トップ2018年・猫ニュース一覧1月の猫ニュース1月12日

犬や猫への愛着の度合いが強い人ほどペットを擬人化する

 犬と猫の飼い主を対象としたアンケート調査により、ペットへの愛着が強いほどペットの「感情」を認める傾向が強まることが明らかになりました(2018.1.12/日本)。

詳細

 調査を行ったのはオランダのマーストリヒト大学や東京大学などからなる共同チーム。日本国内に暮らしている犬の飼い主と猫の飼い主を対象とし、ペットに対する愛着の度合いと感情投影(動物にも人間と同じような感情があると考えること)の度合いとの間にどのような関連性があるのかを検証しました。
 47都道府県から満遍なく回答者を募り、飼い主やペットの基本属性に関する情報を集めると同時に、「PBS」と呼ばれる特殊な質問票を用いて飼い主が抱いているペットへの愛着の度合いを計測しました。これはペットの感情的な行動を見たことがあるかどうかという質問に対し、1(全く見たことがない)~3(頻繁に見かける)で回答していくというものです。最終的なスコアが高いほど感情投影の度合いが高いと判断されます。
 合計546人(男性50.5%平均年齢48.66)から得られたデータを統計的に計算したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
感情投影の度合い
 以下はペットの感情的な行動を時々~頻繁に見かけると回答した人の割合です。「喜び」と「悲しみ」に関しては、犬の飼い主の方が高い値を示しました。 犬や猫の飼い主がペットに認める感情
  • 喜び=96.2%
  • 驚き=85.9%
  • 怒り=80.6%
  • 恐れ=75.7%
  • 悲しみ=61.9%
  • 嫌悪=57.7%
  • 共感=73.1%
  • 嫉妬=56.2%
愛着の度合い(PBSスコア)
  • 平均は74.63
  • 男性(70.13)よりも女性(79.04)の方が高い
  • 猫の飼い主(72.91)よりも犬の飼い主(75.64)の方が高い
愛着の度合いと感情投影
 愛着の度合いが強いほど一次的な感情(喜び、悲しみ、嫌悪、恐れ、驚き)と二次的な感情(羞恥心、嫉妬、落胆、共感)のすべてが高い値を示しました。すなわちペットへの愛が強いほど感情を投影しやすいということです。その他、ある特定の条件がある特定の感情の投影度を高めるという関係性が確認されました。
  • 愛着の強い女性喜び | 嫌悪 | 共感
  • 愛着の強い男性喜び | 悲しみ | 嫌悪 | 恐れ | 驚き
    羞恥心 | 嫉妬 | 落胆 | 共感
  • 愛着が強い犬の飼い主喜び | 悲しみ | 嫌悪 | 恐れ | 驚き
    羞恥心 | 嫉妬 | 共感
  • 愛着が強い猫の飼い主喜び | 悲しみ | 嫌悪 | 驚き
    羞恥心 | 嫉妬 | 落胆 | 共感
  • 愛着の強い男性>愛着の強い女性悲しみ | 嫉妬 | 共感
  • 猫の飼い主>犬の飼い主喜び
How Japanese companion dog and cat owners’ degree of attachment relates to the attribution of emotions to their animals.
Su B, Koda N, Martens P (2018), PLoS ONE 13(1): e0190781. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0190781

解説

 当調査と似たような調査は京都大学心理学部「CAMP-WAN」のチームが2017年にも行っています。こちらの調査では「ペットは家族である」と回答した人の割合が猫の飼い主(72.97%)よりも犬の飼い主(88.04%)の方が高いと報告されています。今回の調査でも愛着の度合い(PBSスコア)は猫の飼い主(72.91)よりも犬の飼い主(75.64)の方が高いとの結果になっていますので、飼い主との感情的な結びつきに関しては、犬の方に分があるのかもしれません。なお同様の傾向は海外における調査でも確認されていますので、世界共通の普遍事項という可能性もあります。 猫の飼い主は犬の飼い主よりもペットとの間に精神的な距離を置いている  飼い主のペットに対する愛着の度合いを高める要因を調べたところ、以下のような項目が浮かび上がってきたといいます。
犬の飼い主と愛着の度合い
  • 犬との関係は良好であると回答した
  • 犬を見るのが好きだ
  • 犬を頻繁にブラッシングする
  • 家庭内に複数のペットがいる
  • 犬と同じベットで眠る
  • 犬がちゃんと留守番できる
猫の飼い主と愛着の度合い
  • 猫との関係は良好である
  • 自分自身のために猫を飼っている
  • 自分の行動と猫の行動は似ている
  • 動物福祉に関連した団体に所属している
  • スキンシップを通じて動物とコミュニケートできる
  • 自宅に庭がある
  • 女性
 ペットへの愛着が強いから上記したような項目が浮かび上がってきたのか、それとも上記したような項目があるからペットへの愛着が強くなったのかは分かりません。しかし「女性」の方が猫への愛着が強いという現象は注目に値します。麻生大学獣医学部のチームが行った調査によると、猫を撫でている時の男性と女性の脳内では活性化の仕方に明確な違いがあり、性格的に神経質傾向が強い女性が本物の猫をなでている時、とりわけ強い喜びを感じている可能性があるとのこと。海外で行われた調査においても、男性よりも女性の方がペットへの愛着は強いと報告されていますので、これも普遍事項である可能性が高いと考えられます。 猫を撫でる喜びは男性よりも女性の方が大きい?ペットへの愛着が強いほど犬や猫を擬人化する傾向が強い  日本では「嫉妬」と「共感」の投影度が他の国に比べて高いことがわかりました。この2つは一般的に人間にしかない複雑な感情であると考えられていますが、どう考えても猫にもあるとしか思えないような現象に出くわすことがあります。
 例えば、猫を2頭飼っている家庭において、1頭をマッサージをしてあげている時に他の猫がミャーミャー鳴いて飼い主の気を引こうとすることがあります。こんな時は「あの子は嫉妬している!」と思わず考えてしまいます。あるいは飼い主の具合が悪くて寝込んでいる時、普段はうるさい猫たちが急におとなしくなることがあります。こんな時は「具合が悪いのがわかっているんだ!」と共感能力を認めたくなります。
 クールな人なら「思い込みの擬人化」で片付けるのでしょうか、猫好きの人には無理でしょう。今回の調査で指摘された「愛着の度合いが強い人ほどペットに対する感情投影の度合いが高い」とはそういうことです。