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猫の体内にどのように環境ホルモンが侵入するか?

 フランスのパリで行われた調査により、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の摂取ルートとしては、空気よりも食餌の方が重大であるという事実が明らかになりました(2016.2.22/フランス)。

詳細

 調査を行ったのはパリ第6大学を中心とした研究チーム。動物の体内に入った後、内分泌系に作用してホルモンバランスを崩す「内分泌かく乱物質」(環境ホルモン, EDCs)が、どのようなルートを通じて人体に取り込まれるかを明らかにするため、人間と生活環境を共有することが多い猫を対象とした予備調査が行われました。その結果、血清中において以下に示すような環境ホルモンが検出されたと言います。なお「PBDEs」とは「ポリ臭化ジフェニルエーテル」、「PCBs」とは「ポリ塩化ビフェニル」、「PAEs」とは「フタル酸エステル」のことです。
猫の血清中の環境ホルモン
  • ∑9PAEs=107 ± 98 μg/L
  • ∑19PCBs=2799 ± 944 ng/L
  • ∑9BDEs=56 ± 21 ng/L
 また同時に、猫の食事と室内の空気を対象とした調査も行われました。結果は以下です。
フード中の環境ホルモン
  • ∑9PAEs=2292 ng/g
  • ∑19PCBs=1.7 ng/g
  • ∑9BDEs=0.088 ng/g
空気中の環境ホルモン
  • ∑9PAEs=848 ng/立方m
  • ∑19PCBs=1.5 ng/立方m
  • ∑9BDEs=0.063 ng/立方m
 こうしたデータから研究チームは、環境ホルモンの摂取ルートとしては、空気よりも食餌の方が100倍近く重大であるとの結論に至りました。 Cat serum contamination by phthalates, PCBs, and PBDEs versus food and indoor air 猫の環境ホルモン摂取ルートとしては、空気よりも食餌の方が100倍近く重大

解説

 2015年、日本の研究チームは猫の血液中に検出される「PCB」や「PBDE」が、一体何に由来しているのかを明らかにするため、市販のペットフード用いた化学検査を行いました。その結果、猫は魚を原料としたキャットフードを通じて「PCB」や「PBDE」に日常的にさらされてとの結論に至っています。今回パリで行われた調査でもこれと同じ構図が浮き彫りとなりました。フードの中に含まれる環境ホルモンが摂取ルートとして重大であるという事実は、キャットフードの登場とともに甲状腺機能亢進症の罹患率が増えだしたという事実と符合します。環境ホルモンと甲状腺機能亢進症の因果関係は未だに証明されていませんが、飼い主は念のため、そうした可能性があることを覚えておいた方がよさそうです。ちなみに日本においては「PCBs」、「PBDEs」、「PAEs」がペットフードの標準検査項目に含まれておらず、基準値も設けられていません。 猫の甲状腺機能亢進症 Organohalogen compounds in pet dog and cat