詳細
調査を行ったのは、イギリス・リンカーン大学の研究チーム。猫の痛みの評価に関してはこれまで様々な方法が考案されてきましたが、「評価者の熟練を要する」、「医療器具が必要」、「時間がかかって現実的でない」といった難点を抱えていたことにより、あまり普及していませんでした。そこで研究チームは、医療現場でも家庭においても実用的な痛みのチェックリストを作成するため、猫医療のエキスパート19人に対してアンケートを行い、部位にかかわらず猫が何らかの痛みを抱えているときに見せる特徴的な変化を調査しました。その結果、調査を開始した時点で91あった項目は専門家たちの議論を経て25項目まで絞られ、最終的には以下のようなリストが出来上がったといいます。
痛みが弱くても出現
- 手や足を引きずる
- ジャンプ困難
- 異常な歩き方
- 動きたがらない
- 荷重の不均衡
- 一部だけを執拗に舐める
- 触診を嫌がる
- 隠れる・引きこもる
- 毛づくろいの減少
- 遊び行動の減少
- 食欲の減退
- 全体的な活動性の減少
- 人間へのすり寄りの減少
- 背中を丸めた姿勢
- 頭を下げる
- 瞼が痙攣する
- 一時的な気分
- 恒常的な気質
「一時的な気分」とは痛みによって引き起こされる一過性の行動変化のことで、「急に攻撃的になる」、「急におとなしくなる」などを含みます。「恒常的な気質」とは慢性的な痛みによって固定化された猫の性格のことで、「基本的に触られるのが嫌い」、「いつも人の手に噛み付こうとする」などを含みます。
痛みが強いと出現
- 食べ方が変化する
- 明るい場所を避ける
- 唸る
- うめく
- 目を閉じる
痛みの程度は不明だが出現
- 排尿に努力を要する
- 尻尾を素早く動かす
解説
アンケートに協力したエキスパートたちの専門は、内科、腫瘍科、麻酔科、行動科、整形外科、皮膚科、歯科、眼科、神経科など様々です。こうしたエキスパートたちの間でコンセンサスが得られたということは、リストにある行動の変化が痛みの部位にかかわらず現れやすいということを示しています。「手や足を引きずる」と「動きたがらない」など、部分的に重なる項目もありますが、覚えておいて損はないと思われます。なお、猫の痛みを見分ける時のコツに関しては以下のページでも詳しくまとめてありますのでご参照ください。