手術済み子猫の成長曲線
調査を行ったのはペットフードメーカー「Waltham Petcare Science Institute」のチーム。オス猫やメス猫に対する不妊手術が体重や体組成にどのような影響を及ぼすかを検証するため、2つの母集団を対象とした統計調査を行いました。
まず調査対象となったのは1994年7月から2016年11月までの期間、北米を中心に900超の一次診療医院を展開するBanfield®Pet Hospitalにおいて不妊手術を受けた猫たち(2004年以降が77%を占める)。一般家庭で飼育されている短毛種(非純血種)であること、やせすぎでも太り過ぎでもない普通体型であること、体重に影響を及ぼす医学上の問題を抱えていないことを条件に絞り込みを行い、先行調査で示された未手術猫における標準的な成長曲線との隔たりを明確化しました。解析対象となった猫たちの手術時週齢と頭数は以下です。
まず調査対象となったのは1994年7月から2016年11月までの期間、北米を中心に900超の一次診療医院を展開するBanfield®Pet Hospitalにおいて不妊手術を受けた猫たち(2004年以降が77%を占める)。一般家庭で飼育されている短毛種(非純血種)であること、やせすぎでも太り過ぎでもない普通体型であること、体重に影響を及ぼす医学上の問題を抱えていないことを条件に絞り込みを行い、先行調査で示された未手術猫における標準的な成長曲線との隔たりを明確化しました。解析対象となった猫たちの手術時週齢と頭数は以下です。
オス猫
- 20週齢前=712頭
- 20~23週齢未満=2,141頭
- 23~28週齢未満=2,453頭
- 28週齢以降=3,007頭
メス猫
- 21週齢前=952頭
- 21~25週齢未満=2,662頭
- 25~29週齢未満=3,010頭
- 29週齢以降=3,785頭
- Zスコア
- Zスコア(Z-score)とは分布の平均値からのずれを示す値。Zスコアが0より大きければ平均以上であること、0より小さければ平均以下であることを示す。またZスコアの絶対値が大きければ大きい程、分布の平均値からのずれが大きいことを示している。
去勢オスの平均成長曲線
以下はさまざまなタイミングで去勢手術を施されたオスの子猫たちにおける平均的な成長曲線です。グレーの縦ラインは去勢手術を行ったタイミングの中央値、グレーの曲線は去勢していないオス猫における標準成長曲線です。
避妊メスの平均成長曲線
以下はさまざまなタイミングで避妊手術を施されたメスの子猫たちにおける平均的な成長曲線です。グレーの縦ラインは避妊手術を行ったタイミングの中央値、グレーの曲線は避妊していないメス猫における標準成長曲線です。
不妊手術による体組成への影響
次に調査チームは、不妊手術が体組成に対して及ぼす影響を明らかにするため、英国のウォルサムの研究施設内で飼育されていたメス猫を対象とした動物測定学的な観測を行いました。
調査対象となったのは22頭のメス猫たち。ランダムで11頭ずつからなる2つのグループに分け、一方のグループにだけ生後19週齢のタイミングで避妊手術を施し、自由摂食環境に置いて1歳になるまで定期的なモニタリングを行いました。モニタリングのタイミングは11→18→30→52週齢時点で、体重のほか以下に示す体組成項目がDEXAと呼ばれる機器を用いて計測されました。
Salt C, Butterwick RF, Henzel KS, German AJ (2023) PLoS ONE 18(3): e0283016, DOI:10.1371/journal.pone.0283016
調査対象となったのは22頭のメス猫たち。ランダムで11頭ずつからなる2つのグループに分け、一方のグループにだけ生後19週齢のタイミングで避妊手術を施し、自由摂食環境に置いて1歳になるまで定期的なモニタリングを行いました。モニタリングのタイミングは11→18→30→52週齢時点で、体重のほか以下に示す体組成項目がDEXAと呼ばれる機器を用いて計測されました。
測定項目
- 体高:立位における接地面~肩甲骨
- 体長:胸骨柄~肛門直下
- 胴回り:腰の一番くびれた部分の円周
- 胸囲:胸部の最深部(第八肋骨当たり)の円周
- 胸深:胸部中央の脊椎から胸郭最深部
- 肘幅:上腕骨関節顆の横幅
- 上肢長:尺骨突起~手根骨
- 下肢長:膝蓋骨~足根骨
Salt C, Butterwick RF, Henzel KS, German AJ (2023) PLoS ONE 18(3): e0283016, DOI:10.1371/journal.pone.0283016
オスもメスも肥満に注意
一次診療施設のデータから、不妊手術によりオスメスとも「体重が増える」「早期手術の影響が大きく出る」という変化が確認されました。また研究所のデータから、少なくともメス猫においては不妊手術により「体重・体脂肪・除脂肪のすべてが増える」「胸囲・胴回りが大きくなる」ことが判明しました。
手術でなぜ体重が増える?
不妊手術による影響は性ホルモンを介して生まれると考えられていますが、詳細なメカニズムまではわかっていません。ホルモンバランスの変化により「消費エネルギーが減る」「摂食量が増える」「骨端線の閉鎖が遅れる」といった変化が生まれ、結果として体が大きくなったり体脂肪が増えたりするものと想定されています。
早期不妊のデメリット
近年は早期不妊手術のメリットが見直され生後6ヶ月齢未満での介入が推奨されています。その一方、背後にあるメカニズムはどうであれオスでもメスでも不妊手術によって体重が増えてしまうことは確かなようですので、デメリットとして「肥満・太り過ぎ」があるという事実を忘れてはいけないと、調査チームは注意喚起しています。
猫に不妊手術を施した場合、最低限以下の項目は心がける必要があるでしょう。
猫に不妊手術を施した場合、最低限以下の項目は心がける必要があるでしょう。
猫の肥満予防策
- 定期的な目視検査基本的にはBCSで評価しますが、我が子の肥満を認識できなくなる母親と同様、飼い主による愛猫の肥満評価は甘くなりがちですので、体重測定と並行するようにします。
- 定期的な体重測定定期的に体重を測り、表計算ソフトなどにデータを保存して増減がすぐわかるよう管理します。
- 計量器による正確なフード計測大きめのパッケージからフードを取り分ける際は、カップで目分量ではなくキッチンスケーラーを用いてグラム単位で小分けにします。
成長曲線は生後間もない子猫を拾ったときや、子猫の里親になった時に役立ちそうですね。不妊手術を施していない子猫の成長曲線はこちらにまとめてあります。また育て方に関しては以下のページをご参照ください。