詳細
調査を行ったのは、フィンランドにあるヘルシンキ大学獣医学部のチーム。ヘルシンキ大学獣医学教育病院、ランダムで選ばれた4つの動物病院、および国内にある猫専門病院と大学付属の病院などに協力を仰ぎ、過去3ヶ月間、自宅で猫に投薬をしていた飼い主を対象としたアンケート調査を行いました。その結果、46頭の猫の飼い主46人から回答が寄せられ、合計67回の投薬ケースから以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。なお「受けが良い」とは、投薬に際して猫が抵抗なく受け入れてくれたという意味です。
Siven, M., Savolainen, S., Rantila, S., Mannikko, S., Vainionpaa, M., Airaksinen, S., Raekallio, M., Vainio, O., Juppo, AM. (2016) Veterinary Record Published Online First: 15 December 2016. doi: 10.1136/vr.103991
猫の投薬
- 投薬成功率は76.1%
- 犬用の薬よりも猫用の薬の方が4.9倍受けが良い
- 錠剤よりも液状薬の方が4.8倍受けが良い
- 投薬スケジュールの遵守が簡単だと考えている飼い主は86.6%
- 投薬スケジュールが正確に守られていない確率は10.4%
Siven, M., Savolainen, S., Rantila, S., Mannikko, S., Vainionpaa, M., Airaksinen, S., Raekallio, M., Vainio, O., Juppo, AM. (2016) Veterinary Record Published Online First: 15 December 2016. doi: 10.1136/vr.103991
解説
複数の医療機関を通じて850枚のアンケート用紙が配られましたが、実際に使用されたのは半分弱の403枚で、なおかつ参加基準を満たしていた回答はわずか46枚に過ぎませんでした。こうした低い回答率から、今回の調査結果だけから猫の飼い主全体を推し量ることはできないと考えられます。例えば、投薬スケジュールの遵守が簡単だと回答した飼い主の割合は86.6%でしたが、投薬がうまくいかなかったためアンケートへの回答を拒んだ飼い主を強引に含めて計算し直すと、いくらか低下すると推測されます。また投薬技術に関する飼い主の習熟度によっても大きく影響を受けるでしょう。
2010年の報告では、錠剤をMCTオイル(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、可溶性フィルム(錠剤を包むオブラートのようなもの)、ゼラチン製カプセル(微結晶性セルロース含有)という3つの異なる物質でコーティングして、臨床上健康な猫90頭に1日1回、14日間投与するという調査が行われました(→出典)。2週間の調査期間後、飼い主へのアンケートで「投薬は簡単だったか?」、「猫の受けは良かったか?」という項目を評価したところ、以下のような結果になったといいます。数字が大きいほど優秀であることを意味しています。
猫が薬を拒む理由は、多くの場合薬品臭や苦味です。こうした忌避要因をうまく隠蔽してくれるコーティング剤が開発されれば、投薬コンプライアンス(スケジュール通りに投薬を完了すること)は上がるでしょう。ただし薬が持つ生体利用効率を損なわない範囲内で開発する必要がありますので、それなりの難しさが伴います。
易投薬性 | 猫の受け
- MCTオイル=8.8 | 8.0
- フィルム=8.9 | 8.3
- ゼラチン=7.4 | 6.7
猫が薬を拒む理由は、多くの場合薬品臭や苦味です。こうした忌避要因をうまく隠蔽してくれるコーティング剤が開発されれば、投薬コンプライアンス(スケジュール通りに投薬を完了すること)は上がるでしょう。ただし薬が持つ生体利用効率を損なわない範囲内で開発する必要がありますので、それなりの難しさが伴います。