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慢性腎臓病を患った猫の生活の質を客観的に評価する方法

 慢性腎臓病を抱えた猫の生活の質を評価するため、試験的に作成された調査票「CatQoL」の再現性と有効性が検証されました(2016.6.8/イギリス)。

詳細

 報告を行ったのは、イギリス・ロンドン大学の調査チーム。慢性腎臓病を患った猫の健康状態は、一般的に動物病院における血液検査や尿検査でモニタリングされます。しかし家庭における生活の質(QOL)に関しては明確な評価基準が存在しておらず、せいぜい動物病院で「猫ちゃんの調子はどうですか?」といった質問を投げかけられて終わるのが関の山です。 慢性腎臓病(CKD)にかかった猫の活動性は低下する  そこで調査チームは、「9歳未満の健康な若齢猫」、「9歳以上の健康な老猫」、「慢性腎臓病を抱えた猫」の飼い主の力を借り、医療の現場で即戦力となるような統一化された調査票の作成にとりかかりました。さまざまな検討を経て最終的に残った質問は、以下の16項目です。
CatQoLの質問16項目
  • 全体的な健康(4項目)具合 | 痛み | 動き | 排便
  • 食餌(3項目)好み | 食欲 | 障害
  • 行動(7項目)幸せ | ストレス | 交流 | 遊び | 狩猟 | グルーミング | 爪とぎ
  • 管理(2項目)通院 | 投薬
 2013年2月~2014年4月の間、健康な若齢猫の飼い主99人、健康な老猫の飼い主35人、慢性腎臓病を抱えた猫の飼い主70人をオンラインや動物病院で募集し、暫定的に作成された調査票を実際に使ってもらいました。主な結果は以下です。
CatQoLの結果
  • 若齢猫(0.00)は老猫(-0.50)や腎臓病猫(-0.50)よりも顕著に高いスコアを記録した
  • 腎臓病猫(1.00)は老猫(2.00)よりも「食事」の分野で低いスコアを示した
  • 若齢猫(2.43)は老猫(1.14)や腎臓病猫(0.43)よりも「行動」の分野で高いスコアを記録した
  • 「管理」の分野では若齢猫(-0.50)、老猫(-1.00)、腎臓病猫(-1.50)の値がバラバラだった
  • 腎臓病の進行度と生活の質との間に明確な関連性は見い出されなかった
 おおむね仮説通りの結果が出たことを確認した調査チームは、「CatQoL」は猫の生活の質を評価する際の有効な指標になりうるとの結論に至りました。ただし腎臓病を抱えた猫の中には若い猫も歳をとった猫も含まれていたため、老化による影響と腎臓病による影響を明確化するためには、腎臓病猫を年齢によって階層化した調査が必要になるだろうとしています。 猫の慢性腎不全 Psychometric Validation of a General Health Quality of Life Tool for Cats Used to Compare Healthy Cats and Cats with Chronic Kidney Disease 慢性腎臓病(CKD)にかかった猫の生活の質は、飼い主が「CatQoL」を元にして日々観察することで評価する