授乳期間と成長時の肥満
調査を行ったのはオランダにあるユトレヒト大学を中心としたチーム。猫の飼い主77人にアンケート調査を行い、最終的に猫69頭分のデータを収集して幼齢期の生育環境と成長してからの肥満リスクの関係性を検証しました。猫たちの基本属性は1頭を除き全頭が不妊手術済み、計測時点における平均年齢が5.3歳、雑種49頭+純血種20頭(9品種)というものです。
全頭を対象とし、後肢の長さと胸郭外周から肥満の度合いを測るBMIの猫バージョン「fBMI」を測定したところ、体重過多が全体の49.3%だったといいます。具体的には「太り気味」(体脂肪率30~45%)が27頭(39.1%)、「明らかな肥満」(脂肪率45%超)が7頭(10.1%)という内訳で、メス猫(42.0%)よりもオス猫(58.0%)においてやや高い肥満率が確認されました。 次に生まれて間もない時期における授乳期間と成長後における肥満との関係を調べたところ、0~6週間の体重過多が68%であるのに対し6週間以上のそれが33~48%となり、単変量解析でオッズ比が0.33と算定されました。平たく言うと新生子期の授乳期間が6週間以上ある場合、成長してから太るリスクが1/3になるということです。
さらに複数の変数間の相互作用を考慮に入れた多変量解析を行ったところ、以下のような結果になりました。
Denise van Lent, Johannes C. M. Vernooij , Ronald Jan Corbee, Animals 2021, DOI:10.3390/ani11123434
全頭を対象とし、後肢の長さと胸郭外周から肥満の度合いを測るBMIの猫バージョン「fBMI」を測定したところ、体重過多が全体の49.3%だったといいます。具体的には「太り気味」(体脂肪率30~45%)が27頭(39.1%)、「明らかな肥満」(脂肪率45%超)が7頭(10.1%)という内訳で、メス猫(42.0%)よりもオス猫(58.0%)においてやや高い肥満率が確認されました。 次に生まれて間もない時期における授乳期間と成長後における肥満との関係を調べたところ、0~6週間の体重過多が68%であるのに対し6週間以上のそれが33~48%となり、単変量解析でオッズ比が0.33と算定されました。平たく言うと新生子期の授乳期間が6週間以上ある場合、成長してから太るリスクが1/3になるということです。
さらに複数の変数間の相互作用を考慮に入れた多変量解析を行ったところ、以下のような結果になりました。
授乳期間と肥満リスク
- 0~6週間=1
- 7~11週間=0.45
- 12~16週間=0.31
- 16週間超=0.23
Denise van Lent, Johannes C. M. Vernooij , Ronald Jan Corbee, Animals 2021, DOI:10.3390/ani11123434
母乳が少ないとデブ猫になる?
過去に行われた調査では、発達の臨界期における保育の欠落が後の体重制御、食欲制御、エネルギー消費に影響を及ぼすとされています。また別の調査では授乳を通して摂取するレプチン(脂肪細胞由来のホルモンの一種)が、脂質の蓄積を始めとした制御能力を左右すると報告されています。
今回の調査では子猫の時期における授乳期間が長くなるほど成猫になってからの肥満リスクが低下する傾向が確認されました。背景にあるメカニズムは不明ですが、母乳を通して体内に取り込むレプチンが代謝に何らかの影響を及ぼしている可能性が伺えます。この仮説を検証するためには、授乳期間を統一した上で、レプチンを含んだ母乳で育てた子猫と人工ミルクで育てた子猫の成長後の肥満リスクを比較する必要があるでしょう。
ちなみに純血種の肥満率が20%だったのに対し非純血種の肥満率が61%と、明白な格差が見られました。過去に行われた調査でも「雑種」が肥満の危険因子として挙げられており、詳細な理由はわかっていませんでしたが、幼齢期における授乳期間の短さやレプチンを含まない人工ミルクによる保育環境で説明できる可能性があります。
今回得られた知見を踏まえ、調査チームは子猫の授乳期間を少なくとも7週以上に設定することが肥満予防につながるだろうとしています。ちなみにフィンランド・ヘルシンキ大学が行った調査では、子猫をあまりにも早いタイミングで母猫から引き離すと成長後の問題行動につながってしまう可能性があるため、少なくとも14週齢になるまで自重すべきであると提唱されています。母猫がいる場合はできるだけ長く親子の時間をもたせることが心身の発達にとって重要なようです。
今回の調査では子猫の時期における授乳期間が長くなるほど成猫になってからの肥満リスクが低下する傾向が確認されました。背景にあるメカニズムは不明ですが、母乳を通して体内に取り込むレプチンが代謝に何らかの影響を及ぼしている可能性が伺えます。この仮説を検証するためには、授乳期間を統一した上で、レプチンを含んだ母乳で育てた子猫と人工ミルクで育てた子猫の成長後の肥満リスクを比較する必要があるでしょう。
ちなみに純血種の肥満率が20%だったのに対し非純血種の肥満率が61%と、明白な格差が見られました。過去に行われた調査でも「雑種」が肥満の危険因子として挙げられており、詳細な理由はわかっていませんでしたが、幼齢期における授乳期間の短さやレプチンを含まない人工ミルクによる保育環境で説明できる可能性があります。
今回得られた知見を踏まえ、調査チームは子猫の授乳期間を少なくとも7週以上に設定することが肥満予防につながるだろうとしています。ちなみにフィンランド・ヘルシンキ大学が行った調査では、子猫をあまりにも早いタイミングで母猫から引き離すと成長後の問題行動につながってしまう可能性があるため、少なくとも14週齢になるまで自重すべきであると提唱されています。母猫がいる場合はできるだけ長く親子の時間をもたせることが心身の発達にとって重要なようです。
母猫がいないみなしごの場合は、ベストとは言えませんが人工ミルクで保育してあげましょう。