詳細
調査を行ったのは、クイーンズ大学ベルファストのチーム。チームはまず、北アイルランド国内に暮らすペット猫を対象に、「Cat It Senses Food Maze」と呼ばれる知育玩具を用いて利き手を調査しました。内容は、玩具の中に入れられたおやつを取り出す際、どちらの手を用いるかをカウントするというものです。50回のトライアルを行った後、猫たちを右利き、左利き、両利きに分類した結果、各グループ30頭ずつの被験猫を得ることができました。
次に、セラピーキャットに適しているかどうかを見極めるために開発された気質テスト「猫の気質プロファイル」(FTP)と、飼い主に対するアンケート調査から猫の気質を評価する「猫の感情気質スケール」(CAT)が実施されました。「FTP」は、猫が見知らぬ人間と遭遇したときの反応を第三者が客観的に観察し、合計10のシチュエーションを「積極的(+)」と「消極的(-)」とに評価するというものです。一方「CAT」は、猫の飼い主が12の項目(遊び好き・自信がある・愛情深い・従順etc)に関して1~5までの5段階で主観的に評価し、その評価値から「神経質」と「衝動的」という猫の2大気質を探るというものです。
データが揃った後、猫の利き手と気質調査を統計的に精査した所、右利きと左利きの間の差は「右利き猫の方が左利き猫よりも遊び好き」という点以外、見い出されなかったと言います。ただし「利き手のある猫」と「両利きの猫」とを比較した際、以下のような関連性が浮かび上がってきたそうです。
データが揃った後、猫の利き手と気質調査を統計的に精査した所、右利きと左利きの間の差は「右利き猫の方が左利き猫よりも遊び好き」という点以外、見い出されなかったと言います。ただし「利き手のある猫」と「両利きの猫」とを比較した際、以下のような関連性が浮かび上がってきたそうです。
利き手のある猫
- 利き手の度合いが強いほどFTPやCATと強く連動する
- 自信がある、愛情深い、活動的、友好的という側面が強い
両利きの猫
- 利き手猫よりFTP+との正の相関が弱い
- 愛情、従順性、友好性が低く、攻撃性が高い
- 「衝動的」とは無関係だが「神経質」の要素が強い
解説
今回の調査では、利き手の有無にかかわらず全ての猫が「FTP+」、すなわち「見知らぬ人と積極的に交流できる」と評価されました。しかし具体的な数値を見てみると、「両利き=3.18」、「左利き=10.98」、「右利き=11.06」という具合に明白な格差があることが伺えます。この事実を「両利きの猫は利き手を持つ猫に比べてやや怖がりである」と解釈すると、過去に他の動物を対象として行われた実験報告と符合する部分があります。具体的には以下です。
また今回の調査では、右利きと左利きの猫でFTPスコアに違いは見い出されませんでした。この事実は、霊長類を対象として行われた調査報告と矛盾します。 左利きの方がより強い恐怖反応を示すという現象は、一般的に「感情価モデル」と呼ばれます。これは「不安・恐怖」といったネガティブな感情が喚起されたときに右脳が活性化し、結果として右脳が支配している体の左側が多く用いられるという仮説のことです。霊長類のほか犬でも確認されていますが、今回の調査結果を見る限り、猫ではあまり明白ではないようです。唯一確認された「右利き猫の方が遊び好き」という傾向が、一体何に起因しているのかは定かではありません。
- 犬両利きの犬は花火などの刺激に対して強く反応する(→出典)。また利き手の度合いが強い盲導犬候補生はリラックスして自信に満ちた行動を多く見せる(→出典)。
- ヒヨコ側性を持たないヒヨコは、側性を持つヒヨコよりも孤立した時に救難信号を多く出す(→出典)。
- 人間PTSD(心的外傷後ストレス障害)の度合いと両利きとが関連している(→出典)。
また今回の調査では、右利きと左利きの猫でFTPスコアに違いは見い出されませんでした。この事実は、霊長類を対象として行われた調査報告と矛盾します。 左利きの方がより強い恐怖反応を示すという現象は、一般的に「感情価モデル」と呼ばれます。これは「不安・恐怖」といったネガティブな感情が喚起されたときに右脳が活性化し、結果として右脳が支配している体の左側が多く用いられるという仮説のことです。霊長類のほか犬でも確認されていますが、今回の調査結果を見る限り、猫ではあまり明白ではないようです。唯一確認された「右利き猫の方が遊び好き」という傾向が、一体何に起因しているのかは定かではありません。