解明・マタタビの葉の効能
調査を行ったのは岩手大学大学院連合農学研究科のチーム。一般的なマタタビ商品に用いられている虫えい果(ちゅうえいか)ではなく、「葉」がもつ可能性を検証するため、収穫時期、収穫部位、加工法にさまざまなパターンを持たせて猫たちの反応を調べました。なお上記「虫えい果」とはきれいな球形をした通常果実にマタタビミタマバエが産卵することで形成されるボコボコした果実のことです。
マタタビの中毒性テスト
まずマタタビが猫に対して中毒性を発揮するかどうかを確認するため、マタタビ抽出成分を紙に染み込ませた状態で猫の前に提示し、典型的な多幸感反応(顔や体をこすりつける・ゴロゴロ転がる・なめる・ガジガジ噛む)がどのように現れるかを観察しました。
10頭の猫を対象として4時間の実験を行ったところ、反応回数は中央値で3回(1~10回)となり、全時間に占める割合はわずか4%に過ぎなかったと言います。また例外なく、2回目以降の反応の方が短くなることが確かめられました。さらにマタタビ成分の匂いや味がなくなるまで試験紙を舐めたりかみ続ける猫はいなかったそうです。
こうした観察結果から、マタタビが猫に対して中毒性を発揮する可能性は低いとの結論に至りました。
10頭の猫を対象として4時間の実験を行ったところ、反応回数は中央値で3回(1~10回)となり、全時間に占める割合はわずか4%に過ぎなかったと言います。また例外なく、2回目以降の反応の方が短くなることが確かめられました。さらにマタタビ成分の匂いや味がなくなるまで試験紙を舐めたりかみ続ける猫はいなかったそうです。
こうした観察結果から、マタタビが猫に対して中毒性を発揮する可能性は低いとの結論に至りました。
マタタビのストレステスト
マタタビに繰り返し反応することで何らかのストレスや苦悩が引き起こされるかどうかを確かめるため、14頭の猫を対象として血清コルチゾールレベルと血清グルコースレベルがモニタリングされました。その結果、反応前後において統計的に有意な差は認められなかったと言います。
こうした事実から、マタタビが猫に対してストレスを与える可能性は低いとの結論に至りました。
こうした事実から、マタタビが猫に対してストレスを与える可能性は低いとの結論に至りました。
マタタビの毒性テスト
マタタビと長期的に接触した時、何らかの体調不良を引き起こすかどうかを確かめるため、13頭のラボ猫(9歳以下)を対象とした11~1176日(中央値569日)に渡る観察が行われました。
観察期間中におけるマタタビ反応の数は中央値で26回(0~56回)でした。その間ALTで肝臓、クレアチニンとSDMAで腎臓の機能をモニタリングしたところ、全頭正常範囲内だったと言います。またこれらの項目はマタタビ反応回数や日数の総数とは連動していませんでした。
こうした事実から、マタタビ反応を長期的・反復的に繰り返したとしても、肝臓や腎臓に悪影響を及ぼす可能性は低いとの結論に至りました。
観察期間中におけるマタタビ反応の数は中央値で26回(0~56回)でした。その間ALTで肝臓、クレアチニンとSDMAで腎臓の機能をモニタリングしたところ、全頭正常範囲内だったと言います。またこれらの項目はマタタビ反応回数や日数の総数とは連動していませんでした。
こうした事実から、マタタビ反応を長期的・反復的に繰り返したとしても、肝臓や腎臓に悪影響を及ぼす可能性は低いとの結論に至りました。
部位別の成分比較
マタタビの部位によって含有成分がどのように変化するかを確かめるため、イリドイド(イソプレンより生合成されるモノテルペン)4種のトータル量を部位別に比較しました。結果が以下で、最多が通常果実、最少が枝でした。なお「白葉」とは6月頃に見られる変色葉のことです。
イリドイド量の部位比較
- 通常果実:虫えい果=6:1
- 通常果実:緑葉=11:1
- 緑葉:白葉=3:1
収穫時期別の成分比較
収穫時期による含有成分の変化を比較するため、3月~10月に8つの測定ポイントを設け、葉の中に含まれるイリドイドの量を計測しました。
その結果、5~8月収穫サンプルの湿重量1g中におけるイリドイド総量が60μgで最多だったといいます。ネペタラクトールに限っては3~7月初旬にかけて増加し、その後10月まで減少に転じました。またネペタラクトール以外の占める割合が多かったのは4月に収穫した蕾で61.1%でした。
加工法による成分比較
