猫との遊び方調査
レーザーポインターを用いて猫と遊ぶことは動物種固有の本能的な行動の発現(猫の場合は追跡行動)を促すことから、一部の人により推奨されています。その一方、追跡の最後に物理的に接触できる対象物がないことから、逆にストレスやフラストレーションの原因になり、最悪のケースでは常同行動を始めとした強迫神経症につながる危険性が指摘されています。では実際、猫にとってプラスなのでしょうかマイナスなのでしょうか?
調査を行ったのはコロラド州立大学獣医学校のチーム。2021年2月から4月の期間、SNS(Facebook, Twitter, Instagram)を通じて猫の飼い主に呼びかけ、猫との遊び方と強迫的な異常反復行動との間に関係性があるかどうかを検証しました。
猫と飼い主の基本属性
飼い主の条件を「18歳以上で6ヶ月以上に渡り少なくとも1頭の猫の世話をしている」、猫の条件を「1歳以上」として回答を募ったところ、最終的に618人分のデータが集まったといいます。飼い主と猫の基本属性は以下です。
飼い主の基本属性
- アメリカ=65.5%
- イギリス=13.9%
- カナダ=8.4%
- 平均年齢=39.8歳(中央値38歳)
- 女性=88.5%
- 最終学歴大卒=78.6%
- 5年以上猫と暮らしている=51.1%
猫の基本属性
- 不妊メス=48.6%
- 去勢オス=50.1%
- 室内飼育=75.9%
- 放し飼い=23.9%
- 単頭飼い=45.5%
- 2頭飼い=33.5%
異常反復行動との関連項目
猫でよく見られる異常反復行動に関し、1(まったくない)~7(1日に複数回)までの7段階で評価してもらいました。具体的には「光や影を執拗に追い回したり見つめ続ける」「特定のおもちゃに執着する」「執拗にグルーミングを続ける」「自分の尻尾を追い回して自傷する」などです。また遊ぶときにレーザーポインターを使うかどうかも合わせて確認されました。
その結果、46.9%(290人)の人が多かれ少なかれ使っていることが明らかになったといいます。頻度の内訳は以下です。
Kogan, L.R.; Grigg, E.K, Animals 2021,11, 2178. DOI:10.3390/ani11082178
その結果、46.9%(290人)の人が多かれ少なかれ使っていることが明らかになったといいます。頻度の内訳は以下です。
レーザーポインターの使用頻度
- 月に1回以下=50.7%
- 週に1回以下=29.1%
- 週に2~3回=14.2%
- 週に3回以上=2.8%
- 毎日=3.2%
レーザーポインターの使用時間
- 5分未満=73.8%
- 5~15分未満=20.7%
- 15~30分未満=4.5%
- 30~60分未満=0.7%
- 1~2時間未満=0.3%
Kogan, L.R.; Grigg, E.K, Animals 2021,11, 2178. DOI:10.3390/ani11082178
レーザーポインターと猫の異常行動
猫が見せる異常反復行動の報告頻度に関し、レーザーポインターを「使ったことがない<月に1回以下<それ以上の頻度」という勾配が確認されました。平たく言うと「レーザーポインターを使えば使うほど異常反復行動の発現リスクが増す」となるでしょうか。「異常」の定義が飼い主の感覚に任されているため正常と異常のボーダーラインを明らかにすることは難しいですが、多くは5年以上猫と暮らしたことがあるベテランばかりでしたので、「これはちょっとおかしいな」という経験に基づく感覚にはある程度信頼がおけるでしょう。
猫との遊びは動物種固有の本能的な行動の発現させると同時に、人間との友好的な交流を実現できる効果的なインタラクションです。今回の調査結果を猫との生活に応用すると猫と遊ぶときは必ず物理的に接触できる擬似的な獲物を用いるとなります。
レーザーポインターを使う飼い主のうち39%は「楽だから」を理由として挙げていました。また強迫性行動につながることを心配していた飼い主はわずか5.2%でした。猫のストレスを解消する目的で行っている遊びが逆に猫のストレスを増強し、病的な反復行動につながり得るというリスクを、今後は逸話ではなく科学のレベルでとらえた方が良いでしょう。
レーザーポインターを使う飼い主のうち39%は「楽だから」を理由として挙げていました。また強迫性行動につながることを心配していた飼い主はわずか5.2%でした。猫のストレスを解消する目的で行っている遊びが逆に猫のストレスを増強し、病的な反復行動につながり得るというリスクを、今後は逸話ではなく科学のレベルでとらえた方が良いでしょう。
猫と狩猟ごっこするときのキーワードは「アニマシー」(animacy, 生物固有の特徴)です。レーザーの光ではなく、物理的に触ることができるおもちゃをまるで生きているかのように動かしてみてください。