生肉の嗜好性テスト
調査を行ったのはニュージーランドにあるマッセー大学のチーム。高級ペットフードの食材として頻繁に用いられている肉類の嗜好性を検証するため、8頭の猫を対象とした給餌テストを行いました。猫たちは未避妊のメス4頭、去勢済みのオス4頭、18ヶ月齢~6歳の平均3.7歳という内訳です。
猫が好む肉の部位は?
猫たちが体のどの部位を最も好むのかを確かめるため、1週間のうち5日間だけ規定量の生肉を給餌し、トータルでどのくらいの量を自発的に平らげるかを計測しました。用いられた部位はラム(ヒツジ肉)とビーフ(牛肉)の肺、心臓、腎臓、胃(トライプ)、デボンドミート(※MDM=赤肉に残った細かい骨を分離機で取り除いたあとに残る肉)で脂溶性ビタミンAの過剰症がある肝臓(ラム65g/ビーフ35g)以外は1日100gが与えられました。8頭の猫から取った合計40日分のデータまとめたものが以下です。グラム表記は1週間で食べた量、パーセンテージは完食率です。
- ラム肉✓肺→727.1g(72.7%)
✓心臓→704.4g(70.4%)
✓腎臓→912.5g(91.3%)
✓胃→696.0g(69.6%)
✓MDM→342.8g(34.3%)
✓肝臓→307.8g(94.7%) - ビーフ✓肺→716.0g(71.6%)
✓心臓→554.4g(55.4%)
✓腎臓→750.6g(75.1%)
✓胃→622.1g(62.2%)
✓MDM→239.4g(23.9%)
✓肝臓→172.9 g(98.8%)
猫が好む肉の種類は?
次にラム肉とビーフのどちらをより好むのかを検証するため、2種類の肉を同時に提示するという実験が行われました。用いられた部位は上記したのと同じで、肝臓(ラムとビーフともに1日22.5g)を除いて1日の給餌量は100g統一です。5日間に渡って取られた食事量まとめたところ、以下のような格差が見られたといいます。結論を言うと、アスタリスク(*)のついている部位に関しては、オレンジ色のラム肉の方が統計的に好まれることが明らかになりました。
Investigating the Palatability of Lamb and Beef Components Used in the Production of Pet Food for Cats
Pavinee Watson, David Thomas, et al., Animals Volume 10 Issue 4, DOI:10.3390/ani10040558
Pavinee Watson, David Thomas, et al., Animals Volume 10 Issue 4, DOI:10.3390/ani10040558
猫はヒューマングレードを好む?
市販のキャットフードの中には、キブル(フード粒)を赤い肉色に見せるためわざわざ着色料を用いているものがあります。しかし猫は赤色を認識できないため、こうした添加物には飼い主の目にアピールして「おいしそう」と錯覚させる意味しかありません。また今回の調査により、人間の目には美味しそうに映る赤肉(デボンドミート)が、そもそも猫たちにとってさほど魅力的ではない可能性が示されました。これでは一体何のために割増料金を払って、着色料の入った高級ペットフードを購入しているのかわからなくなります。
今回の調査で用いられたのは生肉ですので、加熱加圧加工された肉ではまた違った結果になるかもしれません 。調査チームにペットフード会社のメンバーは関わっていないようですので、スポンサーバイアスの可能性は比較的薄いでしょう。 内臓を代表格とする「肉副産物」と聞くとクズ肉とか品質の悪い肉を想像してしまいますが、猫たちはむしろそうした肉を好むのでしょうか?だとすると「ヒューマングレードなのに食いつきが悪い」とか「プレミアフードなのにたくさん残した」という飼い主からの逸話的な報告にも説明が付きますね。なおラムにしてもビーフにしても肝臓が最も好まれる傾向にありましたが、ビタミンA過剰症の危険性がありますのでぐれぐれもレバ刺しなどは与えないでください。
今回の調査で用いられたのは生肉ですので、加熱加圧加工された肉ではまた違った結果になるかもしれません 。調査チームにペットフード会社のメンバーは関わっていないようですので、スポンサーバイアスの可能性は比較的薄いでしょう。 内臓を代表格とする「肉副産物」と聞くとクズ肉とか品質の悪い肉を想像してしまいますが、猫たちはむしろそうした肉を好むのでしょうか?だとすると「ヒューマングレードなのに食いつきが悪い」とか「プレミアフードなのにたくさん残した」という飼い主からの逸話的な報告にも説明が付きますね。なおラムにしてもビーフにしても肝臓が最も好まれる傾向にありましたが、ビタミンA過剰症の危険性がありますのでぐれぐれもレバ刺しなどは与えないでください。
猫におけるビタミンAの摂取上限値はフード1kgに対して333,300IU(およそ2.5mg)までです。生のウシレバー1kg中に含まれるビタミンA含有量は514,467IU、生のラムレバー1kg中に含まれるビタミンA含有量は943,967IUと推計されていますので、生レバーばかり食べていると明らかに過剰症になります。