猫のDNAに含まれる「苦味」遺伝子
2015年、アメリカにあるモネル化学感覚研究所の調査チームが苦味受容器である「Tas2r」の形成と発現に関わっている遺伝子を調べたところ、猫では12の遺伝子が機能を保っていることが確認されたと言います。具体的には以下です。「広域」とは多くの種類の苦味成分を感知できること、「狭域」とは少ない種類の苦味成分しか感知できないことを意味しています。
Lei W, Ravoninjohary A, Li X, Margolskee RF, Reed DR, Beauchamp GK, et al. (2015) , PLoS ONE 10(10): e0139670, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0139670
猫の苦味受容器関連遺伝子
- 広域感受性遺伝子Tas2r2 | Tas2r46
- 中間感受性遺伝子Tas2r4 | Tas2r7 | Tas2r67
- 狭域感受性遺伝子Tas2r12 | Tas2r38
- 無反応遺伝子Tas2r3 | Tas2r9 | Tas2r42
- 増幅不可遺伝子Tas2r1 | Tas2r43
Lei W, Ravoninjohary A, Li X, Margolskee RF, Reed DR, Beauchamp GK, et al. (2015) , PLoS ONE 10(10): e0139670, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0139670
猫の舌は苦味に敏感!
猫の遺伝子内で確認された12個という数字は大きいのでしょうか、それとも小さいのでしょうか?6000万年前の共通祖先から枝分かれした複数の動物を対象として同様の調査を行ったところ、以下のような結果になったと言います。
一方、植物を食べる機会がほぼない完全肉食動物であるフェレットや猫においても10を超える有効遺伝子が確認されました。この事実は猫が甘味受容器を有していないことから考えると驚きです。なぜなら、果物やでんぷん類を食べる機会が少ないことで甘味受容器が退化したのだとすると、植物を食べる機会が少ないことで苦味受容器が退化することも十分考えられるからです。実際、水性肉食動物であるセイウチ(5)、アザラシ(4)、イルカ(0)、クジラ(1)、マナティ(7)では苦味受容器の遺伝子が大幅に退化しています。 苦味受容器の発現に関わる遺伝子が、完全肉食動物である猫において比較的多く保たれている理由としては、「獲物の体内に含まれる植物を感知するため」「獲物の体内に含まれる胆汁酸、毒、皮膚分泌物などを感知するため」「舌ではなく呼吸器の粘膜に発現し、有害なガスの吸引を忌避するため」などが想定されています。
いずれにしても、餌にうまく混ぜたはずの苦い薬を器用に吐き出すことから考えると、猫の舌が苦味に敏感であるという事実は変わらないようです。
有効Tas2r遺伝子の数
- ジャイアントパンダ→16
- イヌ→15
- フェレット→14
- ホッキョクグマ→13
- ネコ→12
一方、植物を食べる機会がほぼない完全肉食動物であるフェレットや猫においても10を超える有効遺伝子が確認されました。この事実は猫が甘味受容器を有していないことから考えると驚きです。なぜなら、果物やでんぷん類を食べる機会が少ないことで甘味受容器が退化したのだとすると、植物を食べる機会が少ないことで苦味受容器が退化することも十分考えられるからです。実際、水性肉食動物であるセイウチ(5)、アザラシ(4)、イルカ(0)、クジラ(1)、マナティ(7)では苦味受容器の遺伝子が大幅に退化しています。 苦味受容器の発現に関わる遺伝子が、完全肉食動物である猫において比較的多く保たれている理由としては、「獲物の体内に含まれる植物を感知するため」「獲物の体内に含まれる胆汁酸、毒、皮膚分泌物などを感知するため」「舌ではなく呼吸器の粘膜に発現し、有害なガスの吸引を忌避するため」などが想定されています。
いずれにしても、餌にうまく混ぜたはずの苦い薬を器用に吐き出すことから考えると、猫の舌が苦味に敏感であるという事実は変わらないようです。