頭)
英国における猫の死因トップ(若齢猫)
  • 交通事故=49.6%(114頭)
  • 非特異的=14.4%(33頭)
  • 腎臓病=6.5%(15頭)
  • 心臓病=6.5%(15頭)
  • 突然死=4.8%(11頭)
 年齢別にライフテーブルを作成した結果、猫たちの年間死亡率が以下に示すような変動を見せました。 英国で飼育されているペット猫たちのライフテーブル Mortality and life table analysis in a young cohort of pet cats in the UK
Aimee R Taylor, Jennifer McDonald, et al., Journal of Feline Medicine and Surgery(2025), DOI:10.1177/1098612X2513146

ペット猫を殺す無責任な飼い主

 子猫に限定しても、若齢猫に限定しても、猫全体でも、「交通事故」が死因の筆頭であることが判明しました。猫の大敵としてFIPや腎臓病が恐れられていますが、それらをはるかに凌駕する脅威となっているのは、実は無責任な放し飼いをする飼い主自身であるという事実はショッキングです。
 飼い主が間接的にペット猫を殺しているという厳然たるデータがあるにもかかわらず、英国ではいまだにチャリティ(Battersea)が猫の放し飼いを推奨したり、政府が「ネズミ捕り係」と称した屋外猫(Larry)をマスコットとしたり、「猫を轢いたドライバーに停車義務を」という的外れな法律改正案を推進する動きが見られます。
 根底にあるのは猫の自然な本能を満たして心身の健全性を保つという信念ですが、リスクを負っているのは人間ではなく猫自身です。「猫の健康を増進するために猫を殺している」という間の抜けた図式にいつになったら気づくのでしょう。 猫を放し飼いにしてはいけない理由