詳細
調査を行ったのはオランダ・ユトレヒト大学獣医学部のチーム。アムステルダムやユトレヒトにある6つの動物病院を受診した猫を対象とし、家の中と病院における呼吸数にどのような差が見られるの検証しました。その結果、以下のようなデータが得られたといいます。猫たちはすべて医学的な異常が見られない臨床上健康な猫たちです。
E. Dijkstra, E. Teske, V. Szatmari, The Veterinary Journal 234 (2018) 96-101, doi.org/10.1016/j.tvjl.2018.02.0141090-0233
猫の呼吸数(中央値)
- 病院内キャリーの中(106頭)→64回/分
- 家で休息中(32頭)→27回/分
- 家で睡眠中(38頭)→20回/分
E. Dijkstra, E. Teske, V. Szatmari, The Veterinary Journal 234 (2018) 96-101, doi.org/10.1016/j.tvjl.2018.02.0141090-0233
解説
過去に行われた調査では、睡眠中の呼吸数が中央値19回/分で安静時呼吸数よりも少なかったと報告されています(Ljungvall, 2014)。今回の調査でも動物病院でキャリーの中に入れられているとき(64回)よりも、家で休息しているとき(27回)や眠っている時(20回)の方が呼吸数が少なくなることが確認されましたので、リラックスしている時の猫の呼吸数が30を超えることはないと言えそうです。ただし喉を鳴らすと呼吸数が増えるという現象が確認されていますので、「リラックスしているけれども喉をゴロゴロ鳴らしていない」ことが条件となります。試しに家で眠りに落ちている猫のお腹の上下動をカウントしてみてください。万が一30回を超えるような場合は、部屋が暑すぎる、貧血気味、心血管系や呼吸器系の疾患などが疑われます。
今回の調査では猫専用の診察時間や猫専用の診察室が設けられておらず、すぐ近くに犬がいるという状況で観察が行われました。また猫の精神状態に影響を及ぼすとされるフェロモン(Feliway)も用いられませんでした。一方近年、猫の福祉向上に努める国際組織「InternationalCatCare」(ICC)によって「猫専門病院」(キャットフレンドリークリニック)というカテゴリが作られたことにより、「待合室に犬がいない」とか「猫のことを熟知したスタッフがいる」などを病院のカラーにするところが増えてきました。しかしこれらの病院は「理論上」猫に対するストレスが少ないというだけであり、実際にストレスの度合いが減っているかどうかに関して科学的な検証が行われていません。
猫の呼吸数のみならず、唾液中のコルチゾールや心拍数などをトータルで観察すれば、本当に「猫専門」なのかどうかが少しは客観的に見えてくるでしょう。すべての項目に関し、家でリラックスしているときの値に近い方が猫に優しいと言えます。余談ですがICCの認定を受けておらず、ただ単に猫だけを受け付けているだけの「自称・猫専門病院」がありますのでご注意ください(モグリ医師というわけではありませんが)。認定を受けているかどうかは公式サイトで確認が可能です。 日本のCFC一覧
猫の呼吸数のみならず、唾液中のコルチゾールや心拍数などをトータルで観察すれば、本当に「猫専門」なのかどうかが少しは客観的に見えてくるでしょう。すべての項目に関し、家でリラックスしているときの値に近い方が猫に優しいと言えます。余談ですがICCの認定を受けておらず、ただ単に猫だけを受け付けているだけの「自称・猫専門病院」がありますのでご注意ください(モグリ医師というわけではありませんが)。認定を受けているかどうかは公式サイトで確認が可能です。 日本のCFC一覧