詳細
調査を行ったのは、チェコ共和国にある「University of Veterinary and Pharmaceutical Sciences Brno」を中心としたチーム。2011年1月ら2015年12月の期間、チェコ郊外にある3つのノーキルシェルターを対象とし、猫が保護された日から里親に引き取られるまでの収容期間に影響を及ぼす因子が何なのかを検証しました。調査期間中に引き取られた合計1,407頭の基本データと、猫たちを引き取った里親の基本データを元にして統計的に調査を行ったところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
Katerina Kubesova, Eva Voslarova, Vladimir Vecerek & Marijana Vucinic(2017) , Anthrozoos, 30:4, 623-633
譲渡数と関連因子
- 譲渡数は秋から冬にかけて多い
- 11月と12月の譲渡数が最も多い
- 3~12ヶ月齢の譲渡数が最も多い
- 平均収容期間は春が最も長い
- 10歳以上の収容期間が最も長い
- 黒っぽい被毛の猫の収容期間は長い
- 里親は女性の方が多い
- メス猫の方が譲渡数が多い
Katerina Kubesova, Eva Voslarova, Vladimir Vecerek & Marijana Vucinic(2017) , Anthrozoos, 30:4, 623-633
解説
譲渡数が秋から冬(11~12月)にかけて増えるという傾向が確認されました。クリスチャンが多い国いおいては、クリスマスシーズンが近づくとチャリティーに対するモチベーションが高まり、身寄りのない動物を引き取ろうとする人が増えるのかもしれません。あるいは夏場になると長期休暇でどこかに出かける人が増え、動物を迎えることを先延ばしにする人が増えることが、季節による振幅を拡大している可能性もあります。
里親は男性よりも女性の方が多くを占めていました。過去に行われた調査では、動物の保護活動に関わっている人は女性の方が多いとか、猫から得る喜びは女性の方が大きいといった報告があります。ですから男性よりも女性の方が生理的に猫を好む人が多いのかもしれません。あるいは「男らしさ」という社会通念に縛られた結果、猫は好きだけれどもかわいがっている姿を見られるのが恥ずかしいと考える男性が増え、結果としてシェルターに足を運ぶ男性の数が減っているのかもしれません。
子猫(3~12ヶ月齢)よりも成猫や老猫の譲渡数が少ないという傾向が確認されました。幼すぎる子猫(3ヶ月齢未満)に対しては「しつけが大変」、「部屋の中が騒がしくなる」、成猫(5~10歳)や老猫(10歳以上)に対しては「子猫特有の可愛さがない」、「医療費がかかる」、「看取りの日が近い」といった考えが頭をよぎり、消去法で子猫を選ぶという判断に落ち着くのでしょうか。この傾向は欧米で行われた過去の調査とも部分的に一致しています。
黒っぽい被毛を持つ猫の収容期間が他の猫に比べて1ヶ月ほど長くなるという傾向が確認されました。黒っぽい色(黒 | 黒+白いマーク | タビー | タビー+白いマーク)が積極的に避けられたのか、それとも明るい色が積極的に選ばれたのか定かではありませんが、もし前者の仮説が正しいのだとすると、以下のような理由が考えられます
黒猫は嫌われ者?
- 黒が持つネガティブなイメージ
- 黒い猫は不吉であるという迷信
- 写真映えしない
- 表情がわかりにくい