詳細
ウロモジュリン(uromodulin)は「Tamm-Horsfallタンパク」の異名を持つタンパク質の一種。1950年代にはすでに哺乳動物の腎臓中に存在していることが確認されていましたが、その生理学的な機能についてはいまだによくわかっていません。
こうした結果から調査チームは、人間においても猫においても、ウロモジュリンの機能が血圧に影響を及ぼしている可能性があることを突き止めました。今後は対象サンプル数をもっと増やし、今回得られた知見の再現性を確認していきたいとしています。 Uromodulin gene variants and their association with renal function and blood pressure in cats:a pilot study
- ウロモジュリン
- ネフロンに含まれるヘンレわなの太い上行脚と、遠位尿細管の起始部に発現するタンパク質の一種。細胞内のリボゾームで合成とフォールディング(折りたたみ)が行われた後ゴルジ体に運ばれ、上皮細胞の表面に出現して排出される。ウロモジュリンのシステイン残基に変化が起こると、フォールディングに異常が生じてタンパクの輸送が正確に行われなくなり、細胞内にウロモジュリンが蓄積して腎機能不全を引き起こすと考えられている。
こうした結果から調査チームは、人間においても猫においても、ウロモジュリンの機能が血圧に影響を及ぼしている可能性があることを突き止めました。今後は対象サンプル数をもっと増やし、今回得られた知見の再現性を確認していきたいとしています。 Uromodulin gene variants and their association with renal function and blood pressure in cats:a pilot study
解説
ウロモジュリンがどのように腎機能に影響を及ぼしているかに関しては、現在いくつかの仮説があります。専門的でややわかりにくい部分もありますが、以下は一例です。
ウロモジュリンと腎機能の関係
- 仮説1 ウロモジュリン遺伝子を人為的に不全にしたマウスでは、電解質バランスに異常は見られなかったもののクレアチニンクレアランス(腎機能)が顕著に減少して尿の凝縮能力が障害され、「Na-K-Cl共輸送タンパク2」(NKCC2)の活性が減少した。ウロモジュリンはナトリウムの吸収を促進し、太い上行脚におけるNKCC2の活性を高めていると考えられる。
- 仮説2 ウロモジュリン遺伝子を人為的に不全にしたマウスでは、尿中TNFα(腫瘍壊死因子)濃度が上昇する。TNFαは自己分泌的にNKCC2の発現をダウン調整することがわかっている。正常マウスの太い上行脚細胞をTNFαで刺激したところ、NKCC2の発現が減少すると同時に、ウロモジュリン遺伝子のmRNA発現が増加した。こうした事実から考えると、ウロモジュリンがTNFαの効果を調整してNKCC2の発現様式に影響を及ぼし、結果として血圧を変化させていると推測される。
- 仮説3 全身性高血圧を抱えた猫では、正常血圧の猫に比べ血清リン濃度が著しく低いことが確認されている。ウロモジュリン遺伝子の変異で正常なウロモジュリンが減少すると、収縮期血圧の上昇と髄質カリウムチャンネル(ROMK2)の発現異常を招き、全身性高血圧と血清リン濃度の低下につながっているのかもしれない。