詳細
調査を行ったのは、家電メーカー「シャープ」と日本国内の複数の大学からなる共同研究チーム。1年中風邪に似た症状を引き起こす通年性アレルギーの原因物質に対し、シャープが開発した「プラズマクラスター™イオン」がどのような影響を及ぼすかを検証するため、猫の体から発せられるアレルゲン「Fel d 1」と、真菌の1種アスペルギルス(Aspergillus fumigatu)から発せられるアレルゲン「Asp f 1」を対象とした調査を行いました。
Nishikawa K, Fujimura T, Ota Y, et al. 2016
- プラズマクラスター™
- プラズマ放電により活性酸素を発生させ、+と-のプラズマクラスターイオンを作り、空気中に放出する技術のこと。イオン発生器は空気清浄機、エアコン、冷蔵庫といった家電製品に組み込まれて使用される。
Fel d 1について
- タンパク質の量・装置に入れる前→351.1ng/ml
・プラズマクラスターなし→52.6ng/ml
・プラズマクラスターあり→11.4ng/ml
★プラズマクラスターの作用で「Fel d 1」は79.3 %減少 - IgE抗体への結合能力・プラズマクラスターなし→12.4ng
・プラズマクラスターあり→53.5ng
★プラズマクラスターの作用で結合能力は76.9 %減少
Asp f 1ついて
- タンパク質の量・装置に入れる前→1.97pg/ml
・プラズマクラスターなし→0.38pg/ml
・プラズマクラスターあり→0.14pg/ml
★「Asp f 1」の量は減ったが、これは霧化によるものでプラズマクラスターの作用によるものではなかった - IgE抗体への結合能力・プラズマクラスターなし→1.99ng
・プラズマクラスターあり→10.93ng
★プラズマクラスターの作用で結合能力は81.8 %減少
Nishikawa K, Fujimura T, Ota Y, et al. 2016
解説
1993年から1994年にかけて日本国内で行われた調査によると、猫を飼っている44人の喘息患者のうち70%が、そして猫を飼ったことがない喘息患者394人のうち34%が猫のアレルゲンに対して特異的IgE抗体を保有していたと言います(→出典)。また、幼稚園、学校、公園といった人々が集まる場所で服に付着したアレルゲンが家庭内に蓄積するという現象も確認されています(→出典)。こうした事実から考えると、たとえ家の中に猫やカビが存在していなくても、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が空気中を漂っていると想定したほうが無難なようです。
今回の調査では、プラズマクラスターが空気中のアレルゲンに作用し、血液中のIgE抗体と結合する能力を7~8割も低下させ、アレルギー症状を軽減してくれるかもしれないという可能性が示されました。しかしアレルギーの症状緩和法には、思い込みによる「偽薬効果」が現れやすいという点には注意が必要です。最近の例では、「Circassia」という海外の製薬会社が「Cat-Spires」という次世代猫アレルギー治療薬で期待を集めていたものの、症状改善の60%が偽薬効果であることが判明し、最後の最後で発売を断念するという事例もあります。調査チームが、「今後はより厳密な調査デザインで効果の検証をしていく必要がある」としているのは、こうした背景があるためでしょう。
プラズマクラスター付きの空気清浄機はすでに市販されていますので、猫アレルギーで困っている方は試してみるのも手です。ただし、小型掃除機程度の騒音は覚悟しなければなりません。
プラズマクラスター付きの空気清浄機はすでに市販されていますので、猫アレルギーで困っている方は試してみるのも手です。ただし、小型掃除機程度の騒音は覚悟しなければなりません。