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猫の驚愕反射の度合いは環境操作によって減らすことができる

 猫のストレスの原因となる「驚愕反射」の度合いは、環境操作や不妊手術によって減らせることが判明しました(2016.5.20/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのはアメリカ・オハイオ州立大学獣医科学部研究チーム。多くの動物が先天的に備えている、突然の物音に反応して飛び上がる「聴覚性驚愕反射」(ASR)の強さが何によって左右されるかを検証するため、さまざまな実験環境に猫を置いて観察を行いました。観察の対象となったのは、ストレスが原因となって発症する特発性膀胱炎(間質性膀胱炎, FICとも)を抱えた猫20頭(オス13+メス7)と、持病を抱えていない健康な猫28頭(オス11+メス17)です。驚愕反射試験は以下のタイミングで行われました。
驚愕反射試験
  • 不妊手術の前後
  • 実験環境に入れて1ヶ月以内
  • 実験環境に入れて2ヶ月後
  • 実験環境に入れて3ヵ月後
  • 環境エンリッチメントを施した後
 「環境エンリッチメント」とは、猫同士が交流したり外界を散策したりする時間を設けることで、猫の欲求不満を解消してあげるような環境操作のことです。観察の結果、以下のような傾向が見出されたと言います。
ASRへの影響因子
  • 不妊手術によってオスもメスも反応が弱まる
  • 環境への馴れによってメス猫の反応だけが弱まる
  • 環境エンリッチメントによってFICを抱えた猫の反応だけが弱まる
 こうした事実から研究チームは、聴覚性驚愕反射の強さは猫の性別や持病の有無によって左右されるようだとの結論に至りました。また、不妊手術に伴って両性のASRが弱化したことから、「性ホルモンの減少が自律神経系に作用してASRを強化させ、結果としてFICにつながっている」という従来の定説は否定されたとも。 特発性膀胱炎 Effects of interstitial cystitis on the acoustic startle reflex in cats

解説

 「聴覚性驚愕反射」(ASR)が強い場合、人間ではパニック障害、不安障害、PTSD、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎といったストレス性疾患を発症しやすくなるとされています。今回の調査でも、特発性膀胱炎(FIC)を抱えた猫の方が健常な猫よりもASRが強かったという事実が確認されていますので、人間と猫とでは発症メカニズムが似通っているのかもしれません。おそらくその背景には、「予測不能性(驚くような刺激)→交感神経系が慢性的に優位になる→アドレナリンの分泌→心身共に常に緊張した状態→発症!」といった生理学的な反応が関わっているものと考えられます。 猫のストレス性疾患を引き起こす要因は、慢性的な「予測不能性」(驚くような刺激)  当調査では、「不妊手術」、「環境への慣れ」、「環境エンリッチメント」のすべてがASRを弱める、すなわちストレス反応の度合いを弱めるという事実が判明しました。調査データによると「不妊手術を施したメス猫」のストレスが最も弱くなり、「不妊手術を施していないオス猫」のストレスが最も強くなるということになります。特発性膀胱炎のリスクファクターの1つが「オス猫」と言われていますので、飼い主は不妊手術のみならず、「環境エンリッチメント」も心がけ、生活環境の中からなるべく予測不能性を取り除くよう注意したいものです。猫にキュウリを見せて驚かせるといった悪ふざけが、ストレスを生んで特発性膀胱炎の発症率を高めてしまう危険な行為であることは言うまでもありません。 猫の去勢と避妊手術 猫の幸福とストレス