詳細
アニマルライツの急先鋒「PETA」は、5月27日に「This Weed Could Kill Your Dog」(この雑草はあなたの犬を殺すかもしれない)と題された動画を公開し、犬や猫の飼い主に対して「猫じゃらし」が持つ危険性を十分理解するよう呼びかけています(→YouTube)。具体的な内容は以下です。
ネコジャラシ(エノコログサ)の先端にはノギ(芒)と呼ばれる棘状の突起が付いており、犬や猫の体に付着すると時として重大な症状を引き起こすことがある。ノギの動物侵入場所として多いのは以下。
ノギの侵入場所
- 目顔をしきりにこする・目ヤニが出る・眼球が腫れる
- 耳耳をやたらに掻く・顔が一方向に傾く・頭をやたらに振る
- 鼻鼻汁を垂れ流す・鼻を気にする・くしゃみをする
- 気管原因不明の咳が続く
- 生殖器股間を気にする・歩き方がおかしい
- 脇の下歩き方がおかしい
- 指の間足を引きずるように歩く
- 肺原因不明の咳や微熱が続く
- 脳原因不明の神経症状で運動失調に陥る
ノギ予防
- 散歩の後は体をよくチェックする
- 被毛をよくブラッシングをする
- イネ科植物がある場所で自由行動させない
- ノギが見つかった場合はなるべく獣医師に相談する
解説
日本国内でよく見かけるイネ科植物としては、ネコジャラシ(エノコログサ)、オヒシバ、ススキなどが挙げられます。こうした植物が生い茂った場所に犬や猫を放置するのは控えた方がよいでしょう。また猫の場合、ネコジャラシを用いて猫と遊ぶ場合は必ず飼い主が監督し、部屋の中に放置しないことをお勧めします。
ノギが眼や鼻に刺さってしまうという状況は簡単に想像できますが、にわかに信じがたいのは、肺や脳といった体の内部にまで侵入してしまうということです。肺への侵入経路としては、気管から落ち込むというルートのほか、皮膚に刺さったノギが皮下脂肪や筋肉を乗り越え、胸腔にまで到達するというルートもあるようです。一方、脳への侵入経路としては、口から入り込んだノギが何らかの拍子で咽頭をすり抜け、後頭部にまで到達するというルート想定されています。これらは単なる可能性の話ではなく、実際にいくつかの症例も報告されていますので、ありえない話として切り捨てるわけにはいかないでしょう(→出典1・出典2)。
咳や微熱が続き、動物病院における検査でも明確な原因が分からないような時は、細菌やウイルスといった目に見えない異物ではなく、ノギのような肉眼でも確認できる大きな異物が体内に侵入している可能性を考慮した方が良いかもしれません。以下は教訓的な症例です。
咳や微熱が続き、動物病院における検査でも明確な原因が分からないような時は、細菌やウイルスといった目に見えない異物ではなく、ノギのような肉眼でも確認できる大きな異物が体内に侵入している可能性を考慮した方が良いかもしれません。以下は教訓的な症例です。
元気消沈、食欲不振、咳、断続的な四肢の運動失調といった症状が5ヶ月間持続した犬が来院。エックス線写真で胸部の病変、左前足の肥大性骨症、右尾側気管支の異物が見つかった。取り急ぎ気管内の異物を除去したところ、3ヶ月後には前足に見られた病変が正常化、そして5ヶ月後には胸部の病変も霧消した。Veterinarni Medicina, 57(2012)