詳細
報告を行ったのは、イタリア・ピサ大学の研究チーム。猫の首筋をつまむと自動的に力が抜ける現象は、一般的に「つまみ誘発性行動抑制」(PIBI)と呼ばれ、医療現場においては獣医師やアシスタントがうなじを徒手的に握る「スクラッフィング」という形で応用されています。今回チームが検証したのは、手による圧力とクリップによる機械的な圧力で、PIBIの現れ方に差が生じるかどうかという点です。
チームは14頭に対して従来通り「スクラッフィング」を行う一方、13頭に対してはうなじ部分に2つクリップを取り付ける「クリップシーシア」(つまみ麻酔)を行い、猫たちのリアクションを観察しました。その結果、クリップに対して大なり小なり不動化で反応した猫たちの割合は81.5%で、完全に動きが抑制された個体は40.7%だったといいます。また心拍数増加や瞳孔散大に関しては、「クリップ」よりも「スクラッフィング」で著明に高い割合が確認されたとのこと。さらにストレスの指標である血漿コルチゾールに差は見られなかったものの、クリップへの反応が高い猫ほど、前足によるモミモミを見せたりのどからゴロゴロ音を出すことが多かったそうです。
こうした観察結果から研究チームは、少なくとも「クリップシーシア」は「スクラッフィング」よりストレスがかかる方法ではないとの結論に至りました。ただし全ての猫に有効といういうわけではないため、今後も調査を重ねて猫にかかるストレスや、猫を扱うスタッフの安全性を検証していく必要があるとしています。 Pinch-induced behavioural inhibition (clipthesia) as a restraint method for cats during veterinary examinations
こうした観察結果から研究チームは、少なくとも「クリップシーシア」は「スクラッフィング」よりストレスがかかる方法ではないとの結論に至りました。ただし全ての猫に有効といういうわけではないため、今後も調査を重ねて猫にかかるストレスや、猫を扱うスタッフの安全性を検証していく必要があるとしています。 Pinch-induced behavioural inhibition (clipthesia) as a restraint method for cats during veterinary examinations
解説
「つまみ誘発性行動抑制」(PIBI)という現象は、親猫に首筋をくわえられた子猫において最も明瞭に観察することができます。この現象は成猫になっても残っていますが、体重が4kg近い猫の首筋をつかんで強引に持ち上げようとすると、痛みが生じたり呼吸が苦しくなったりしますので、基本的にはご法度です。臨床で用いられるスクラッフィングやクリップシーシアは、猫に苦痛を与えない範囲内で不動化を誘発するという、絶妙な力加減でなければなりません。この現象に関しては以下のページでもまとめてありますのでご参照ください。