詳細
慢性腸疾患は、長期に渡る下痢や血便を主症状とする原因不明の消化器系疾患。消化管症状が3週間以上継続し、食事療法、抗生物質、駆虫剤には反応せず、抗炎症治療や免疫抑制治療に反応するというのが特徴です。人医学の分野では「炎症性腸疾患」(IBD)がこれに相当し、「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」とに細分されています。
猫の慢性腸疾患に対する従来の治療法は、食事療法による抗原の除去、およびビタミンB12や免疫抑制剤の投与がメインでしたが、その効果に関しては必ずしも良好ではなく、また生涯にわたって投薬治療を受け続ける必要があるといった大きな難点を抱えていました。 コロラド州立大学・医療科学部の研究チームは2014年、「Winn Feline Foundation」の資金援助を受け、慢性腸疾患を抱えた猫に対する脂肪細胞由来の間葉系幹細胞注入治療を行いました。
猫の慢性腸疾患に対する従来の治療法は、食事療法による抗原の除去、およびビタミンB12や免疫抑制剤の投与がメインでしたが、その効果に関しては必ずしも良好ではなく、また生涯にわたって投薬治療を受け続ける必要があるといった大きな難点を抱えていました。 コロラド州立大学・医療科学部の研究チームは2014年、「Winn Feline Foundation」の資金援助を受け、慢性腸疾患を抱えた猫に対する脂肪細胞由来の間葉系幹細胞注入治療を行いました。
- 間葉系幹細胞
- 成熟した脂肪細胞などから作られる幹細胞の一種で、骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、脂肪細胞といった間葉系細胞に分化する能力を持っている。また炎症が発生している場所に自発的に近づき、免疫反応を引き起こすことなく免疫機構を調整し、組織の再生を促すといった能力も有している。
慢性腸疾患への幹細胞治療
- 治療グループ受けていた治療が本物か偽物かを知らされていなかった飼い主の猫7頭のうち5頭は顕著な改善を見せ、残りの2頭は中等度・持続性の改善を見せた。
受けていた治療が本物であると知っていた飼い主の猫3頭のうち、1頭は里親にもらわれて追跡調査不可、1頭は顕著な改善、1頭は変化なしという結果だった。 - 偽薬グループ4頭全てにおいて、変化が見られないか症状の悪化が見られた。飼い主は受けていた治療が本物か偽物かを知らされていなかった。
解説
脂肪細胞由来の間葉系幹細胞は、さまざまな動物を対象とした調査により、その治療効果が確認されつつあります。
炎症性腸疾患を発症したマウスを対象とした調査では、人間の脂肪細胞由来の間葉系幹細胞が注入されました。その結果、体重減少や下痢といった症状のほか、組織学的な所見が顕著に改善したと言います。
2015年には犬を対象とした調査も行われています。この調査では、炎症性腸疾患と診断された11頭に脂肪細胞由来の間葉系幹細胞を静脈経由で1回だけ注入(200万/kg)しました。そして治療終了後42日時点で重症度、およびC反応性蛋白、アルブミン、葉酸、ビタミンB12の血清濃度を調査した所、重症度は顕著に減少し、アルブミン、葉酸、ビタミンB12の血清濃度は増加していたとも。最終的に11頭中9頭で寛解が得られ、残りの2頭でも寛解に近い回復が見られたそうです(→出典)。
人間を対象とした調査では、現在アメリカにおいて300人以上の被験者を対象とした「第III相臨床試験」が進行中とのこと。コロラド州立大学の調査チームが言っているように、本当に重大な副作用がないのだとしたら、幹細胞治療は動物の慢性腸疾患や人間の炎症性腸疾に対するスタンダードな治療法となっていくかもしれません。 犬や猫の再生医療(子犬のへや)
炎症性腸疾患を発症したマウスを対象とした調査では、人間の脂肪細胞由来の間葉系幹細胞が注入されました。その結果、体重減少や下痢といった症状のほか、組織学的な所見が顕著に改善したと言います。
2015年には犬を対象とした調査も行われています。この調査では、炎症性腸疾患と診断された11頭に脂肪細胞由来の間葉系幹細胞を静脈経由で1回だけ注入(200万/kg)しました。そして治療終了後42日時点で重症度、およびC反応性蛋白、アルブミン、葉酸、ビタミンB12の血清濃度を調査した所、重症度は顕著に減少し、アルブミン、葉酸、ビタミンB12の血清濃度は増加していたとも。最終的に11頭中9頭で寛解が得られ、残りの2頭でも寛解に近い回復が見られたそうです(→出典)。
人間を対象とした調査では、現在アメリカにおいて300人以上の被験者を対象とした「第III相臨床試験」が進行中とのこと。コロラド州立大学の調査チームが言っているように、本当に重大な副作用がないのだとしたら、幹細胞治療は動物の慢性腸疾患や人間の炎症性腸疾に対するスタンダードな治療法となっていくかもしれません。 犬や猫の再生医療(子犬のへや)