詳細
調査を行ったのは、イギリス・ノッティンガム大学獣医科学校のチーム。英国内で市販されている自称「完全栄養食」177種を対象とし、中に含まれているマクロ栄養素およびマイクロ栄養素分析して「FEDIAF」(ヨーロッパペットフード産業協会)が定める栄養ガイダンスを遵守しているかどうかを検証しました。調査対象となったフードはドッグフード64種(ウェット49種+ドライ15種)およびキャットフード113種(ウェット48種+ドライ65種)です。
ミネラルに関してFEDIAFが設けている基準値13項目のうち、塩素とヨウ素を除いた11項目(カルシウム・リン・リンカルシウム比・カリウム・ナトリウム・マグネシウム・銅・鉄・マンガン・セレン・亜鉛)を調べた結果、ドライフードの61%、ウェットフードの94%では最低1項目が規定値を超えているか下回っていることが明らかになったといいます。また中には生体に有毒とされるヒ素を高濃度で含んでいるものが見つかり、特に「原料の30~40%は魚」というブランドでその傾向が強かったと言います。3つは安全摂取量の上限値を超え、うち2つは法で定められている上限値すら超えていたとのこと こうした結果から調査チームは、1つのブランドを長期的に与え続けると、そうとは知らないうちに有害成分が体内に蓄積し、健康に悪影響を及ぼす危険性があると指摘しています。 Mineral analysis of complete dog and cat foods in the UK and compliance with European guidelines
M. Davies, R. Alborough, L. Jones, C. Davis, C. Williams & D. A. Gardner, Scientific Reports 7, Article number: 17107 (2017) doi:10.1038/s41598-017-17159-7
ミネラルに関してFEDIAFが設けている基準値13項目のうち、塩素とヨウ素を除いた11項目(カルシウム・リン・リンカルシウム比・カリウム・ナトリウム・マグネシウム・銅・鉄・マンガン・セレン・亜鉛)を調べた結果、ドライフードの61%、ウェットフードの94%では最低1項目が規定値を超えているか下回っていることが明らかになったといいます。また中には生体に有毒とされるヒ素を高濃度で含んでいるものが見つかり、特に「原料の30~40%は魚」というブランドでその傾向が強かったと言います。3つは安全摂取量の上限値を超え、うち2つは法で定められている上限値すら超えていたとのこと こうした結果から調査チームは、1つのブランドを長期的に与え続けると、そうとは知らないうちに有害成分が体内に蓄積し、健康に悪影響を及ぼす危険性があると指摘しています。 Mineral analysis of complete dog and cat foods in the UK and compliance with European guidelines
M. Davies, R. Alborough, L. Jones, C. Davis, C. Williams & D. A. Gardner, Scientific Reports 7, Article number: 17107 (2017) doi:10.1038/s41598-017-17159-7
解説
ヒ素に関しては2011年、アメリカのTVパーソナリティ、メーメット・オズ氏が自身の番組の中でその危険性を特集したをきっかけとして米国内における関心が高まったという経緯があります。番組の内容を受け、翌2012年に「コンシューマー・リポーツ」の調査班が200を超える食料品店で売られている米製品を調査したところ、そのほとんどで有機ヒ素と無機ヒ素の両方が検出されたとのこと。こうした事実から、家畜動物の飼料に加えられていたヒ素含有の食品添加物が、ニワトリや七面鳥の肉や羽根を通じて犬や猫の口にも入るのではないかという懸念が持たれていました。
1つのブランドを長期間給餌し続ける「ブランド・ロイヤリティ」は諸刃の剣です。そのフードが本当に完全栄養食である場合は、猫の健康を増進するか少なくとも維持してくれるでしょう。一方、そのフードの中に飼い主もメーカーも知らない状態でヒ素や水銀を始めとする有毒微量元素が含まれていた場合、長期的な給餌によって犬や猫の体内に蓄積し、原因不明の体調不良を招く危険性があります。
ペットに給餌する際は、複数のメーカーによる複数のブランドをミックスし、飼い主が自主的に有害成分のリスクを緩和した方がよいかもしれません。
今回の英国で行われた調査により、上記した懸念が現実のものである可能性が高まってしまいました。ただし当調査で指摘されたのは米や肉ではなく、魚を原料としたフードにおいて高濃度のヒ素が含まれているという傾向です。混入ルートとしては「ヒ素含有肥料→水質汚染→魚が水を経由してヒ素を摂取→魚を経由してペットフードにヒ素が混入」というものが想定されています。そしてこの想定ルートは、ペットフードに水銀が混入するときのものと全く同じです。
現在、水銀に関する基準値は「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)の中でが設けられていません。またヒ素に関する上限値は「15μg/g」と規定されているものの、人間における基準値のおよそ150倍という緩いものであり、なおかつ定期的な検査が行われていません。1つのブランドを長期間給餌し続ける「ブランド・ロイヤリティ」は諸刃の剣です。そのフードが本当に完全栄養食である場合は、猫の健康を増進するか少なくとも維持してくれるでしょう。一方、そのフードの中に飼い主もメーカーも知らない状態でヒ素や水銀を始めとする有毒微量元素が含まれていた場合、長期的な給餌によって犬や猫の体内に蓄積し、原因不明の体調不良を招く危険性があります。
ペットに給餌する際は、複数のメーカーによる複数のブランドをミックスし、飼い主が自主的に有害成分のリスクを緩和した方がよいかもしれません。