黒猫に対する偏見調査
調査を行ったのはテキサス女子大学・心理哲学科のチーム。ネットなどを通じてリクルートされた101人(男性17名+女性84名 | 平均年齢35歳)の成人を対象とし、黒猫に対する偏見が譲渡されやすさにどのような影響を及ぼすかが検証されました。調査チームが事前に立てた仮説は以下です。
Haylie D. Jones andChristian L. Hart, Psychological Reports, DOI: 10.1177/0033294119844982
黒猫への偏見はなぜ生まれる?
- カラーバイアス仮説明るい色は直感的に良いもの暗い色は逆に悪いものとしてカテゴライズされる(Meier et al., 2004)という心理傾向から、黒猫が理由もなく「悪しきもの」とみなされているかもしれない。
- 偏見仮説信仰心が厚く(黒魔術など)、迷信を信じやすく(黒猫とすれ違うと不幸が起こるなど)、人種偏見が強い人ほど黒猫に対して強い思い込みや偏見を抱いているかもしれない。
- 心理的距離仮説猫の譲渡がうまくいくかどうかは友好性と遊び好きの度合いで左右される(Sinn, 2016)、黒猫は友好性が低く遊び好きの度合いが低い(Lum, 2013)、保護施設において黒猫が譲渡されるまでには他の色の猫と比べて時間がかかる(Kogan et al., 2013)といった過去の報告から、黒猫は表情が読み取りにくいので里親候補者との間に心理的な距離が生まれ、譲渡までに時間がかかるのかもしれない。
- 友好性=どの程度人懐こいと思うか?
- 攻撃性=どの程度攻撃的に見えるか?
- 譲渡性=どの程度引き取りたいと思うか?
- 情緒性=どの程度気持ちを読み取りやすいか?
Haylie D. Jones andChristian L. Hart, Psychological Reports, DOI: 10.1177/0033294119844982
黒猫への偏見はなぜ生まれる?
今回の調査において被験者の思い込みや偏見を客観化する際に用いられた調査票は、信仰心の篤さを測る「Santa Clara Strength of Religious Faith Questionnaire」、迷信や言い伝えをどの程度信じやすいかを測る「Revised Paranormal Belief Scale」、人種的な偏見をどの程度抱いているかを測る
「Modern Racism Scale」という3つでした。
オカルト趣味と黒猫バイアス
黒猫バイアスに最も大きな影響を及ぼしていた「Revised Paranormal Belief Scale」の具体的な質問項目は以下です。「1=全く思わない」~「7=全くその通り」までの7段階で回答していきます(※4=どちらとも言えない)。
Revised Paranormal Belief Scale
- たとえ死んだとしても魂は生き続ける
- メンタルフォースで物体を持ち上げることができる人がいる
- 黒魔術は実在する
- 黒猫は不幸をもたらす
- 心や魂は肉体を離脱することができる(幽体離脱は存在する)
- チベットの雪男は実在する
- 占星術は未来を正確に予見できる
- 悪魔は実在する
- 念力で物を動かすサイコキネシスは実在する
- 魔女は実在する
- 鏡を割ると不幸が訪れる
- 睡眠中やトランス状態にある時、精神は肉体を離脱する
- ネス湖のネッシーは実在する
- 占星図は個人の未来を正確に言い当てる
- 神を信じている
- 人の思念によって物体は動かせる
- 儀式や呪文によって人に呪いをかけることができる
- 「13」は不吉な数字である
- 輪廻転生(生まれ変わり)は起こる
- 他の惑星にも生物は存在している
- 未来を予見できる超能力者がいると思う
- 天国と地獄は存在する
- 読心術は不可能である
- 魔術の実例を知っている
- 死者と交信することができる
- 未来を予見する不思議な能力を備えた人がいる
SNS映えと黒猫バイアス
日本国内において黒猫バイアスに関する調査が行われたことはありませんが、「黒猫が不幸をもたらす」とか「道端で黒猫とすれ違うのは凶兆」といった迷信が今もなお残っています。オカルト好きと黒猫バイアスが連動しているのだとすると、「黒猫は譲渡率が悪い」といった現象として現れるかもしれません。ただし相当な数の人が非科学的なオカルトに傾倒している必要がありますが。
オカルト趣味以外で気になるのは、猫の情緒性(感情の読み取りやすさ)が低いほど人の譲渡性(里子として引き取りたい気持ち)も低くなるという傾向が見られた点です。逸話的に語られる「黒猫はSNS映えしないから保護施設における譲渡率が悪い」という話と、何らかの関わりを持っている可能性が感じられます。例えばイギリス国内における具体例をあげると以下のような感じです。#インスタ映えが黒猫を殺す?
— 子猫のへや (@konekono_heya) October 9, 2018
RSPCA
千頭中7割の保護猫が黒や黒混じり
Blue Cross
2007年から6年間で黒猫の引取率が65%アップ
Millwood Cat Rescue Centre
写真映えしないのが原因だろう
【Telegraph/2014.7.29】→https://t.co/4WmhWko6Ov pic.twitter.com/FngIwmeS6N
インスタ映えが黒猫を殺す?
- Blue Cross2007年から6年間で施設が黒猫を引き取る率が65%もアップした
- Millwood Cat Rescue Centre黒猫の譲渡率の悪さは写真映えしないのが一因だろう
- 保護施設The Moggeryここ20年で黒猫の譲渡率が悪くなったことには猫をSNSにアップする文化が影響しているのではないか。黒猫は写真写りが悪くイマイチだから
- RSPCA茶トラの待機期間が20日に対し黒猫は平均30日。1,000頭中7割の保護猫が黒や黒混じり