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猫が好みやすいフードの食感は?

 キャットフードの食感が猫の好みにどのような影響を及ぼすのかが検証されました(2017.6.29/オランダ)。

詳細

 調査を行ったのは、オランダ・ユトレヒト大学獣医学部のチーム。猫用のウェットフードを3つの条件下で殺菌消毒し、フードの力学的・物理的特性に違いを持たせました。具体的な製法は以下です。
殺菌法とフードの特性
  • フードA113℃で232分間加熱殺菌
    幾何平均径=620μm | 粘度=3.3mPa | 硬さ=1.99kg | 付着度=0.22kg | 咀嚼性=24.0kg | pH=6.53
  • フードB120℃で103分間加熱殺菌
    幾何平均径=470μm | 粘度=7.9mPa | 硬さ=3.51kg | 付着度=0.42kg | 咀嚼性=53.9kg | pH=6.63
  • フードC127℃で60分間加熱殺菌
    幾何平均径=441μm | 粘度=7.3mPa | 硬さ=4.01kg | 付着度=0.42kg | 咀嚼性=59.3kg | pH=6.66
 次に調査チームは、10頭の猫(すべて不妊手術済み/オス猫1頭)を対象とした10日間にわたる給餌テストを行いました。具体的には、3つの食器の中に3種類のフードを入れ、猫が最初に選ぶものや、猫が食べたトータルの量を観察するというものです。調査の結果、低温長時間で殺菌したフードAが最も好まれ、この傾向は特に最初の6日間でだけ顕著だったと言います。
 またフードの特性が猫の好みにどのような影響を及ぼすかを統計的に調べた所、「pH」、「硬さ」、「粘度」という3つの特性が、猫の好みと負の相関関係にあることが判明しました。つまり、上記した特性が強ければ強いほど忌避される傾向があると言うことです
 こうした結果から調査チームは、低温長時間で殺菌したフードが好まれやすいようだとの結論に至りました。ただし10日目以降の猫の選好性の変化や、フードAに対する好みが最初の6日間にだけ集中していた理由まではよくわかっていません。
Retorting conditions affect palatability and physical characteristics of canned cat food. Journal of Nutritional Science
Hagen-Plantinga EA, Orlanes DF, Bosch G, Hendriks WH, van der Poel AFB. A017;6:e23. doi:10.1017/jns.2017.17

解説

 今回の調査では、猫の摂食行動に影響を及ぼす因子として「pH」、「硬さ」、「粘度」という3つの項目が浮上してきました。
 「pH」は食品中の酸性の度合いで、数値が大きければ大きいほどアルカリ、小さければ小さいほど酸性に傾いていることを意味しています。「pHが大きいほど忌避される」という傾向が見られましたので、猫はどちらかといえば酸味のあるものを好むのかもしれません。ただし食品のpHは尿路結石の生成と密接に関連していますので、猫が好むからといって必ずしもよい食品とは言い切れない部分があります。
 「硬さ」が増すと忌避される傾向が見られました。猫の食事の仕方は丸呑みが基本ですので、硬いものでも嚥下することができます。しかし柔らかいものと硬いものがあったときは、のどへ引っ掛かりが少なく楽に飲み込むことができる前者を選ぶものと推測されます。
 「粘度」が増すと忌避される傾向が見られました。水を基準と考えると、水よりもカルピス、カルピスよりも水飴の方が粘度が高いと表現されます。繰り返しになりますが猫は丸呑みが基本ですので、あまりにもドロドロネバネバするようなものはのどを通りにくいのでしょう。 猫が好むペイスト上のおやつは「酸味が強く柔らかくて極端にネバネバしていない」という条件を満たしている  猫に忌避される3つの条件を全てひっくり返して考えると、「酸味が強く柔らかくて極端にネバネバしていないもの」が好まれるということになります。具体的にイメージすると、やはり生肉や生魚に近いものということになるでしょうか。しかし猫に好まれるからといってローフードばかり与えていると、栄養に偏りが出たり、飼い主も猫もトキソプラズマや食中毒菌に感染する危険性が高まってしまいます。近年は猫の食いつきがきわめて良いペースト状のおやつも売られていますので、こうしたもので代替した方が安全でしょう。 猫の食生活 猫の食欲不振と増進