8月に収穫した葉を環境温度で7日間自然乾燥してイリドイド総量を測定したところ、摘みたての葉に比べてほぼ半減することが明らかになりました。一方、ネペタラクトール:その他成分の比率を調べたところ、1~7日間の乾燥でネペタラクトールを除く成分比率が急激に増加し、ほぼ1:1になることが判明しました。具体的には乾燥前3.9 ± 0.8%→7日間乾燥49.3 ± 0.6%という激増でした。
1:1という比率は葉を意図的に傷つけた時と同じもので、理論上は猫の反応が最大になるはずです。調査チームは8頭の猫を対象とし、新鮮葉と乾燥葉を同時に提示して自発選好を観察しました。その結果、イリドイド総量は新鮮葉の方が2倍多く含んでいるにも関わらず、猫たちの反応時間が長かったのは乾燥葉の方でした。
この事実により、猫を強く誘引するのはイリドイド総量ではなく、その構成比率である可能性が強まりました。 Assessing the safety and suitability of using silver vine as an olfactory enrichment for cats
Reiko Uenoyama et al., iScience(2023), DOI:10.1016/j.isci.2023.107848, note:Pre-proof as of September 2023
この事実により、猫を強く誘引するのはイリドイド総量ではなく、その構成比率である可能性が強まりました。 Assessing the safety and suitability of using silver vine as an olfactory enrichment for cats
Reiko Uenoyama et al., iScience(2023), DOI:10.1016/j.isci.2023.107848, note:Pre-proof as of September 2023
商品化に期待・マタタビの葉
猫向けのマタタビ製品の多くは虫えい果と呼ばれるボコボコした果実を原材料としています。しかし果実を収穫できるのは7~8月という短い期間だけです。マタタビの葉は果実の代用品になるのでしょうか?
マタタビの葉が持つ可能性
調査チームは、果実に匹敵する嗜好品としてマタタビの「葉」が大きな可能性を秘めていると言及しています。緑葉のメリットは収穫期間が3月~10月と長い、副作用も中毒性もない、加工が簡単(乾燥)などです。
具体的にはイリドイド総量が増える6月初旬~8月にかけて緑葉を収穫→1日乾燥→イリドイド比率を1:1に調整するという加工法で商業化できるのではないかとのこと。ただし葉の中にはイリドイド以外の成分も含まれていますので、事前に別途毒性を確認しなければならないとも警告しています。
具体的にはイリドイド総量が増える6月初旬~8月にかけて緑葉を収穫→1日乾燥→イリドイド比率を1:1に調整するという加工法で商業化できるのではないかとのこと。ただし葉の中にはイリドイド以外の成分も含まれていますので、事前に別途毒性を確認しなければならないとも警告しています。
なぜ依存症にならない?
マタタビと接触したときの猫のイリドイド反応では内因性オピオイドβ-エンドルフィンによってμ-オピオイドシステムが活性化することが確認されています。このシステムは人間がアルコールやマリファナなど中毒性のある嗜好品やドラッグを摂取したときに活性化するものです。
同じ快楽システムを使っているのになぜ猫は依存症にならないのでしょうか?理由はよくわかっていませんが、人間向けの嗜好品やドラッグが血流を経由しているのに対し、猫のマタタビは嗅覚を経由している点に秘密があるのではないかと推測されています。
果実であれ葉であれ、毒性も依存性もなく気楽にトリップできるマタタビは、猫たちのQOL(生活の質)を高めるための環境エンリッチメントとして今後も活躍してくれることでしょう。
同じ快楽システムを使っているのになぜ猫は依存症にならないのでしょうか?理由はよくわかっていませんが、人間向けの嗜好品やドラッグが血流を経由しているのに対し、猫のマタタビは嗅覚を経由している点に秘密があるのではないかと推測されています。
果実であれ葉であれ、毒性も依存性もなく気楽にトリップできるマタタビは、猫たちのQOL(生活の質)を高めるための環境エンリッチメントとして今後も活躍してくれることでしょう。
噛みタバコのようにくちゃくちゃする商品より、葉から揮発するトリップ成分をクンクン嗅ぐ商品の方が飼い主としては安心できます。