詳細
調査を行ったのは、アメリカ・ミズーリ大学の獣医科学チーム。猫の血液型に関しては、A型の赤血球表面には「N-グリコリルノイラミン酸」(NeuGc)、B型の赤血球表面には「N-アセチルノイラミン酸」(NeuAc)、そしてAB型の赤血球表面には「NeuGc」と「NeuAc」の両方が抗原として存在している事が判明しています。しかし過去に行われたブリティッシュショートヘア、ソマリ、シャムを対象とした調査でも、一体どの遺伝子がAB型を生み出しているのかを特定することはできませんでした。 今回の調査チームは、AB型の割合が品種の中で20%と極めて高いラグドールを集め、AB型の19頭と非AB型の14頭の遺伝子を比較調査し、両者の決定的な違いがどこにあるのかを精査しました。その結果、AB型を生み出していると思われる遺伝子候補が明らかになった一方、新たな謎も浮上してきたと言います。
わかったこと
遺伝子解析の結果、19種38本ある猫の染色体(→出典)のうち「染色体B2」の中に含まれる「シチジンリン酸-N-アセチルノイラミン酸水酸化酵素」(CMAH)の生成に関わる遺伝子変異が、AB型の出現と強く関わりあっていることが判明しました。具体的には、変異遺伝子がCMAHの活性を低下させることで、赤血球表面における「NeuGc」と「NeuAc」の露出が相対的に増え、結果としてAB型が生まれると推測されています。
新たな謎1
CMAH遺伝子の変異は、58頭のAB型ラグドールを対象とした別の調査において、93%(54/58)の確率で確認されました。変異が見つからなかった4頭に関しては、血液検査時におけるエラーで血液型が誤認されたという可能性が強いものの、まったく別の遺伝子がAB型の表現型に関わっている可能性も否定できないとしています。
またラグドール以外のAB型猫を対象とした調査では、CMAH遺伝子の変異が73%しか確認されず、ブリティッシュショートヘアとデボンレックスにおいては0%という結果が出ました。こうした事実から、猫のAB型の出現をコントロールしているのはCMAH遺伝子だけではなく、CMAHの活性に影響を及ぼす未知の遺伝子も関わっているという可能性が示されました。
またラグドール以外のAB型猫を対象とした調査では、CMAH遺伝子の変異が73%しか確認されず、ブリティッシュショートヘアとデボンレックスにおいては0%という結果が出ました。こうした事実から、猫のAB型の出現をコントロールしているのはCMAH遺伝子だけではなく、CMAHの活性に影響を及ぼす未知の遺伝子も関わっているという可能性が示されました。
新たな謎2
血液型を決定する遺伝子型に関してはこれまで「A>AB>B」というモデルが提唱されてきました。つまり、A型を生み出す「A」とAB型を生み出す「AB」が組み合わさった時は、遺伝的に優性な「A」によって「AB」が抑えこまれ、A型になるということです。しかし今回の調査では、27頭ものAB型猫が「A+AB」という理屈に合わない遺伝子型を持っていたと言います。この事実から、猫の血液型の遺伝子型は、従来の単純な序列だけでは説明ができず、未知の遺伝子も関わっているという可能性が示されました。
A Novel Variant in CMAH Is Associated with Blood Type AB in Ragdoll Cats
解説
AB型が占める割合は国によってまちまちで、ポルトガルは6.8%、イギリスは5%、ブラジルは2.3%、オーストラリアは1.6%、カナダと北米は0.2%以下といったデータが報告されています。1986年という古いデータしかありませんが、日本における割合は9.7%とかなり高いようです。
猫の血液型が重要になるのは、病気やケガで緊急の輸血が必要になったときや、母猫が子猫に初乳を飲ませるときなどです。血液型を調べる方法にはカード式、ジェル式、スライド式などがありますが、2016年に行われた調査により、イムノクロマト法を利用した検査キットの精度が感度、特異度とも100%と極めて高いことが確認されました(→出典)。この検査キットは日本でも「ラピッドベット」という名で流通していますので、かかりつけの動物病院にお問い合わせください。
猫の血液型が重要になるのは、病気やケガで緊急の輸血が必要になったときや、母猫が子猫に初乳を飲ませるときなどです。血液型を調べる方法にはカード式、ジェル式、スライド式などがありますが、2016年に行われた調査により、イムノクロマト法を利用した検査キットの精度が感度、特異度とも100%と極めて高いことが確認されました(→出典)。この検査キットは日本でも「ラピッドベット」という名で流通していますので、かかりつけの動物病院にお問い合わせください。
ラピッドベット
輸血ミスによる凝集反応や、初乳による新生子溶血現象を避けるためには、検査キットによる血液型判定に加え、事前に交差反応を行っておくことが推奨されます。これは、血液を実際に混ぜ合わせることで拒絶反応が起きないことを事前に確認しておくというものです。これをやっておかないと、最悪のケースでは血液が破壊されて死亡してしまうこともあります。